興和工業所
会社概要:溶融亜鉛めっきを主体とする表面処理や、機械加工、プレス、板金、溶接などの金属の加工、組み立てに至るまで、幅広い事業領域をカバーしている。東海地区を中心に国内11工場、海外1工場を保有する。
サービス提供会社:クオリカ
製品名:生産管理システム「AToMsQube」
「AToMsQube」のシステム機能
 |
クオリカ 長橋晋・アトムズキューブ室主任 |
興和工業所は、取引先の1社である建機メーカーのコマツから要請を受けるかたちで、2010年10月、中国山東省に山東工場を新設した。東海地区を中心として国内11か所に工場を保有する同社だが、海外に工場を建てたのは今回が初めて。開設に伴い、生産管理システムを導入する必要に迫られた同社では、コマツと同じ大企業向け生産管理システムを導入するか、自社に適した生産管理システムを別に調達するかの選択を迫られた。
山東工場と業務内容が比較的似ているのは、同社国内工場の一つで、愛知県半田市にある「半田西工場」だった。油圧シャフトなどの中核部品を一貫生産する最新鋭の事業所である。ここで使っている生産管理システムは、生産工程を熟知したスタッフが市販の表計算ソフトのマクロ機能を活用して丁寧につくりあげた。とはいえ、「システムの標準化の観点からは少々距離がある」(興和工業所の六車壽夫社長)ことから、海外第1号の山東工場にはパッケージソフトを活用する方向で選択を進めた。
検討の過程で、コマツが20%出資するITHDグループの有力SIer、クオリカが紹介された。クオリカは、生産管理システム「AToMsQube」の中国市場での販売を始めようと準備を進めていたところで、「当社の中国進出とタイミングが合うし、コマツが使っているような大規模な生産管理システムではないので当社の事業規模にもよく合う。立ち上げにかかる時間も短い。コマツからの紹介なら間違いはないだろう」(六車社長)と、山東工場への導入を決断した。
 |
| コマツからのグランドパートナー賞(原価部門)の額を手にする興和工業所の六車壽夫社長。中国工場を迅速に立ち上げ、原価低減に貢献したことが高く評価された |
クオリカはITHDグループの事業会社のなかでも、中国ビジネスで先行している1社であり、「グローバルビジネスを積極的に拡大する」(クオリカの西田光志社長)という経営方針で臨んでいる。2010年10月の山東工場の稼働と同時にクオリカは速やかに「AToMsQube」の専門スタッフを派遣した。中国での第1号ユーザーだけに、最適化を図るために、また予期せぬ不具合への対応のために、およそ3か月間、現場に張り付いた。山東工場への「AToMsQube」はクラウド方式で提供するので、現場でのサーバー構築やインストール作業は発生しない。だが、山東工場の作業工程上、どうしても必要とされる部分は、カスタマイズで対応した。
例えば、特定データのダウンロードや、一部データ参照に関わるユーザーインターフェース系のモジュールを二つほどクラウド上に稼働させることで、「山東工場の現場の要求に応えた」(クオリカの長橋晋・アトムズキューブ室主任)。一方で、システムの新規稼働時にみられる単純なプログラムミスも見つかり、その場で修正作業を行った。興和工業所の六車社長は、「システムが本稼働するまで張り付いてくれたことや、山東工場のスタッフに中国語でシステムの使い方をレクチャーしてくれたことで大いに助かった」と、クオリカの対応を評価。システムは、2011年1月、無事に本稼働を開始した。(安藤章司)
3つのpoint
・メンテナンスフリーのクラウド型生産管理システムを導入
・主要な取引先とのシステム面での整合性の高さを重視
・海外でも日本国内と同様のきめ細かなサポートを享受