日本マイクロソフト(樋口泰行社長)は、パートナー向けイベントとして最大の「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス(JPC)2012」を9月7日に開いた。今年度(2013年6月期)は、「Windows Server 2012」や「Windows 8」など、主力製品の最新版を続々と投入する年だけに、パートナーの注目度は高く、約1800人から参加申し込みがあるほどの人気ぶりだった。イベントの内容と幹部のインタビューから、日本マイクロソフトの今年度のチャネル戦略を探る。(取材・文/木村剛士)
今年度は新製品ラッシュ
新OSでビジネスチャンスを創出

基調講演を行う
樋口泰行社長 「JPC」は、日本マイクロソフトがパートナーのために毎年開催するイベントだ。日本マイクロソフトの幹部が事業戦略を説明し、各プロダクトマネージャーやエバンジェリストなどが新製品の情報を提供。優秀な成績を収めたパートナーを表彰する式典も開いている。最新の情報をパートナーに伝達し、さらに昨年度の功労者を称えるという、年間で最大のパートナー向けイベントである。
基調講演には樋口社長が演壇に立ち、今年度は複数の新製品を市場に投入することを改めて強調したうえで、「Windows 8」のアピールに多くの時間を割いた。「非常にできがいいOSで、多くの人々に価値を認めてもらうように、かなりの広告費を投じる。一部のパートナーからは(Windows 8に関する)情報が乏しいという指摘を受けているが、ライバルと戦うための戦略なので、理解していただきたい。パートナーには必ずビジネスチャンスを提供するので、一緒に市場を盛り上げてほしい」と、意気込みを示して、パートナーの士気を高めた。

今年度からSMB事業を担当する
高橋明宏執行役 今年度から中堅・中小企業(SMB)向けビジネスを担当する高橋明宏・執行役ゼネラルビジネスゼネラルマネージャーは、「『デバイス・クラウド・ソリューション』という三つのキーワードに関連するビジネスを伸ばす方針は変わらない。やることはたくさんあるが、パートナーとの距離をもっと縮める」と説明。ソリューションについて「日本は、先進国のなかで、サーバー関連製品の売り上げが低いので、とくに強化する」と話し、新OSの拡販に意欲を示した。
新たに生まれる四つのチャンス
地方パートナーとの関係を強化

チャネル戦略立案の中枢を担う
佐藤恭平業務執行役員 パートナー支援プランの立案・推進の中心人物であるパートナーソリューション営業統括本部統括本部長兼パートナー戦略統括本部統括本部長の佐藤恭平業務執行役員は、現在のIT市場には四つのニーズがあると説明した。一つは、「Windows XP」が2014年4月にサポートが終了することに伴うパソコンOSの買い替え需要、二つ目がタブレット端末、三つ目がアプリケーションソフト開発案件の増加、最後がプライベートクラウドだ。
今年度期首に、日本マイクロソフトは、パートナーを支援するための強化策を複数打ち出している。例えば、人材育成では、「Partner Sales Specialist」という営業担当者を育成するプログラムを新設。SMB向けにソリューションとクラウドをパートナーが販売しやすくするために、「Small Business Competency」という新たな資格制度もつくった。パートナーからの要望が強かったクラウド「Office 365」の新たな販売プログラム「Office 365 Open」は、来年度中に展開することも公表している。佐藤業務執行役員は「SMBのマーケットでビジネスを伸ばすために、パートナーの力は欠かせない。今年度は、とくに地方のパートナーとの関係を強化する」と話している。
「マイクロソフト設立以来、最も多くの新製品が登場するといっても過言ではない」(樋口社長)という今年度。パートナーとの協業にも力が入っている。
【パートナーの声】
「Lync」でアワードを獲得したデル

高橋明部長 デルは、日本マイクロソフトがすぐれた成績を収めたパートナーを表彰する「マイクロソフト パートナー オブ ザ イヤー 2012」の「コミュニケーションコンピテンシーアワード」を受賞した。デルが受賞したアワードは、コミュニケーションサービス「Lync」の販売で多くの実績を上げた企業に贈られるもの。デルは、この部門で一昨年度に続き2度目の受賞だ。
デルのソリューション・サービス・デリバリー統括本部の高橋明・コンサルティング第2部部長は、「『Lync』を使ったユニファイドコミュニケーション(UC)ソリューションは、多くのユーザー企業に受け入れられた。(UC事業の)売り上げは、前年度比3.3倍になった」と話す。マイクロソフトのパートナーであることについて「他社にはない強固なブランド力と豊富な製品群は魅力。充実した支援を受けられることも大きなメリット」と絶賛する。「今年度は多くの新製品が登場する年。マイクロソフトの製品を活用したソリューション事業を伸ばす」と、日本マイクロソフトへの期待を表明し、関係の強化を図っている。