NRIセキュアテクノロジーズ(NRIセキュア、増谷洋社長)は、7月12日、東京都内の野村総合研究所のセミナールームにおいて、BCNとの共催による「情報セキュリティパートナーカンファレンス」を開いた。「今、エンドユーザーが望む情報セキュリティの導入動向」をテーマにしたイベントは、セキュリティ商材に関心のあるパートナーを招待したもので、約60人が参加した。企業におけるセキュリティ対策の現状や、NRIセキュアが開発・販売する四つのソリューションを中心に説明を行った。(取材・文/鍋島蓉子)
震災を経て高まるセキュリティ意識
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NRIセキュアテクノロジーズ 池田泰徳部長 |
セキュリティ商材を取り扱うパートナー向けに製品の特徴や、売り方の提案を含めて紹介した今回のセミナー。来場者は、NRIセキュアの担当者による熱のこもった説明に真剣に耳を傾けていた。
セミナーの冒頭では、NRIセキュアのソリューション事業本部・菅谷光啓本部長が挨拶。「当社の親会社である野村総合研究所(NRI)は、システムインテグレーション(SI)が中心の会社で、販売や導入支援、サポートには弱い部分がある。これから紹介する製品に皆様方の販売戦略に沿う商材があれば、ご注目いただきたい」と述べた。
前半では、同社ソリューション事業本部ソリューション事業部の池田泰徳部長と週刊BCNの谷畑良胤編集長がオープニングセッションを行った。
谷畑編集長は、自身が訪問して取材した東日本大震災の被災地域の状況や、震災に伴って生まれたIT商材のニーズを示唆した。それによると、被災地域のユーザー企業の間では、徐々にITシステムをクラウドに移行する動きが活発になっているという。クラウドに移行するシステムとしては、申込書や契約書など社内における非構造化データや構造化データなど、事業継続に必要なデータを電子化してクラウド環境に置くことと、その文書管理システムの需要が出てくると述べ、「クラウドに移行するとき、セキュリティを担保するための企業ポリシー適用も重要な事項だ」(谷畑編集長)と結論づけた。
一方、池田部長はNRIセキュアが調査した「サイバーセキュリティ傾向分析レポート」をもとに、企業のセキュリティ対策の現状などを解説した。
震災後は、BCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリ=災害復旧)に関連したクラウド需要が高まり、モバイル端末を利用した在宅勤務などの「ロケーションフリー」の就業スタイルが加速。ワーク・ライフ・バランスを検討する企業が増えたことで、企業内の情報管理のあり方を変える必要性が出てきた。
池田部長は、「なくなったり流出したりすると甚大な被害を及ぼすのはどのような情報なのか、識別しておかなければならない」と指摘した。
課題解決に役立つ製品を紹介
続いて、NRIセキュアが提供している各製品の担当者から、自社ブランド「SecureCube」シリーズや、実績が高いファイル転送サービス「クリプト便」について、説明が行われた。まず、文書管理・情報共有ツールの取り扱いを検討しているパートナー向けに、情報資産の格付け・整理を実現するソリューション「SecureCube/Labeling」を紹介した。電子ファイルに「機密」「社内限」などのラベルを付与する機能と、社内に格納している情報を属性ごとに仕分けして台帳化する機能を有するものだ。ソリューション事業本部ソリューション事業部セキュリティコンサルタントの船越洋明氏は、「最近、ユーザー企業の間では、文書を電子化してデータセンターで保管するため、重要な情報を仕分けして管理するニーズが高まっている」と状況を説明。NRIセキュアは情報漏えい対策製品、資産管理製品、プリンタなど、協業・連携製品を豊富に揃えているので、パートナーにとってはクロスセリング商材としてもメリットが大きいとアピールした。
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週刊BCN 谷畑良胤編集長 |
続いて、メールシステム関連のパートナー向けに「SecureCube/Mail Adviser」と「クリプト便」の紹介を行った。企業では電子メールの管理も重要な課題となっている。電子メール誤送信対策ツールである「Mail Adviser」は、クライアントPCにインストールし、ユーザーがメールを送信する前に、ポップアップの警告画面を提示し、そのまま送信していいかどうかをリマインドで利用者に確認させる製品。ポップアップ画面の「添付ファイル」「宛先」「本文」の三つのタブから警告アイコンのついている事項をクリックしていき、初めて送信できる仕組みがとられている。一方、「クリプト便」は、今年6月に10周年を迎えたSaaS/ASP型サービスである。ソリューション事業本部ソリューション事業部セキュリティコンサルタントの狩谷充氏は「ユーザーのうち4割強は金融、保険であり、広範な顧客に受け入れられている」と実績を話した。パートナーは、シングルサインオン製品、URLフィルタリング製品、ウェブアプリケーションファイアウォール、アーカイブ製品などとのアップセルが可能になるほか、APIを利用したSIなどで商機を見出せることを提案した。
最後に、ID管理・アクセスログ管理パートナー向けにエージェントレスのプロキシ型のアクセス管理ソフトウェア「SecureCube/Access Check」を紹介した。「AccessCheck」は特権IDの管理、ログ管理、PCI DSS対応、本番サーバーからの情報漏えい防止対策として売れている製品である。この製品を入り口として、システムインテグレーションやコンサルティングなど、周辺ビジネスにも広げていけることをメリットとしている。
セミナー終了まで席を立つ人はほとんどおらず、このセミナーに対するパートナーの関心の高さをうかがわせた。