サイボウズ(青野慶久社長)は、3月7日、クラウド事業に関する同社初のプライベートイベント「cybozu.comカンファレンス2012」を開催した。基調講演で登壇した青野社長は、自社開発のクラウド基盤「cybozu.com」の特長や実績、今後の方向性を語った。(取材・文/信澤健太)

自社開発のクラウド基盤「cybozu.com」について語る青野社長
ユーザーの利便性を徹底追求
「cybozu.com」は、2011年11月21日に提供を開始したクラウドサービスの総称である。グループウェアの「サイボウズ Office」と「Garoon」をはじめ、業務アプリケーション構築PaaS「kintone」やスマートフォン用無料アプリ「KUNAI」などをラインアップに揃える。利用企業は、3か月で500社を突破している。
青野社長は初心に戻るためとして、「Fast&Easy+Entertainment」をサイボウズイズムに定義。「今のサイボウズはすぐに導入できて、誰にでも使えて、楽しいと思えるサービスを提供できているか。自問自答した結果、自信をもってイエスと言えなかった」と打ち明けた。「Fast&Easy+Entertainment」を実現するべく、たどり着いたのがクラウド・コンピューティングであり、「cybozu.com」だったという。
「Fast」について、青野社長は導入前と導入後に分けて説明。「導入前に負担をかけてきた。ユーザー企業は、ハードウェアやソフトウェアの購入、インストール作業、運用の準備が必要となっていた。『cybozu.com』はこれらを解消する」。導入後においても、これまではデータ量の増加に伴い、サーバーの負荷が増大し、動作が重くなるという症状に見舞われていた。「cybozu.com」は、HTTPレベルでの最適化やサーバーの負荷分散、ダウンロード処理のオフロードなどを実施し、安定した動作環境を提供。24時間365日リアルタイムにモニタリングしているため、万が一遅延などが発生しても緊急対応できる体制を整えているという。
「Easy」については、経営者とシステム管理者、ユーザーの三者の立場で享受できるメリットを強調した。ハードやソフトなどの初期導入コスト、メンテナンス料に頭を悩ませてきた経営者は、「cybozu.com」によって初期コストをすべて削減可能となる。利用料は「Office」が月額500円から、また「Kintone」が月額880円からで、ウェブ上で申し込めばすぐに利用を開始できることをアピールした。
柔軟な利用形態も売りだという。オンプレミス型であれば、ピーク時に合わせてハードやソフトも購入する必要があるが、季節変動に応じてユーザー数を調整し、常に利用のピークに合わせることができて高い満足度を得ているというユーザー事例を紹介した。
システム管理者は、ハードのリプレースやトラブル対応などで突発的な対応や休日出勤を強いられている。『cybozu.com』によって、これらから解放される。サイボウズのシステム管理者は創出した時間を使い、重要度が高くて緊急性が低い業務により多くの時間を割けるようになったことを説明した。
ユーザーに対しては、「Usability Lab」の創設を通じて、使い勝手のよさを追求していることを語った。「社内外から被験者を招いて、サービスの操作をリアルタイムに観察している。実施結果は、できるだけ早急に製品に反映している」。
Protected Cloudという新しい概念
「Entertainment」については、オンプレミス型がさまざまな面でユーザー企業に不安を与えていることに言及。サーバー本体やハードディスクの故障、バックアップの失敗、セキュリティの設定ミスなどのリスクを抱えていることを説明した。そのうえで、同社は国内にデータセンターを設置していることや情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得していること、全レイヤーで多重化していること、すべて自社開発であることなどを挙げ、安全性と信頼性をアピールした。
強固な2ファクター認証も特長。常時SSL通信で、個別のサブドメインの発行、BASIC認証、IPアドレス制限などの機能を用意している。「プライベートクラウドでもパブリッククラウドでもなく、中間にあるのがProtected Cloud。セキュアであるプライベートの長所と、安くて手軽というパブリックの利点を生かしている」。
青野社長は、ユーザー企業のチームワークを向上させるべく、コミュニケーションツールを充実させていくことを宣言した。具体的には、「cybozu.com」の環境でユーザーが独自のアプリを開発できる「CyDE-P」を提供する予定であることを初めて明かした。
このほか、販売促進のためにクラウドサービス紹介制度「cybozu.comフレンド」を開始することを発表。「cybozu.com」上で提供するコラボレーションツールを顧客企業などに紹介すると、契約状況に応じて法人口座にキャッシュバックされる仕組みになっている。