システムを「所有する」から「利用する」流れは、ユーザー企業の間で加速の一途をたどっている。この流れを受けて、SIerも従来の事業から、サービス型ビジネスの検討、展開が進んでいる。今、セキュリティ市場をけん引しているのも、サービス化の流れだ。セキュリティメーカー各社にとってクラウド化の流れに乗るうえでの懸案となっているのは、いかにxSP(ASPなどのサービスプロバイダ)や、通信事業者、SIerなどと協業し、提供サービスとしてセキュリティを組み込んでいくかということだ。(鍋島蓉子)
専門部隊を新設して開拓に注力
シマンテックは、買収したメッセージラボのSaaSサービスメニューを拡充して、自社ブランド「Symantec.cloud」を展開。これを顧客に直接販売、もしくは既存のチャネルを介して販売するほか、通信事業者、xSPに対して製品を提供するかたちをとっている。
同社は、昨年6月1日付で「テレコム営業部」を設置。10人強の部隊で現状は顧客ごとに担当を配置しているさらに今年5月1日付で通信事業者から人材を2人投入する。河村浩明社長は、「xSPや通信事業者は、自社回線の先にあるユーザー企業の情報を管理したり、セキュリティの担保など、クラウドならではのサービスを展開して、付加価値を提供するMSP(マネージドセキュリティプロバイダ)サービスに動いている。それに対応していく」と、新戦力を増強した理由を語る。新たに加わった2人は顧客担当とは別に、横断的にサービス企画の中心となり、xSPや通信事業者とともに新サービスを創出していくという。直近では、NTTドコモとモバイルPC向け情報漏えい対策ソリューションの共同開発で合意。NTTドコモのFOMA回線利用企業に対して、第2四半期をめどに提供する予定だ。
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シマンテック 河村浩明社長 |
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トレンドマイクロ 大三川彰彦取締役 |
シマンテックは、「MSP活動を支援するためのコンサルティングや国内顧客向けに日本に特化したソリューションを開発・市場投入するための『ジャパンエンジニアリングセンター』などとも連携しながら、顧客のニーズに合わせた柔軟な組織をつくっていく」(河村社長)としている。
一方、トレンドマイクロは今年1月1日付でクラウドに特化した30人体制の組織「テレコム&クラウドソリューション営業部」と「テレコム&クラウドSEチーム」を発足させた。
トレンドマイクロは「クラウドセキュリティNO.1」を掲げてクラウド戦略を推進している。物理、仮想、クラウドが連携したハイブリッド環境を一つのアーキテクチャで守ることができる「Deep Security」によって、クラウドインフラからそのサービスを利用するユーザーのOS、アプリケーションを保護するソリューションを提供する。また、スマートデバイスなど、多様化するエンドポイントに対するセキュリティ対策ソフトと、統合管理を実現する「Mobile Security」を順次展開。そのほか、クラウドのデータを保護し、オンプレミスとクラウドでやりとりするユーザーのデータも監視できるネットワーク型の「DLP」や「Secure Cloud」、企業システムからクラウド、モバイルデバイスも含めた端末までをトレンドマイクロのエンジニアが包括的に監視して対策を打つ「Threat Management Solution」がある。
従来のライセンス製品とは売り先が異なるので、これらの特別な販売部隊を設立した。従来型のライセンス販売だけでなく、xSPが提供するサービスに組み込む形態や、トレンドマイクロのデータセンターから提供するSaaSを通信事業者あるいはxSPに提供する施策を推進するという。直近では「日立電子サービスが「Deep Security」を活用したSaaSの展開を開始している」(大三川彰彦取締役)という実績がある。
マカフィーはあえて専任部隊を設けていないが、大手金融や官公庁などとともに、通信事業者に対して製品アプローチを強化するため、エンタープライズ営業本部が法人ビジネスを推進している。同社はハイタッチセールスを強化しており、推進するセキュリティの統合ソリューションによって、企業のインフラをすべて保護する包括的セキュリティ戦略を展開している。企業システムでクラウドを利用する動きが強まっているなかで、通信事業者との提携も必須となってくる。
表層深層
ユーザーのクラウド利用が進むなかで、セキュリティでもクラウドサービスの展開が加速している。
調査会社IDC Japanが今年2月に発表した予測によると、セキュリティサービスの2009年から2014年の年間平均成長率は8.5%。2014年には、8776億円に到達するとされている。
モバイルデバイスを使って、どこからでも情報を引き出して活用する時代が到来している。そして東日本大震災をきっかけに、ユーザー企業のデータをクラウド活用(データセンターに保管する)の重要性がいっそう高まってきている。
そうした動きを受けて、カスペルスキーラブスジャパンが4月にxSP向けの新製品を発表。法人向け製品「Kaspersky Security Center Service Provider Edition」がそれだ。複数の顧客のセキュリティを一括管理する機能が特色となっている。
同社の加賀山進会長は「日本ほどSI市場が大きな国はあまりないが、そんななかでSIerもサービスモデルにシフトしようとしている。そこにヒントを見出し、工夫して市場に入りこみたい」と意気込みを語っている。セキュリティ各社の目は一様にxSPや通信事業者に向いている。(鍋島蓉子)