NTTデータは、グローバルビジネスを一段と伸ばしていく。向こう3年で海外売上高を1000億円以上上積みすることを視野に入れて、M&A(合併と買収)を加速するとともに、アジア地域におけるソフトウェア開発体制の整備を推進し、売り上げ、利益ともに拡大していく。今年度(2013年3月期)はグローバルビジネスセグメントでの黒字化のめどが立つなど、海外市場のビジネスの黒字基調が明確になりつつある。「Global One NTT DATA」の旗印の下、海外事業のアクセルを踏み込んでいく。
アジアの開発体制を急ピッチで整備
──2013年はNTTデータグループのグローバルビジネスが一段と拡大する勢いです。 岩本 グローバルビジネスセグメントは、今年度(2013年3月期)、実質的に初の営業黒字になる見通しです。海外の連結子会社を積極的に拡大してきたことで、海外ビジネスの売り上げは大きくなったのですが、黒字化が課題でした。M&Aにかかるのれん代の償却などで昨年度のグローバルビジネスの営業損益は10億円の赤字でしたが、今期はなんとか15億円ほどの黒字にもっていきたい。今期の海外売上高見通し2320億円のうちの利益ですので、まだどうなるかわからない部分はありますが、欧州の不採算プロジェクトの減少や北米でのビジネスが好調に推移するなど黒字基調に転じてきたのは確かです。来年度(2014年3月期)は、より多くの利益を計上できるよう取り組んでいきます。
──「Global One NTT DATA」を合い言葉に、日本とEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)、米州、中国、APAC(アジア・太平洋地域)と世界の5地域に地域統括機能を置くといった、グローバルビジネスの経営体制の強化に取り組んでこられた御社ですが、中国とAPAC地域の売り上げがなかなか伸びていません。 岩本 直近のグローバルビジネス売り上げの構成は、米州約5割、EMEA約4割、残り1割がアジアその他ですが、短期的には欧米で売り上げを稼ぎ、中長期的には成長市場である中国とアジア・太平洋地域でビジネスを拡大していきたい。このための布石は着実に打っています。
直近では、2012年11月に、民主化の進展が著しいミャンマーにオフショア開発拠点を立ち上げて、向こう5年で500人体制へと拡大していく予定です。続く12月にはベトナムの地場中堅SIerのグループ化を発表しました。また、オープンソースソフト(OSS)とアジャイルソフトウェア開発の拠点をそれぞれインドに開設しています。OSSは12月から20人体制でスタートして、2015年をめどに100人体制へと増員。最終的には国内外のNTTデータグループ全体で500人へと増強することをイメージしています。
──アジャイルソフトウェア開発は、日本のSIerが苦手としている領域といわれています。 岩本 これまでの重厚長大なウォーターフォール方式の対義語のように使われることが多いことは確かです。小さな機能ごとに動作するソフトを俊敏に開発していく手法で、米国IT企業のアジャイル方式の開発の採用率は30%を超えているといわれています。GoogleやFacebookがわかりやすい例で、先進的なシステムであればあるほど、あるいはビジネスの変化が大きければ大きいほどアジャイルを採用する割合が多くなる傾向がみられます。まずはインドにアジャイル開発の専門的人材育成拠点を設け、向こう1~2年のうちに日本や中国、ASEAN、欧州などでのアジャイル開発拠点を横展開していく予定です。
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