富士通グループのシステムインテグレータ(SIer)で、宮城県仙台市に本社を置く富士通東北システムズ(八田信社長)。同社は、青森県のデータセンター(DC)の増床に伴って、2010年、エーピーシー・ジャパン(APCジャパン)のDC向け物理インフラの統合ソリューション「InfraStruXure(インフラストラクチャー)」を導入した。青森DCで、エネルギーの効率活用を実現している。
富士通東北システムズ
会社概要:1982年設立。システムインテグレーション(SI)やパッケージソフトの開発・販売などを手がけている。宮城県仙台市に本社を構える。社員数は729人(2011年4月1日現在)。
製品提供会社:エーピーシー・ジャパン
製品名:DC物理インフラアーキテクチャ「InfraStruXure」
「InfraStruXure」によるデータセンターの構成
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富士通東北システムズ ビジネスモデル変革室 江口則地ITエキスパート |
東北地方の企業を中心に、システムインテグレーション(SI)などをビジネスとする富士通東北システムズは、2001年にデータセンター事業を開始した。09年6月、青森県のDCで、サーバーを置くエリアが満杯になり、増床を迫られた。
従来型のDCでは、サーバー室の下に、無停電電源装置(UPS)や空調機を置いた機械室を設けている。そのため、機械室につながるケーブルを配線する高さ約45cmの二重床(フリーアクセスフロア)を設置する必要がある。しかし、富士通東北システムズは、青森DCの増床にあたって、建築構造上の問題で床下にフリーアクセスフロアを設置できないという課題を抱えていた。同社のビジネスモデル変革室・江口則地ITエキスパートは、「DC増床の物理インフラのソリューションを探す際に、フリーアクセスフロアを設置せずに済むDC構成を実現できることを重要視した」と語る。
富士通東北システムズは、ベンダー各社が自社のソリューションの特徴をまとめたホワイトペーパーを調べた。その結果、DC電源システムなどを展開するAPCジャパンが提供しているDC向け物理インフラ統合アーキテクチャ「InfraStruXure」に着目するに至った。
「InfraStruXure」は、電源や冷却、管理、サービス機器をラックに統合した物理インフラのソリューションである。モジュール型の設計で可動式の標準化したコンポーネントで構成しているので、必要なものを選択して自由に組み合わせることができる。UPSや空調機を機械室に置くことが不要となり、フリーアクセスフロアを設置する必要がない。「InfraStruXure」は富士通東北システムズにとって、最適なソリューションというわけだ。同社は、09年9月、APCとともに「InfraStruXure」導入の検討を開始した。
江口ITエキスパートは、「『InfraStruXure』はフリーアクセスフロアの問題が解決できることに加え、四つの大きな要件を満たしていた」という。(1)初期投資を抑えてスモールスタートができること、(2)電力を効率的に利用して環境への負荷を低減させること、(3)冷外気を活用して空調電力を削減すること、(4)客先にも導入できる製品であること──これが要件だ。これらを踏まえて、富士通東北システムズは「InfraStruXure」の導入を決断した。10年6月にDC増床部の施工に着手し、同年11月に増床部でのDC運用を開始した。
同社は、青森DCの増設にあたって、APCのソリューションを導入すると同時に、自然の冷外気を利用した空調システムを構築した。東北の寒冷な気候を有効活用し、DCの空調管理に屋外の冷気を利用することによって、エネルギー使用の効率化を目指したものだ。「InfraStruXure」を導入し、冷外気の活用を始めてから半年余りが経過している現在、エネルギー削減の効果が、目に見えるかたちで現れている。
江口ITエキスパートは、「ここ数か月で、当社の青森DCの電力使用効率(PUE)を、一般的なDCのそれと比べて、大きく下げることに成功した。暑い日が続いて電力使用量が多かった7月も、PUEを約1.38に抑えることができた。1.9が標準とされる一般的なDCのPUEと比較すれば、およそ27%の削減になる」と語る。今後は、雪なども使って、冷却効率をさらに追求していくという。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・初期投資を抑えて拡張性のある設備ができる
・建築にあたって二重床を設置する必要がない
・稼働中のシステムとのデータ連結が容易