ITホールディングス（ITHD）グループTISのグローバルビジネスは、中国とASEAN地域を主軸としている。中国でのオフショアソフト開発や日系既存ユーザーのアジア市場への進出サポート業務からスタートしたTISの海外ビジネスだが、2010年4月、中国・天津に1200ラック相当の大型データセンター（DC）を開設したのを機に、中国の地場市場に深くコミットするビジネスを推し進めてきた。

　今年4月にはTIS本社執行役員の宮下昌平・コーポレート副本部長が中国法人トップに着任。旧ソランや旧ユーフィットと2011年4月に合併する以前の旧TISは、本社役員クラスが中国に常駐することはなかったが、ここへきて方針を転換。これは、中国ビジネスの重要性が増したことを示している。日本の本社側では常務執行役員の水谷芳利氏がバックアップにあたる。

　宮下昌平・執行役員兼中国法人董事長は、中国ビジネスについて「調整が必要」と説く。具体的には、中国オフショア開発は、北京など人件費が高騰する大都市部ではコスト的に限界が近づき、地場市場向けSIサービスについても、DCを活用したインフラ寄りのサービスだけでなく、アプリケーションやコンサルティング、BPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）など、SIerとして「多様なサービスを展開する必要がある」（宮下執行役員）からだ。これらを総じて“調整”を行っている最中に、9月中旬、領土問題を発端とした反日感情が一気に高まる事態に直面することとなった。（つづく）