サービス事業の拡大を方針に掲げている商社系大手ネットワークインテグレータ(NIer)は、業種特化型クラウドサービスの展開に向けて動き出している。双日グループの日商エレクトロニクスは、介護業界向けクラウドサービスの提供を今年6月に開始した。続いて兼松エレクトロニクス(兼松エレ)は、10月にインターネットEDI(電子データ交換)システム開発企業のニュートラルとの合弁会社「クラウドランド」を設立し、来年から中堅規模スーパーマーケットなど流通・小売業に向けたクラウドサービスを提供する予定だ。
兼松エレの事業別売上高構成では、サービス事業は、現在、およそ25%を占めている。同社はその比率を引き上げるべく、2009年末にクラウド事業を開始。これまで、リモートアクセスなど複数のサービスを投入してきた。今回、合弁会社のクラウドランドを設立して、一つの業界に絞った特化型クラウドサービスの事業を展開することによって、事業の拡大を狙っている。
クラウドランドは、兼松エレがシステムの構築や保守、運用などを担当。一方、ニュートラル(本社=北海道札幌市)は、同社の得意分野であるインターネットEDIのアプリケーションソフト開発に携わる、というように役割を分担している。昨年度からニュートラルとの合弁会社づくりに取り組んできた兼松エレのマネージメントサービス本部の南埜滋本部長は、「合弁会社は業務提携よりも責任感が強くなり、両社の役割を明確にすることができる」と狙いを語る。
クラウドランドが2012年度(2013年3月期)から提供するサービスは、年商規模が200億~500億円であり、地方に店舗を構える中堅スーパーマーケットを主なターゲットとしている。地方のスーパーマーケットは少子化などによって顧客が減っており、コスト削減や経営効率化が喫緊の課題となっていることから、クラウド型のEDIサービスが提案しやすい。クラウドランドの上村武代表はそう捉えて、ターゲットを設定した。これを踏まえ、「2013年をめどに、クラウドランドの事業を黒字化する」(上村代表)方針だ。
兼松エレに一歩先駆けて、今年6月に日商エレが業種特化型クラウドサービスを開始した。同社が着眼しているのは、送迎車両をもつ介護施設。サービスは、車両の安全・エコ運転をサポートするものだ。日商エレは、高齢化の進展に伴って、介護業界でクラウドサービスの需要が増大するとみて、ターゲットを介護施設に絞ったのだ。同社は、兼松エレの南埜本部長が「今のところ、拡大の具体的な計画はない」とコメントしているのと異なり、今後、クラウドサービスを輸送業など他業界にも展開することを想定している。
売上高(460億円前後)や従業員数(1100人前後)がほぼ一致している商社系NIer、兼松エレと日商エレ。両社ともこれから業種特化型クラウドサービスに注力しながら、現時点では、そのターゲットとする業界は、結果として棲み分けているようだ。(ゼンフ ミシャ)

クラウドランドの上村武代表(右)と、兼松エレクトロニクスマネージメントサービス本部の南埜滋本部長