その他
大手セキュリティ3社 2012年度の戦略は「SMB」がカギ
2012/03/01 21:07
週刊BCN 2012年02月27日vol.1421掲載
2011年は大規模な情報漏えい事件が続発した。それをきっかけにセキュリティへの認識が高まり、さらにデータセンター(DC)のネットワークセキュリティの需要が急速に拡大することとなった。トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの大手セキュリティメーカー3社は、市場の活発な動きを受け、2012年度のスタートから成長に向けた活動を積極的に展開する。各社は、中堅・中小企業(SMB)の市場開拓をキーワードの一つに掲げている。3社のキーパーソンに取材し、それぞれの戦略のポイントをまとめた。(ゼンフ ミシャ)
各社とも中堅・中小向け事業の拡大を狙う
法人向け情報セキュリティ市場は活況を呈している。特定の企業を狙う「標的型サイバー攻撃」が昨年から急増し、SMBを含め、ユーザー企業が幅広くセキュリティに対する認識を高めているからだ。さらに、DCの利用が旺盛になったことに伴うネットワークセキュリティの需要や、新型モバイル端末の法人利用の増大などが、セキュリティ市場を活性化させている。
トレンドマイクロは、2012年度、企業を標的型攻撃から守ることを提案の切り口として、統合型サーバーセキュリティ「Deep Security(DS)」の展開に注力する。「DS」を、主力商材である「ウイルスバスター Corp.」に続く法人ビジネスの第二の柱に育てようとしている。今年度中にコンサルティング力を強め、「DS」を同社の得意分野である大手企業に展開。それと同時に、2月に「DS」のSaaS版を投入して、SMB市場の開拓に意欲をみせている。
トレンドマイクロは、SMB市場の開拓にあたって、今年の春をめどに、サーバーを販売するベンダーと提携して、「DS」のSaaS版をサーバーとセットしたかたちでSMBに販売するモデルを開始する。このモデルは、これまで製品の“箱売り”が主流だった同社にとって、SMBを攻略するうえで新たなアプローチ手段となる。同社は、SMBに強いサーバーの販社と提携の話を進めているところだ。日本地域担当の大三川彰彦取締役は、「2012年度は、標的型攻撃、モバイル、クラウドの三つに注力し、売り上げを伸ばしたい」としている。
新年度を直前に控えて、トレンドマイクロだけではなく、外資勢も事業拡大に必死になっている。
シマンテックは、(1)大手企業、(2)メーカーへのOEM提供、(3)ディストリビューション(=SMB)、(4)クラウドサービスプロバイダの四つの分野のなかで、「2012年度は、伸び悩んでいるSMB事業の強化を最もプライオリティの高いものに位置づけている」(河村浩明社長)と断言する。同社はこの数か月間でSMB向けの販売網を大きく再構築し、パートナーを通じてSaaS型サービス「ドット クラウド」をライセンス形態で提供するなど、SMB市場を開拓するための基盤を築いてきた。
シマンテックにとっての2012年度は、3年間で売り上げを倍増させる中期計画の2年目にあたり、河村社長は「来年度は20%の成長を目指している」と自信満々だ。目標達成のため、優先順位が最も高いSMBビジネスの強化のほかに、エンタープライズ向け展開にも拍車をかける。同社は、大手向け案件でカギとなるコンサルティングの一部を販売パートナーに任せる役割分担を推進すると同時に、シマンテックが自社で行うコアコンサルティングの人員体制を強化する考えだ。
ちょうど1年前に、米国本社が大手チップメーカーのインテルに買収されたマカフィーは、2012年度、セキュリティとハードウェアの両方をもつという強みを商材に反映し、官公庁やテレコム会社を相手にした大口案件の獲得を目指している。昨年後半に、インテルと共同開発した技術「DeepSAFE」を発表し、この技術を採用した製品展開によって、自社の大型DCを保有し高レベルのネットワークセキュリティを求める超ハイエンドのユーザー企業を狙う。マカフィーもSMB市場に着目している。SMBに強いパートナー体制を築き、ターゲット市場を大手企業から徐々にSMBまで拡大する方針だ。
マカフィーは、今年2月にパートナー支援プログラムを刷新した。これまで十分でなかった技術サポートを拡充するほか、販売パートナーの製品プロモーションを体系的に支援する。このプログラムの狙いは、「パートナーの数を倍増し、とくに強い販売力をもつメガSIerと大手ハードベンダーを当社パートナーとして獲得する」(コーポレート事業統轄の茂木正之取締役常務執行役員)ということにある。
調査会社のIDC Japanは、ソフトウェアとアプライアンスを合わせた2012年度の法人向け情報セキュリティ市場の売上規模を、およそ2400億円と予測している。メーカー大手3社はこのところ、市場開拓の取り組みに弾みをつけており、競争が激化することは間違いない。
表層深層
クラウドコンピューティングの普及やスマートデバイスの登場などによって、セキュリティ市場を取り巻く環境が大きく変化している。単にデバイスを守るのではなく、企業の財産であるデータを保護することが情報セキュリティに求められている。
セキュリティメーカー・販社は、ユーザー企業が情報をどのようなかたちで管理しているかを把握し、それに適したセキュリティを提案することが販売するうえで必須となる。
大手セキュリティメーカー3社が2012年度に開拓しようとしているSMB市場。このマーケットは、十分なセキュリティ対策の導入率がまだまだ低く、メーカーにとっては魅力的な市場に映る。とくに、2011年には大型情報漏えい事件が相次いで発生したことを受けて、多くのSMBは、自社が蓄積・活用する情報をきちんと守ることができるかどうか不安感を抱くようになってきた。
SMBの場合は、企業自体が標的型攻撃の直接なターゲットになる例は少ないだろう。しかし、ネットワークでつながっている大手取引先がサイバー攻撃されれば、間接的な被害を受ける危険性が高い。
セキュリティメーカーが力を入れるのはSMBだけではない。日増しに重要な市場となっていくのは、急速にユーザー企業の利用が増えているデータセンター(DC)だ。DC向けは規模が大きく、セキュリティメーカーにとっては是非とも獲得したい市場だ。ここでも熾烈な戦いが展開されることは確実だ。
2011年は大規模な情報漏えい事件が続発した。それをきっかけにセキュリティへの認識が高まり、さらにデータセンター(DC)のネットワークセキュリティの需要が急速に拡大することとなった。トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーの大手セキュリティメーカー3社は、市場の活発な動きを受け、2012年度のスタートから成長に向けた活動を積極的に展開する。各社は、中堅・中小企業(SMB)の市場開拓をキーワードの一つに掲げている。3社のキーパーソンに取材し、それぞれの戦略のポイントをまとめた。(ゼンフ ミシャ)
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