北海道社会保険病院(岸不盡彌病院長)は、医師や看護師の業務の効率化を目的に、2012年2月、iPad/iPod touch経由で電子カルテシステムを利用でき、MDM(モバイルデバイス管理)機能によって情報漏えいを防ぐソリューションを導入した。これは、セキュリティ事業の日本ベリサインが提供したもの。現在、病院はこのソリューションを全6棟のうちの1棟で使っており、今後、導入を全棟に拡大する計画だ。
北海道社会保険病院
概要:札幌市にある社会保険病院。1953年に設立された。市内中心部の地域中核病院で、豊平区を中心に、およそ50万人の住民を対象とする急性期対応の高度医療を提供している。病床数は358床。
プロダクト提供会社:日本ベリサイン
プロダクト名:電子カルテ向けスマートデバイスソリューション
院内での機器構成イメージ
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日本ベリサイン ソリューション開発部 小早川知昭部長 |
札幌市南部を中心として、約50万人の診療対象人口を抱える北海道社会保険病院は、以前から、患者情報をデジタル化し、バーコードスキャンで管理する「電子カルテシステム」を導入している。
医師や看護師は、これまで患者の様子を診るベッドサイド業務で、従来型のノートパソコンを電子カルテシステムのクライアント端末として利用していた。ノートパソコンをナース用のカートに乗せ、病室でベッドサイド業務を行っていたのだ。昨年、古くから使っているノートパソコンは持ち運びにくいだけでなく、バッテリの寿命も短くなっているとみて、病院の経営部は端末の入れ替えを決断。そして、新しいデバイスとして、携帯性にすぐれるiPad/iPod touchの導入を決めた。
北海道社会保険病院でITの導入を担当するシステム管理室の練生川和弘係長は、iPad/iPod touchの導入が決まった後、それらの端末を既存の電子カルテシステムで利用することができ、しかも患者情報の漏えいを防ぐための堅固なセキュリティ機能があるシステムを求めていた。練生川係長は、「患者のデリケートなデータを扱っているので、スマートデバイスを活用して電子カルテを手軽に操作できるのはいいが、セキュリティ面で問題が生じるのではないか」という不安を抱えていたという。
そんななかで、2011年6月、練生川係長は日本ベリサイン・ソリューション開発部の小早川知昭部長から、同社のMDMシステムについての提案を受けた。
小早川部長は、最初はMDMだけを北海道社会保険病院に提案したが、システム管理室からの要望を受け、MDM単体ではなく、「電子カルテ向けスマートデバイスソリューション」を目指して、病院側と一緒にシステムを開発した。今年2月に、1棟への導入が完了したソリューションは、リモート接続によって既存の電子カルテシステムから利用することが出来る。MDM機能を備え、医師や看護師がiPad/iPod touchからシステムにアクセスする場合に、電子証明書によって端末認証を行い、認証した端末だけ接続ができるようになっている。練生川係長は、「このシステムで、モバイル環境を安心して医療現場に提供することができた」と語る。
北海道社会保険病院が日本ベリサインのソリューション導入を決断したのは、看護師のポジティブな反応が一つの要因となった。
病院はソリューションのテスト導入を行い、日本ベリサインとの共同で、医療現場のスタッフ向けの説明会を開いた。小早川部長によれば、「説明会の場で看護師たちは、もうノートパソコンを持ち運ばなくていいという話を聞いて、手を叩いて喜んだ」そうだ。北海道社会保険病院では、ソリューションの一部導入が完了した今、「実際に使っていて、仕事が楽になった」との声が多く聞かれるという。
日本ベリサインにとって、北海道社会保険病院は「電子カルテ向けスマートデバイスソリューション」の初の導入事例だ。小早川部長は、「今後、販売パートナーを通じて、全国の病院に展開していきたい」と意気込んでいる。(ゼンフ ミシャ)

ベッドサイド業務でiPadとバーコードリーダーを活用し、患者情報をデジタルで管理する
3つのpoint
・端末1台あたりの維持コストを大きく削減できる
・MDM機能によって、不要な機能を制限できる
・既存の電子カルテシステムがそのまま使える