その他
米国のIT事情 違法使用に新たな規制 ベンダーに好機到来か
2013/02/21 21:03
週刊BCN 2013年02月18日vol.1469掲載
ITの不正使用をめぐる新たな規制の動きが、米国で広がっている。製造業のバリューチェーンのなかで正規ライセンスを取得していないソフトウェアなどを使用することを、公正競争の観点から不正行為として規定した州法が、2010年にルイジアナ州で、11年にはワシントン州で施行された。類似法案の採用を検討する動きは、米国全土に拡大しつつある。
ITは知的財産権制度の枠組みのなかで保護されており、先進国、新興国を問わず、国際的にある程度共通の保護水準を設ける動きが進んでいる。ただし、属地主義が採用されており、知的財産権法が適用されるのは国内の案件だけだ。また、ITの不正使用行為そのものを規制することはできるが、それによって得られる不当な利益を規制するルールは明確化されていなかった。
ワシントン州法は、従来の知的財産権制度の枠組みと比べて急進的な要素を含んでいる。基本的には民事訴訟に関する法律であり、提訴された違反者は損害賠償や違反行為の差し止めを請求されることになるが、原告としての資格をもつのは違反者と競合関係にある製造業者、もしくは州司法長官に限定される。また、米国外で製造された製品であっても、製造地の知的財産権法に照らして違法なIT利用が認められれば規制の対象になる。さらに、州内で違法製品を販売した事業者も請求の対象となる。
背景には、製造業の国内回帰が進む米国の国内事情がある。新興国との競争の行方は、国の命運を左右しかねない。新日本有限責任監査法人が発表したレポートによれば、最大の輸入相手国である中国での違法コピーソフト使用率は79%に上る。製造業のバリューチェーンにおけるITコストは3%程度だが、人件費を含めてコスト面で圧倒的に有利な新興国を、何とか同じ土俵に引き上げて勝負したいという思惑が透けてみえる。
一方で、こうした動きは「ITベンダーにとって新たなビジネスチャンスにつながる」との声もある。新日本有限責任監査法人の塚原正彦・アドバイザリー事業部シニアパートナーは「ユーザーにとって、ITの適法利用にかかるコストはそれほど大きくはない。正規ライセンスのソフトウェア拡販やソフトウェア資産管理システム、IT資産管理システムの普及が期待できる」と指摘する。
日本では、米国の2州法のようなアプローチは議論すらされていないのが実際のところだ。しかし、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では、知的財産保護戦略がすでに議論の俎上に上っている。仮に日本が参加を決めた場合、どのように国益を守るのか。準備を急ぐ必要がある。日本のIT業界としても、隣国中国をはじめとしたグローバルな巨大市場に活路を見出すチャンスとして、主体的に知見を集積し、政策提言するべきだ。(本多和幸)
ITの不正使用をめぐる新たな規制の動きが、米国で広がっている。製造業のバリューチェーンのなかで正規ライセンスを取得していないソフトウェアなどを使用することを、公正競争の観点から不正行為として規定した州法が、2010年にルイジアナ州で、11年にはワシントン州で施行された。類似法案の採用を検討する動きは、米国全土に拡大しつつある。
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