学習院大学は、ITシステムのリプレース時に、パソコンや専用端末の代わりにNComputing製シンクライアント端末を導入した。システム管理者が少人数でも対応できるように、管理の負担軽減を実現したほか、学生などが目的以外では使えないようにするというセキュリティの強化も実現した。使い勝手も違和感がないという。ROI(費用対効果)が高いとして、ジェイズ・コミュニケーションが提案し、導入へと結びついた。
学習院大学
概要:1847年(弘化4年)に学習院として開講。1949年、新制大学として開設され、皇族が通う学校として知られる。2009年にネットブート型シンクライアント1700台程度を導入するなど、IT化に積極的な姿勢をみせている。
プロダクト提供会社:ジェイズ・コミュニケーション
プロダクト名:「NComputing」
NComputing製シンクライアントの設置場所

学習院大学は少ない人員で全体のシステムを管理している(左から2番目が計算機センターの村上登志男氏、3番目が城所弘泰氏、右端がジェイズ・コミュニケーションの稲田博己グループマネージャ)
学習院大学は、定期的にシステムのリプレースを行っており、2012年4月からの年度スタートに備えて、基幹システムを含めた刷新を検討していた。システム刷新を行うなかで課題と捉えていたのは、学生が使うクライアント端末で、とくに図書館に設置した図書検索システムと、学生のマルチメディア教室などに設置している印刷用システムだ。これまで専用端末を使っていたものの、誰がアクセスしたかを把握することができなかった。「管理する側としては、さまざまな端末のセキュリティを強化しなければならないと考えていた」と、学習院大学計算機センターの城所弘泰氏は振り返る。
セキュリティを強化するにあたって、計算機センターではシンクライアントシステムが候補に挙がっていた。すでに学生向け端末としてネットブート型シンクライアントを09年に導入しており、シンクライアントのメリットを知っていたからだ。しかし、従来は専用端末を使うシステムなので、コストはさほどかかっていなかった。城所氏は、「正直にいえば、専用端末をシンクライアントにリプレースするほどの予算がなかった」と、事情を説明する。
そんな状況にあって、ジェイズ・コミュニケーションは文教市場での実績を増やそうと、学習院大学を熱心に訪問していた。稲田博己・営業本部東日本営業部第3グループマネージャは、「できるだけコストのかからないシンクライアントという点で、他社に比べて2分の1程度安いNComputingのシンクライアントであれば、課題を解決できるのではないかと考えた」という。しかし大学側は、「コストが安い分、本当にシンクライアントとして機能するのかどうか、半信半疑だった」と、計算機センターの村上登志男氏は打ち明ける。そこで、デモストレーションや実機の体験で製品を把握。「低価格なのに、こんなにもスムーズに動くのかと、いい意味で驚いた」(村上氏)と高く評価し、導入に至った。
NComputing製シンクライアントを導入した端末数は155台。図書検索端末として55台、印刷用端末として50台、そして「学生がパソコンとして使っても違和感がないはず」(城所氏)と判断してセミナールームに50台を設置した。当初、図書検索用に55台を導入する予定だったが、性能がいいとみて、導入台数を約3倍に増やした経緯がある。
ジェイズ・コミュニケーションにとっては、学習院大学からの案件が初受注となった。また、ネットワーク機器やセキュリティ製品の販売が中心の同社がシンクライアントを提供した点でも、稲田グループマネージャは「大きな実績」と手放しで高評価している。さらに、ディストリビュータの同社がユーザーを直接開拓してシステムを構築した点でも珍しいケースとなった。「この案件を販売パートナーへの支援に生かしていきたい」という考えを示している。
学習院大学計算機センターは、大学のほかに小学校や中学校、高校など系列学校のシステムも管理している。システムに係る人員は、関連組織を含めて5人程度で、大規模なシステムを管理している割には人員が少ない。しかも、管理しなければならない端末は3500台余りにも達している。「人員が少ないからこそ、効率よく管理することを常に考えなければならない。これまで管理しきれなかった端末のシンクライアント化は効果が大きい」と、城所氏は今回の成果を噛みしめている。(佐相彰彦)
3つのpoint
・端末のセキュリティ強化
・少ない人員で効率的な管理
・ROI向上を常に追求