ここ数年の間に、クラウド/SaaS市場が急成長している。調査会社のミック経済研究所は、2010~14年度までの年平均成長率(CAGR)を15%弱と予測。クラウドERP市場も大きな伸びが期待できる。ベンダー各社はクラウドERPを打ち出し、企業への提案活動を強化している。サービスに対する企業の選択肢が増え、クラウドERPは無視できない存在になったといえるだろう。『週刊BCN』編集部は、クラウドERPを提供する主要ベンダーの幹部を招き、「クラウドERPベンダー座談会」を開催した。その模様をお伝えする。(司会・進行/信澤健太 写真/大星直輝)
(上段左から)ネットスイート 田村元社長、スーパーストリーム 山田誠 マーケティング企画部部長、日本オラクル 末兼達彦 アプリケーション事業統括本部 ビジネス推進本部本部長(下段左から)NTTデータビズインテグラル 中山義人社長、富士通マーケティング 渡辺雅彦 常務理事 ソリューション事業本部副本部長
ネットスイート
田村元社長
スーパーストリーム
山田誠
マーケティング企画部部長
日本オラクル
末兼達彦
アプリケーション事業統括本部
ビジネス推進本部本部長
NTTデータビズインテグラル
中山義人社長
富士通マーケティング
渡辺雅彦
常務理事 ソリューション事業本部副本部長
──まずは自己紹介と、提供しているERP(統合基幹業務システム)について教えてください。
渡辺 富士通マーケティングの渡辺です。富士通に入社して以来、財務会計をはじめ、人事給与、販売管理などのERPパッケージの開発に従事してきました。
富士通では、企業規模別に3階層のERPを提供しています。さかのぼると、財務・給与パッケージである「CAPSEL」の販売を始めたのが1975年。1990年代にドイツからSAPが上陸したのですが、それに遅れること数年、1996年に「GLOVIA」を発表しました。2年後には、「CAPSEL」も中堅企業向けERPとして生まれ変わり、製品名を「GLOVIA-C」に改めました。
その後、2006年に「GLOVIA-C」をベースとした「GLOVIA smart」、2010年には小規模企業向けに「GLOVIA smart きらら」を揃えました。「きらら」は他のパッケージと異なり、最初からSaaSとパッケージの両方を提供しています。商談のほとんどはSaaSで、パッケージは1割に満たない。
クラウドという観点から歴史を振り返ると、1990年代後半からお客様の情報システム子会社がグループ企業向けのシェアードサービスを開始しました。今でいうプライベートクラウド、あるいはグループ内パブリッククラウドにあたるでしょう。こうした大手企業に関しては、富士通が情報システム子会社の担当者、お客様の業務部門とタッグを組んでやるのがいいと考えています。
われわれの強みは、「GLOVIA」だけでも1000人以上のエンジニアがいること。中堅企業向けには、エンジニアのサービスと一体にしたプライベートクラウドをユーザー企業に勧めています。一方で、業務部門の人員が数人規模で情報システムを運用している企業向けには、パブリッククラウドの「きらら」を提案しています。
田村 ネットスイートの田村です。私は、ずっとERP畑を歩んできました。バーンジャパンを経て日本ジェイ・ディ・エドワーズ、1997年に、日本初の世界に向けたパッケージとしてGlobal Value Integrated Applications(GLOVIA)を提供することを目的に設立されたグロービアインターナショナルに入社しました。その後、SAPジャパンを挟んで、現在のネットスイートに至ります。
ネットスイートは、1998年にオラクルの中核エンジニアで今は最高技術責任者のエバン・ゴールドバーグとオラクル創業者のラリー・エリソンが設立しました。もともとは、ラリー・エリソンが、ビジネストランザクションをインターネット経由のサービスで提供するという構想をもっていたのがネットスイートの設立の起源です。
事業ドメインは、ERP、CRM(顧客関係管理)、Eコマースで、これらを一つのアプリケーションとして「NetSuite」を提供してきました。
末兼 日本オラクルの末兼です。ERP事業に従事してきた期間が長いのですが、当初は今はない「Oracle Exchange Marketplace」事業に関わっていました。これまでずっと、アプリケーションの分野でコンサルティングやプレセールスなどに携わってきています。
今の役割は、アプリケーションビジネスにおける日本での新製品の展開やパートナーの支援などです。オラクルのERPには、自社開発の「Oracle E-Business Suite(Oracle EBS)」に加えて、5年以上前に手に入れた「PeopleSoft」「Oracle JDEdwards EnterpriseOne(JDE)」があります。
2012年に、まったく新しい業務アプリケーションスイートの「Oracle Fusion Applications」をパブリッククラウドのサービスとして国内で提供することを発表しました。人材管理とCRMの分野から提供し始めています。
山田 スーパーストリームの山田です。今年5月1日付で、社名をエス・エス・ジェイからスーパーストリームに変更しました。財務会計、人事給与ソリューションの「SuperStream」のプリセールスやアライアンスなどを担当しています。「SuperStream」は世に出てから17年目を迎えました。私は、2002年から「SuperStream」事業に関わっていますが、開発元に籍を置いていた時期も合わせると、14年くらいになります。
「SuperStream」は、海外製品とは異なるスタンスをとってきました。国産ならではの強みを前面に押し出して、泥臭くやってきたつもりです。財務会計と人事給与の機能モジュールしかありませんから、ERPというと少し語弊があるかもしれません。これまでに6640社以上のお客様に導入していただいております。
ここ1~2年でクラウドに対応して、「SuperStream-NX SaaS対応版」を提供しています。
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財務会計、人事給与の専業ベンダーとして、一般会計、管理会計、支払い、債権以外にも、日本独特の固定資産やリース資産の管理などもリリースしましたので、国産ならではの強みをアピールしていきます
スーパーストリーム
山田 誠氏 |
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