パラレルス(富田直美社長)は、パートナー企業向けカンファレンス「Parallels Summit 2012 Japan」を6月5日に開催した。基調講演や展示、懇親会などを通じてパートナーになり得るホスティング事業者やSIerなどの参加者に対して、同社やスポンサー企業が自社製品の強みを訴えながら、中堅・中小企業(SMB)を開拓する策を説明。パートナー企業のビジネスチャンスを創出するとアピールした。(取材・文/佐相彰彦)
コンビニ、自動販売機になる
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| 富田直美社長 |
「Parallels Summit 2012 Japan」の冒頭では、富田社長が「中小事業者向けクラウド市場はゴールドラッシュ!クラウドの勝者となる方法」と題する基調講演を行い、SMBの市場には大きなビジネスチャンスがあることを訴えかけた。
SMB向けの案件を獲得する策として、富田社長はコンビニエンスストアを例に、「品揃えが豊富で、いつでも気軽に商品を購入できることが成功につながっている」と説明。パートナー候補であるSMB向けサービスプロバイダに対して、SMB開拓にあたってコンビニエンスストアのようなビジネスモデルを構築する重要性を語った。ほかにも、「コンビニエンスストアの本部では、SCMやERP、CRMを駆使して顧客に必要な商品を分析している。顧客を分析できるようなクラウド基盤を当社が提供する」とアピール。同じような例として自動販売機を挙げながら、「それぞれのSMBが利用するソフトはさまざま。クラウドサービスは自販機のようなものであって、これを通じていかに多くのソフトを提供するかがカギ」と述べた。
このほか、日本マイクロソフトやデル、NEC、ネクスト・イット、日本ジオトラストなどスポンサーの担当者がクラウド事業に関して講演。さらに、参加者同士でコミュニケーションを図る交流会も開かれた。
「APS」がアプリ拡充のカギ
基調講演で、富田社長がコンビニエンスストアや自動販売機を例に挙げたのは、数多く存在するSMBのニーズはさまざまであって、SMB各社を訪問して一つひとつのニーズに応えるよりも、クラウドサービスを提供するためのプラットフォームにSMBが欲しいアプリケーションを揃えたほうが効果的と判断しているからだ。富田社長は、「SMBは、多くのクラウドサービスから自社に適したものを使いたいと思っている」とみている。こうした状況を前提にして、サービスの配信、管理、課金を自動化するパラレルスの「Parallels Automation」を使うことによってSMBに適したサービスを提供するためのクラウドプラットフォームを構築することができるとアピールした。
また、「標準規格『APS(アプリケーション・パッケージング・スタンダード)』に準拠したアプリケーションの充実がカギを握る」と語った。とくに、日本語に対応したアプリケーションを増やすことが重要と判断しており、パラレルスでは日本でAPSを普及・促進するための団体「APSフォーラムJapan」を設立。ホスティング事業者やISV、システムインテグレータなど、現時点で15社弱が参加している。
SMBを対象とするクラウド関連ビジネスは広がる可能性があるといわれながらも、日本の市場では期待ほどには普及していない。富田社長は、「日本のSMB向けクラウドサービス市場は年平均成長率が16%で、2015年には、2011年の市場規模と比べて2倍以上に膨れ上がるだろう」と分析する。多くのパートナー企業と協業して日本でクラウドを普及させるというパラレルスの意気込みが、今回のイベントを通じて伝わってきた。

「Parallels Summit 2012 Japan」では、パラレスルの製品(写真上)やパートナー企業のソリューションを展示していた