BCN(奥田喜久男社長)は、2月27日、日本IBM(マーティン・イェッター社長)とともに、SIerに向けたビジネスセミナーを大阪市北区の梅田で開催した。テーマは「セキュリティ」と「スマートデバイス」で、両分野に対するユーザー企業の要望に応えるソリューションを紹介した。IT調査会社のアナリストの講演と、日本IBMの製品担当によるセッションを設け、会場に集まったSIerベンダーにビジネスのヒントを示唆した。(取材・文/木村剛士)
セキュリティ対策費用は増加傾向
今回のイベントは、BCNが主催する「システム開発ベンダーのための競争力強化セミナー」の第二弾で、前回は昨年10月に「ビッグデータ・クラウド・モバイル」をテーマに名古屋市で開いた。今回は、大阪市北区・梅田のイベント会場に場所を変え、セキュリティとスマートデバイスソリューションに関連するセッションを用意した。
セキュリティのセッションでは、最初にITマーケット調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)の舘野真人シニア・アナリストが登壇した。ユーザー企業の全IT予算のなかで情報セキュリティ対策費用が増加していることを紹介。「2010年は10.6%だったが、11年は12.5%、12年は12.9%と上向いている。特定の企業を狙った不正アクセスや東日本大震災の発生で、リスク軽減に対する関心が高まった」と指摘した。また、不正なプログラム・サービスの傾向や注目技術として、「今後、ネットワーク・トラフィックの可視化や仮想実行エンジンを用いるマルウェア対策、ルートキット検出、シングル・サインオンなどの技術が注目を集める」と予測した。
続いて、日本IBMのソフトウェア事業セキュリティーシステムズ事業部の森秀樹主任ITスペシャリストが、IBMが提案する総合セキュリティソリューションを紹介した。森主任ITスペシャリストは、システムを安定・安全に運用するために重視する四つのポイントを紹介。「ひと」「データ」「アプリケーション」「インフラストラクチャ(ネットワーク・エンドポイント)」に関連するセキュリティ対策の必要性を説明し、各分野のソリューションの強みをアピールした。紹介したソリューションは20種類以上で、IBMがもつセキュリティ製品・サービスの幅広さを印象づけた。

(写真左から)ITR 舘野真人 シニア・アナリスト、日本IBM 森秀樹 主任ITスペシャリストスマートデバイスの導入意欲は高い
スマートデバイスのセッションでは、矢野経済研究所の情報通信・金融事業部の土佐恒広コミュニケーションビジネスグループ長がスマートフォンとタブレット端末市場の動向を説明。法人のスマートデバイス利用状況は全体の17.8%で、製造業と金融業が他の業種に比べて導入意欲が高いことや、スマートデバイスを選定する際にユーザーが重視するポイントは「セキュリティ」「操作性」「機能性」であることなどを調査資料をもとに語った。
最後のセッションでは、日本IBMのソフトウェア事業Tivoli事業部の田宮薫氏がIBMのMDM(モバイル・デバイス・マネジメント)で、「IBM Endpoint Manager for Mobile Devices」の特徴を紹介した。
田宮氏は、「iOS、Android、Windows Phoneといった異なる複数のスマートデバイスと、サーバーやパソコンを一つのツールで管理することができる。全世界で800社以上に採用されており、日本ではこれから本格展開する。運用業務を効率化し、コストも削減できるツールで、IBMがMDMも含んだ運用管理ツールをもっていることをぜひとも覚えておいていただきたい」とPRした。
定員を大幅に超える申込みがあり、会場は満員。プログラムは約3時間の内容だったが、参加者は最後まで聞き入っていた。大阪のSIerのスマートデバイスとセキュリティに対する関心の高さがうかがえた。

(写真左から)矢野経済研究所 土佐恒広 コミュニケーションビジネスグループ長、日本IBM 田宮薫氏