全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)の情報システム子会社である全労済システムズは、日立ソリューションズの就業管理と人材育成システムの「リシテア」シリーズを採用した。全労済システムズは全労済本体への常駐も含めて、3~4か所ほどに人員を配置している。従来の紙やスタンドアロンではなく、オンラインで就業や工数の管理ができるようになったことで情報の整合性が取りやすくなるとともに、人材育成システムによってスキルアップの道筋もより明確になった。
ユーザー企業:全労済システムズ
全労済が100%出資する情報システム子会社。全労済の契約件数3503万件、総資産3兆1164億円(2012年5月時点)を、情報システムの分野で支える。社員数は257人。
システム提供会社:日立ソリューションズ
システム名:就業管理と人材育成システム「リシテア」シリーズ
【課題】総合的な管理が難しい
全労済システムズは、従業員の就業や勤怠の管理、作業工数の管理などに市販のデータベースソフトを使っていた。また、人材育成に欠かせないスキル目標管理についても紙ベースで行っていたため、「履歴の検索や分析といった体系的、総合的な管理が難しい」(全労済システムズの金子整執行役員)という課題を抱えていた。同社の事業所は2か所だが、全労済での“客先常駐”的なものまで含めると3~4か所ほどに分散しており、スタンドアロンや紙ベースでの管理は限界がある。そこで検討したのが場所に依存せず、オンラインで就業や工数の情報を入力できる仕組みの導入だった。
2008年にプロジェクトを立ち上げ、主要ベンダーの従業員向けフロントシステムパッケージソフトを探してみたところ、「意外に種類が少ない」(同)ことがわかった。販売や財務管理、人事給与といった基幹業務系ソフトは豊富にあるが、従業員向けフロントシステム系は日立ソリューションズの「リシテア」シリーズなど、ごく限られていた。
「リシテア」は、大手SIerである日立ソリューションズの社内で使っているシステムをベースにパッケージ化したもので、就業管理や工数管理、健康管理、旅費申請、汎用ワークフロー、帳票閲覧といったアプリケーションが、共通データベース上で稼働する仕組み。関連商品として人材育成の「リシテアCareer」がある。情報システム子会社の同社と業態がほぼ重なるうえ、SIer大手の日立ソリューションズの「先進的な管理手法を採り入れる」(全労済システムズの田原拓也・総務経理課長)という狙いも兼ねて、リシテアシリーズの就業管理「Job」と工数管理「Cost」、人材育成「Career」の3モジュールの採用を決めた。

左から日立ソリューションズの宮脇雅彦部長代理、全労済システムズの西里恵次長、金子整執行役員、田原拓也課長、日立ソリューションズの落合博基氏【決断と効果】業者選定から約半年で本稼働
業者を日立ソリューションズに決めたのが2009年2月。同年6月から順次、モジュールを稼働していった。金子執行役員は、「社員が勤務先からオンラインで出退勤打刻や工数実績などの情報を入力するという今となってはあたりまえのことができるようになった」と、まずは基礎的な操作性が大幅に向上するとともに、出退勤打刻と入退室情報を突き合わせるなどして正しい就業時間の裏づけも容易にとれるようになった。SE人材の育成については「ITスキル標準(ITSS)に準拠しつつ、独自の目標管理をカスタマイズした」(全労済システムズの西里恵・総務部次長)。
既存の業務フローからの移行や、人材育成の目標管理にかかるカスタマイズなどもスムーズに進み、業者選定から半年ほどで本稼働にこぎ着けた。金子執行役員は「日立ソリューションズにリードしてもらう局面が少なくなかった」と評価。日立ソリューションズの宮脇雅彦・チャネルビジネス推進部長代理は「自らの業務に基づいて開発したパッケージソフトで中身を知り尽くしている」と、自社パッケージの強みを生かすことができたと振り返る。実際、目標管理シートのフォーマットは各社各様であり、「あらかじめ容易にカスタマイズできるようにしてある」(日立ソリューションズのチャネルビジネス営業本部第3部・落合博基氏)と、これまで有力企業を中心に900社、108万人に納入してきただけに対応も迅速だった。
稼働開始から3年余りがたち、工数管理に基づくコスト削減は連結経営上、大きなプラス効果を発揮するとともに、人材育成システムは「社員のモチベーション向上」(西次長)に役立っている。(安藤章司)
3つのpoint
複数事業所の就業や工数管理を統合管理
ITSSをベースに効果的な人材育成を推進
大手SIerの先進的な管理手法を採り入れる