神奈川県横浜市を中心に進学塾や大学受験予備校を展開する湘南ゼミナール(志賀明彦代表取締役)は、クリックテック・ジャパンのBI(ビジネスインテリジェンス)製品「QlikView」を導入した。教室や学年といったさまざまな角度から総合的に事業を分析できるようになり、その効果に確かな手応えを感じている。
湘南ゼミナール
会社概要:1988年4月設立。神奈川県横浜市を中心に、幼児・小学生・中学生・高校生を中心とした進学塾、大学受験予備校などの事業を手がけており、143教室を展開する。2012年3月期の売上高は63億7000万円。
サービス提供会社:アグニコンサルティング
プロダクト名:「QlikView」
湘南ゼミナールで活用している「QlikView」
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湘南ゼミナール 大生隆洋取締役 |
湘南ゼミナールは、1988年4月の設立。ここ10年間で売上高は3倍以上に伸び、2012年3月期は63億7000万円を計上した。神奈川県に限ってみると市場は拡大傾向にあるが、少子化を受けて親が子どもにかける教育費の使い道をより真剣に考えるようになっている。大生隆洋・取締役経営企画部長は、「世間は塾を一企業としてみるようになっており、サービス品質などが問われている」と語る。こうしたなかで求められるのは、内在する課題をいちはやく発見してスピーディに改善することだ。湘南ゼミナールは、迅速な意思決定に役立つシステムはないものかと真剣に探していた。
大生取締役は、「検索したいデータがあってもすぐにアクセスできないし、『なんとなくこういうことではないか』と、漠然とした印象で判断してしまうことが多かった」という。かつて、2000年代に経験した基幹システム導入の失敗が、システムの導入に暗い影を落としていた。7年ほどかけて導入した一大プロジェクトだったが、経営陣の期待を裏切り、生徒の授業料を引き落とす仕組みしか構築できなかった。
「次はしっかりと成し遂げたい」という思いを強くした大生取締役は、パッケージ/サービスの選定に着手した。だが、「どのERPベンダーの提案もしっくりこなかった。要件定義から始まるが、そもそも分析したいことや業務プロセスは頻繁に変わる。ベンダーの論理で説明されていると感じた」。
20社程度のサービスを検討するなかで、BIというIT用語を知ったという。「QlikView」は、特許技術によって全データを論理圧縮し、メモリ上に展開するBIツールである。OLAPキューブやデータマートなどの事前集計は不要で、すべてのデータの関係性を、画面操作をしたその瞬間に表示する「連想技術」を強みとしている。大生取締役は、人の感性に合わせて、分析の切り口を変えることができることに魅力を感じた。検討の結果、「QlikView」を提案したアグニコンサルティングが導入を手がけることとなった。
「QlikView」の導入に要した期間は2か月半ほど。2011年12月に本格稼働を開始した。現在、経営層や事業部長クラスを中心に20~25人が利用している。経営会議の最中に出てきた疑問をもとに分析軸を設定し、“解を探索する”ことができるようになった。Microsoft Excelでは、膨大なデータ量をもとにしたレポート作成には限界があったが、「QlikView」ではそれがなくなった。
導入以前は、休塾や退塾の人数が減少していて、生徒数そのものは伸びていたので、漠然と事業は好調だと捉えていた。だが、「QlikView」を導入してみて、実際には問い合わせ数や新入会の人数の伸びが鈍化していることに気づいた。将来を見据えた経営方針の変更はもとより、広告の雰囲気や業務の変更といった施策を早期に打ち出すことができたという。
湘南ゼミナールの場合、ユーザーインターフェース(UI)にかなりのこだわりをもっているのが、他社の事例と比べて際立つ点だ。微妙な色使いや導線に配慮して、レポートやグラフを作成している。大生取締役は、「システムに合わせて使うのでは社内に浸透しない。直感的に使えて、マニュアルを不要にすることを目指している」と説明する。
目下の課題は、スマートデバイス上での分析などに対応すること。大生取締役は「利用の目的や運用のタイミングをしっかりと考える必要がある」と捉えている。(信澤健太)
3つのpoint
・事前集計が不要という手軽さ
・分析の切り口を柔軟にできる
・意思決定が迅速になった