日本オラクル(遠藤隆雄社長)は、専門の担当者がいない中小企業でも低価格で簡単に導入できる旧サン・マイクロシステムズとの融合製品であるデータベース(DB)アプライアンス「Oracle Database Appliance(ODA)」の販売パートナーを、今年度(2012年5月期)中に現在の20社超から50社に増やす。中期的には、旧サンのサーバー販社の数を超える100社以上を開拓し、既存の国内サーバー・DBメーカーの牙城を脅かす。近く、ビッグデータ活用支援のアプライアンス製品も日本市場に投入する計画だ。日本マイクロソフトなど競合他社のクラウドコンピューティングと一線を画したソフトウェアとハードウェアの「垂直統合策」を強化するなか、中小企業から大企業までをアプライアンス製品で攻略する体制が整った。(谷畑良胤)
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野々上仁 執行役員 |
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白川晃 担当シニア マネージャー |
日本オラクルは昨年11月、安価で高可用性を備えたDBアプライアンス製品「Oracle Database Appliance(ODA)」を国内市場に投入した。ODAは、旧サンのUNIXサーバーにオラクルOS「Oracle Linux」を搭載する2ノードの「Sun Fire」サーバークラスタを用いてオラクルのDBなどを実装したソフト、サーバー、ストレージ、ネットワークを一体化したアプライアンスだ。DBに詳しい人材がいない中小企業でも容易に導入できるエントリー製品であり、運用が自動化されているので手間がかからない。同社が「中華のフルコースを通常の半額程度で食べられる」(野々上仁・執行役員)と表現するほど、機能満載の高可用DBサーバーを中小企業でも使うことができるというわけだ。
ODAは、柔軟性と拡張性にすぐれているのも特徴の一つだ。CPUの24個のコアを最小構成2個から段階的に増やすことができるほか、「Oracle Database」や関連ソフトを事業や企業の成長に応じて拡張できる新ライセンス形態を用意した。販売パートナーは、ODAの利点を生かし、汎用製品や業界特有のアプリケーションをカスタマイズして提供できるメリットがある。日本オラクル側で事前に検証・チューニングした一体型の製品なので、「箱を開けて、電源とネットワークをつなぎ、パワーをオンにして、冗長構成など各種設定のセットアップまで2時間ですむ」(白川晃・ビジネス推進本部担当シニアマネージャー)ことから、システムインテグレータ(SIer)はシステム構築・導入時間を圧縮できる一方で、「新しい付加価値を提案できる」(同)という。
日本オラクルは現在、ODAを販売するパートナーとの協業を強化しているところだ。現段階の販売パートナーは、旧サンの有力販社だった伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)やオラクルDBのトップディーラーであるNEC、SCSKや日立システムズなど中堅・大手のSIerなど20社超が登録済みだ。野々上執行役員は、「DBのアップグレードやマイグレーションを検討するユーザー企業に提案でき、サーバーなどハードを売る販社やSIerを増やす。また、データセンター事業者にもクラウド基盤用として展開する」と、サーバーやデータベースなどで競合する他社メーカーのパートナーも獲得していくことになりそうだ。

Oracle Database Applianceパートナーとの協業
パートナー支援策としては、オラクル製品の販売・デリバリー体制の整備に関する協力や、戦略立案・導入・展開に関することを共同で行う。同社のパートナープログラム「ORACLE PARTNERNETWORK(OPN)」に準じた支援だ。
オラクルは世界的にクラウド以外の手段で運用のアウトソーシング化や変動費の削減などの実現を優先的に推進している。クラウドに対して、ハイエンド向けには、DBアプライアンス「Exadata」とミドルウェア・アプライアンス「Exalogic」に加え、新たに投入するビッグデータの活用を支援する新製品「Oracle Big Data Appliance」などで対抗し、ODAで中堅・中小企業市場を開拓する方向性を鮮明に打ち出した。
表層深層
各種IT調査会社の予測によると、国内サーバー市場は、この先、依然として需要が堅調に推移すると見込まれている。仮想化の進展でサーバー統合・集約を行うための新規サーバーの導入が進むことなどが成長の要因だ。
日本オラクルは、こうした需要に応える商材の一つとしてODAを積極的に販売する。ただ、柔軟性や拡張性が高いという性能面だけで、ハードウェアを導入する時代ではない。クラウドコンピューティングも選択肢としてあるからだ。
顧客への提案に際してODAは、「価格訴求」の側面からも、パートナーにメリットがある。ODAは、マイクロソフトのサーバーOS「Windows Server」とDB「SQL Server」の構成で本格的なオラクルDBを使える価格だ。おおむね1000万~2000万円程度で導入できる。Windowsベースと同等価格だが、導入の容易さやサーバー、DB、ミドルウェアなどの検証やキッティングのコストを考慮すると、顧客にとってODAのほうが割安感があるだろう。
国内でクラウドの普及は加速しているが、一方で、重要データの漏えいなどを懸念し、基幹システムをクラウド化せず、企業内に設置し続ける企業は依然多い。基幹システムの最適化ニーズにも応えられる製品で、オラクルと旧サンの合併効果が一気に花開く可能性がある。だが、すべての機能を一社のベンダーに任せることを意味する。この懸念を払拭することが、課題となりそうだ。