航空会社のPeach Aviation(井上慎一CEO)は、東アジアの市場開拓に取り組んでいる。極力のコスト削減によって格安の運航費用を実現し、韓国や台湾、香港など、次々と東アジアへの運航路線を拡大している。同社は、各国の通貨で簡単に決済することができる仕組みとして、最大手システムインテグレータであるNTTデータが提供する「BlueGate多通貨決済サービス」を導入した。
ユーザー企業:Peach Aviation
国内線・国際線を運営する格安航空会社(ローコストキャリア=LCC)。2011年に設立された。関西国際空港を拠点とする。従業員数はおよそ400人。
システム提供会社:NTTデータ
システム名:BlueGate 多通貨決済サービス
【課題】国際線開始には多通貨決済が不可欠
関西国際空港にあるPeach Aviationの本社オフィスでは、昼間は照明をつけない。エレベータもなるべく使わず、社員に階段を利用するように促している。Peach Aviationは、機材の効率的な使用に限らず、オフィスの運用に関してもムダな費用をできる限り省いて、例えば「大阪-長崎片道1990円から」と激安の運賃を実現している。
「格安航空会社(LCC)は、欧米などではすでに普及しているが、東アジアはまだ未開拓のホワイトスポットだ」。財務・法務統括本部の岡村淳也本部長は、日本国内だけでなく、東アジアの市場開拓にも積極的に取り組み、LCCマーケットの可能性をものにすることに意欲を示している。
Peach Aviationは、2012年5月、初の国際路線として大阪-ソウル間の運航を開始した。現在は、台湾便と香港便も運航している。岡村本部長は、「国際線のお客様の約6割が海外発の方だ。海外から日本を訪れる際に当社を利用している」と、海外顧客のニーズに確かな手応えを感じている。
国際線の運航開始にあたって課題としていたのは外貨での決済だ。東アジア各国はそれぞれ通貨が異なるので、一元的に各通貨で決済することができる仕組みが必要となった。
「当社はITシステムに関して、リソースを集中するシンプルな構成を求めている。外貨決済システムも、この考えにフィットすることが条件だった。複数のベンダーの製品を検討したが、最も条件に合致したのは、NTTデータのサービスだった」(イノベーション統括部の野村泰一部長)と述べる。
国際線の運航開始を目の前にして、短時間で導入を決定して構築を進め、2012年4月にシステムの本格稼働を開始した。

(左から)Peach Aviation 財務・法務統括本部の岡村淳也本部長、NTTデータ カード&ペイメント事業部の石川彩香ビジネス企画担当、Peach Aviation イノベーション統括部の野村泰一部長
【解決と効果】東アジアで顧客増加、今後は新たな市場を開拓
「BlueGate多通貨決済サービス」は、国内ECサイトで海外の消費者が外貨建てでカード決済を行うことができるクラウド型サービスだ。2012年4月に、NTTデータが提供を開始した。クラウド型なのでコスト効率がよいと評価して採用を決めたPeach Aviationは、このサービスの第一号ユーザーとなった。
「決済が完了しなければ、チケットを発行することができない」。岡村本部長は、国際線の運航を開始するために、外貨決済システムの導入を完了することが必須だと考えた。NTTデータの担当者とともに徹夜を繰り返し、第一号ユーザーならではの諸問題を解決しつつ、稼働にこぎ着けた。「韓国をはじめ、台湾や香港でもお客様が増えており、スムーズに外貨決済を行うことができるのは、NTTデータのサービスのおかげだ」と喜ぶ。
Peach Aviationは事業拡大に向け、路線を東アジアや東南アジアの国々にも広げようとしている。同社が唯一使用している旅客機タイプである「エアバスA320」は最長約4時間の飛行にしか対応していないので、今後、沖縄にも拠点をつくり、沖縄から新たな市場を開拓することを検討している。
岡村本部長は、「新たな路線を開設しようとする国が増えれば、当然ながら、外貨決済システムもそれらの通貨に対応させる必要が出てくる」と、見通しを語る。
「BlueGate多通貨決済サービス」の展開に携わるNTTデータ カード&ペイメント事業部の石川彩香ビジネス企画担当は、今後もPeach Aviationの海外ビジネスを支援するとともに、「Peach Aviationを成功事例として、外貨決済サービスを他の業種のユーザー企業にも提案していきたい」としている。(ゼンフ ミシャ)
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稼働開始までの迅速な対応
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