中国の現地市場の開拓は、日本ITベンダーだけの課題ではない。これまで主に日本企業向けのオフショア開発を手がけてきた中国のソフトウェアベンダーも、中・長期的な成長を維持するためには、中国市場の開拓が不可欠と捉えている。(取材・文●ゼンフ ミシャ)
→「<パートナーの力を生かす“5か条”>地場に根ざすビジネスを立ち上げろ」 から読む 主に組み込みソフトのオフショア開発を行い、中部電力やシャープなど日本の大手企業を取引先としている上海東忠ソフトの叶祖偉総経理は、「オフショア開発は、直近ではまだ安定している。しかし、中国で人件費が急騰しており、日本メーカーの業績見込みがかんばしくない状況下で、いつまで安定した受注が獲得できるかは見通せない」として、従来のビジネスモデルを見直す必要を感じている。課題解決の方策として、上海東忠ソフトは中国向けビジネスの立ち上げに動いた。従来のオフショア開発に加えて、中国企業へのITサービス展開を事業の新しい柱にするための準備を進めている。
「健康」「女性」が有望市場

上海東忠ソフト
叶祖偉総経理 上海東忠ソフトは、ここ数年、オフショア開発事業の漸減傾向に備えて、上流工程のシステムエンジニア(SE)の育成に注力してきた。高いSE力を生かして、独自サービスを展開するためだ。その独自サービスの第一弾として、東京理科大学が開発した技術を活用し、自社でローカル化した肌診断アプリケーションの発売を来年1月に予定している。このアプリケーションは、専用スキャナを使って肌のシミの分析ができるもので、上海の美容院を中心に提供していく。
「上海は富裕層が多く、『健康』や『女性』を切り口とした製品は必ず売れる。上海にある何千店舗の美容室をターゲットとして、上海美容組合を通じて肌診断アプリケーションの提案を行っていく」(叶総経理)という。来年中に上海地区で約1000店舗への導入を目指しており、中国企業向けビジネスの売上比率を30%にすることを目標に掲げているそうだ。
上海東忠ソフトは、中国企業向け事業を伸ばすために、日本の技術を取り入れるべく、日本ITベンダーとの提携を強化する。「例えば、中部電力グループのSIerである中電シーティーアイが有する環境にやさしい発電ソリューションを活用し、発電のグリーン化が課題になりつつある中国で展開したい」(叶総経理)と構想している。日本のすぐれた技術をローカル化し、上海東忠ソフトの人的ネットワークや販売網を使って中国企業向けにサービスを提供するというモデルを構築し、それを横展開することを計画している。
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