パラレルス(富田直美社長)が、アプリケーションの標準規格「APS(アプリケーション・パッケージング・スタンダード)」でクラウドサービスの標準化を進めようとしている。顧客でありビジネスパートナーでもあるSP(サービスプロバイダ)やホスティング事業者に対して、APSに準拠した同社製品の導入を提案。また、SMB(中堅・中小企業)にクラウドサービスが浸透することを見越して、SPの販社にあたるリセラーの確保にも積極的だ。なぜ、一ベンダーが、ここまでもクラウドの普及に力を入れているのかを取材した。
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| 富田直美社長 |
米国時間の2月14~17日、米パラレルスは、フロリダ州オーランドで「Parallels Summit 2012」を開催した。このイベントは、SPやホスティング事業者などが集まるカンファレンスで、パラレルスのビジョンをアピールするほか、参加企業同士がコミュニケーションを図る場といった意味合いもある。
基調講演では、バーガー・スティーンCEOが、SMBにクラウドサービスの利用を促す策や、APSの重要性をアピール。「世界でSMBのIT投資額が1兆ドルに達している。これだけ大きな市場規模があるので、クラウドサービスが普及する可能性は非常に大きい」と述べたうえで、「クラウドを広めていくには、地域や業界に特化したリセラーが非常に重要となる」と持論を展開した。
パラレルスは、ISVのアプリをSMBがクラウドで利用するための流通経路として、ISVとSMBの間にSPとリセラーが入るエコシステムの構築を進めている。その理由は、SPやホスティング事業者がクラウド基盤を構築するための製品をAPSに準拠して提供しているからである。日本では、「ISVに対してAPSを広めることに力を注ぐ」(富田社長)との方針を示す。海外にはアプリが300近くあるが、日本には10種類程度しかないためだ。同社の製品を多くのSPやホスティング事業者が導入するには、アプリの拡充が必要と判断。そのため、今年4~6月に「APSフォーラム」と称する、ISVを集めたイベントを実施する予定だ。
また、富田社長は、「パートナーであるホスティング事業者のなかには、クラウドサービスに関心をもっていないところもある」と、残念な表情をみせる。いくらAPS準拠のアプリが充実したとしても、基盤がなければSMBには浸透しない可能性がある。こうした事情から、クラウドサービスによってビジネスの幅が広がることをアピールする。
このような取り組みは、製品の拡販が目的なのはいうまでもない。しかし、ISVへの提案やリセラーの確保などまで網羅しているのは、エコシステムを確立してクラウド市場で主導権を握る狙いがあるからだろう。(佐相彰彦)

「Parallels Summit 2012」で、米国本社のバーガー・スティーンCEOがSMBへのクラウド浸透策やAPSをアピールした