KDDI系列の通信キャリアで中部圏最大手の中部テレコミュニケーション(CTC、湯淺英雄社長)とクラウドサービスベンダーのブランドダイアログ(稲葉雄一社長兼CEO)は1月16日、クラウドサービスで業務提携することを発表した。CTCは同日、ブランドダイアログのクラウド型SFA(営業支援システム)「Knowledge Suite」を自社データセンター(DC)を使って中部圏の法人に対して販売を開始した。CTCは、2012年度(13年3月期)中に無償の試用1000社、有料で100社への納入を目指す。(取材・文/谷畑良胤[本紙編集長])

(左から)両社の業務提携に尽力した中部テレコミュニケーションの菅谷健太郎・商品企画2グループ主任、野村忠勝・商品企画2グループマネージャー、横井和英・営業企画部長、ブランドダイアログの稲葉雄一社長、飯岡晃樹・ソリューション本部取締役本部長
閉域性はプライベートクラウド並み
CTCが提供するクラウドサービスは、バーチャルサーバーや各種アプリケーションをラインアップする「CTCマネージドクラウド」の一環として、「CTC Knowledge Suite」という名称で法人営業の約100人体制で販売を開始した。「Knowledge Suite」に搭載しているグループウェアやSFA、名刺管理、データ集計機能など、ビジネス上で必要なアプリケーションをオール・イン・ワンで使えるサービスだ。DCと企業間を広域イーサネット網から接続する閉域性の高いクラウドサービスとしては、業界初の取り組みである。
「CTC Knowledge Suite」と広域イーサネットサービス「CTC EtherLINK/EtherDIVE/Etherコミュファ」を同時に利用すれば、プライベート接続(CTC IPバックボーンを利用した閉域性の高いIP接続)が可能となる。ユーザーは、プライベートクラウドを利用するセキュアな環境で、クラウドサービスを利用できる。

CTCが提供する「CTC Knowledge Suite」のブランドロゴ
CTCは、2010年10月に名古屋市内にある2か所の自社DCとネットワーク技術を使ってクラウド事業を開始した。同社の「CTCマネージドクラウド」は、大容量のバックボーンネットワークと直結するクラウド型サービスだ。IaaSやPaaS、バーチャルサーバーなどのネットワークメニューのほか、光ファイバーで提供する広域イーサネットサービスを同時に利用することで、閉域性が高くセキュリティ・高レスポンスの環境が整っている。この一環で、「CTC Knowledge Suite」が使えるわけだ。
CTC営業本部の横井和英営業企画部長は、「当社は、法人への販売が売上高の半分を占めるまでに拡大している。この領域をさらに拡大して、光ソリューションを法人向けに普及するために、どの会社でも使う有力なアプリケーションを探していた。ブランドダイアログの『Knowledge Suite』は、単なるグループウェアではなく、グループウェアを中心に企業内情報を集約し、業務を効率化することができる。しかも安価で、ITソリューション販売に不慣れな当社の営業担当者でも、説明しやすいサービスだ。通信だけでなく、売り方のバリエーションが増える」と評価し、アプリケーションベースのクラウドサービス第一弾として「CTC Knowledge Suite」の提供を決めた。
営業教育や同行OJTを実施
CTCの法人顧客は、中部圏内の売上高50億~300億円の中堅企業約3000社のうちの約2000社。「CTC Knowledge Suite」は、まずはこれら既存顧客に対して提案・販売する。これと並行してCTCにとって新規領域になる年商50億円以下の中小企業に対する営業も開始する計画だ。横井部長は、「『CTC Knowledge Suite』の提供を契機に、自社パッケージやクラウド・サービスをもつITベンダーとも協業し、製品の連携や共同販売を進めたい」と、チャネル販売に対する将来の見通しを語った。
一方のブランドダイアログは、2011年8月にKDDIと提携している。KDDIは自社の冠がつく「KDDI Knowledge Suite」を自社の販売チャネルで提供している。
稲葉社長は、「中部圏内では、パブリッククラウド的にKDDIに攻めてもらったうえで、CTCには安全性で要求度の高い中堅企業に対してプライベートクラウド的な提供をしてもらう」と、製品・サービスの棲み分けを図るという。また、同社の飯岡晃樹・ソリューション本部取締役本部長は、「CTCの営業担当者のスキルアップ研修や営業同行によるOJTなど、支援を強化する」と、販売面での後押しをする。
「CTC Knowledge Suite」の利用料金は、人数無制限で3GBの基本料金が月額5775円(税込)で、SFA/CRM(顧客情報管理)の追加料金が3万4650円となっている。SFA/CRMは、追加料金に加えて、レコード(営業報告、顧客担当者情報、リードフォームなどの問い合わせ)数に応じて1件単位で課金する従量課金制を採っている。
ブランドダイアログは、大手通信会社と相次いで業務提携し、販売チャネルを拡大している。KDDIやCTCなどは、通信網の販売に慣れているが、業務アプリケーションの販売には不慣れな会社が多い。土管(通信回線)に流れる法人向けアプリ販売は、全国の通信会社にとっての課題で、今後ブランドダイアログが別の地域を狙った協業も予想される。