ERP(統合基幹業務システム)ビジネスが活気づいている。中国・ASEANを中心とするアジア成長市場でERPの刷新が相次いでいるからだ。NECは製造業向けのERPコンサルティングの引き合いが倍増しており、また、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は自社製品のグローバル対応ERP「A.S.I.A.」の累計納入数を向こう3年で直近の約2倍に相当する500法人へ拡大する目標を掲げる。
国内に限ってみれば、ERPは導入二巡目、三巡目の成熟市場であるものの、日系企業の多くが進出する中国・ASEANのアジア成長市場全体で捉えると、「これまでになかった新しい市場が見えてくる」とB-EN-Gの三島良太・営業本部営業3部長はコメントする。ERPは国内外に展開するグループ企業の販売・財務・給与・生産など基幹情報を統合するシステムだが、その構築のあり方を区分してみると「ITガバナンス」や「IT組織」「ITアーキテクチャ」など各階層ごとにグローバル統一仕様にするか、地域ごとに最適化するのかに大きく分かれる(図参照)。
NECは世界のグローバル企業のベストプラクティスをベースとして、主に製造業向けERP最適化コンサルティングやSIに力を入れている。同社の長谷川充男・コンサルティング事業部長は、「リーマン・ショック前と比べて、直近の引き合いは2倍余りに急増している」と、中国・ASEANを中心にニーズが急拡大している様子を語る。一方、B-EN-Gは、財務会計を軸に販売管理機能などを付け加えた海外拠点向けERP「A.S.I.A.」について、主にASEAN地域での展開を急ぐ。カスタマイズ工数やライセンス価格を極力抑えたバージョンも揃えるなどして、「国内外の累計納入数を向こう3年で500法人と、倍増を目指す」(B-EN-Gの三島部長)と鼻息が荒い。
ASEANよりも財務会計絡みの規制が厳しい中国ではどうか。B-EN-Gは主力商材の一つである生産管理システムの「MCFrame」を主軸に据えて売り込む。「MCFrame」の国内トップクラスの販売実績をもち、中国でもB-EN-Gと協業関係を深めるインテック上海法人の川西弘純シニアコンサルタントは、「中国に進出している製造業ユーザーの原価意識の高まりで、原価管理にとりわけ強みをもつ『MCFrame』に対する引き合いは急増している」と、好感触を得ている。引き合い急増の背景には中国の人件費の高騰を受け、ITを活用した近代化によるコスト削減を進める製造業ユーザーが増えていることがある。インテックはこうしたニーズをテコに中国でのビジネスを拡大。上海で約30人のSE体制を早い段階で倍増させていく意向を示す。
中国・ASEAN市場は成長しているだけに変化も激しく、製造業では開発・生産の主体をアジアへ移行させてグローバル競争力を高める動きが活発化している。こうした動きに対応可能なERPを求める最適化需要はより一段と高まりそうだ。(安藤章司)