愛知県小牧市に本社を置く有力物流・倉庫事業者の名豊興運(倉田直樹社長)は、日立製作所のクラウド型倉庫管理システム「Sherpa/倉庫管理クラウドソリューション」を採用した。名豊興運は愛知県を中心に六つの物流センターと6か所の事業所を展開しており、このなかでも最新鋭の冷蔵・冷凍設備を備えた「小牧南物流センター」に「Sherpa」を適用した。システムの活用によって“攻めの営業”の実践が可能になり、多数の新規顧客の獲得につなげた成功事例である。
名豊興運
会社概要:地場有力の物流・倉庫事業者。車両保有数は冷蔵冷凍車150台余りを含むおよそ230台。本社を置く愛知県小牧市は、東名高速と名神高速、中央自動車道が接続する物流の要衝である。
サービス提供会社:日立製作所
サービス名:Sherpa/倉庫管理 クラウドソリューション
名豊興運のシステム構成イメージ
名豊興運の倉庫管理システムは、これまで荷主のものを使うケースが多かった。ただ、この場合「物流ビジネス」は問題なくても、「倉庫ビジネス」という観点でみた場合、「付加価値の高いビジネスを組み立てにくい」(名豊興運の筧浩司取締役)というネックがあるため、2009年に開業したばかりの最新鋭の小牧南物流センターに倉庫管理システムを導入することを決断した。ITシステムに精通した人材に限りがあることから、システムに選定に当たっては、管理の負担ができる限り少ないことを重視。自社内にシステムを設置しないクラウド/SaaS型を探したところ、日立製作所が2011年4月からサービスを始めたばかりの「Sherpa/倉庫管理クラウドソリューション」にたどりついた。名豊興運の山田健二・小牧南物流センター長は、「信頼性の高い日立製作所のデータセンターで運営されており、事業継続計画(BCP)の強化にも役立つ」と、一石二鳥であることを選定の理由に挙げる。

左から名豊興運の山田健二センター長、筧浩司取締役、佐々木智広氏
「Sherpa」は、冷凍食品大手のニチレイと日立グループが協業して開発した冷蔵倉庫向け業務パッケージで、食品を多く扱う「小牧南物流センターの業務にうまく適合する」(Sherpaを担当する日立製作所の高橋宰・生活産業システム部主任技師)ことも納入決定の要素となった。事業所内でのシステム構築(SI)が発生しないクラウド/SaaS型だけあって、2011年7月、システムの発注からわずか2か月半で本格稼働にこぎ着けた。工数が多いSIこそ発生しないものの、マスターデータの登録にはてこずった。データだけはユーザーの資産なので、「ご自身で登録していただいた」(日立製作所の阪口輝明・生活産業システム営業部主任)という経緯があり、名豊興運の担当者は「通常業務もこなさなければならないので、立ち上げ直前の6月頃は連日のように帰宅が午前様の状態」(佐々木智広氏)になりながら、数千アイテムのデータ入力を完遂した。

左から日立製作所の阪口輝明主任、高橋宰主任技師、西木陽平技師
システムを入れた成果には、目覚ましいものがあった。自前のシステムで倉庫管理ができるようになって、名豊興運は積極的に新規顧客の開拓に打って出た。例えば地場名産の名古屋コーチンの鶏肉や、名古屋港に輸入された冷凍シャケ、百貨店などで使う保冷剤などを扱うさまざまな顧客を獲得。日立製作所の西木陽平・生活産業システム部技師も「Sherpaの第1号ユーザーにして、最初の成功事例」と賞賛する。これまでは、どちらかといえば、大手安定顧客に向けた受け身の営業が多かった名豊興運だが、Sherpaを活用することで積極的な攻めの営業に切り替えることが可能になった。山田センター長は「食品を預かる場合、顧客が最も気にするのが賞味期限。出入庫の指示を受けて、もし賞味期限に基づく本来の順番と違っていたら即座に気づいて荷主に報告する。こうした気配りができるかどうかで顧客満足度が大きく違ってくる」と、満足度重視の姿勢で新規顧客の拡大に意欲を示す。(安藤章司)
3つのpoint
・管理負担が小さいクラウド式で、わずか2か月半で稼働
・独自サービスを前面に出して新規顧客の開拓につなげる
・高信頼のデータセンターで事業継続にも役立てる