日本IBMとBCNは、「システム開発ベンダーのための競争力強化セミナー IBMソフトウェアとの組み合わせで実現する付加価値を紹介」と題するセミナーを、10月26日、名古屋市で開催した。セミナーでは、「ビッグデータ」や「ビジネス・アナリティクス(BA)」など、ユーザーの注目度が高い製品・サービスの市場動向を解説。日本IBMソフトウェア事業のキーマンが、とくに引き合いのある製品・サービスを厳選して紹介した。(取材・文/佐相彰彦)

システム開発ベンダーが参加して熱心に聴講していた
ソフトウェアに必要なケーパビリティ
新市場の創造で価値を提供していく

基調講演を行った
矢野経済研究所
忌部佳史主任研究員 セミナーでは、まず「ビッグデータで変わる・生まれるビジネスモデル」と題して、矢野経済研究所情報通信・金融事業部の忌部佳史主任研究員が基調講演を行った。ビッグデータとは「Volume(容量)」「Variety(種類)」「Velocity(頻度)」のうち、いずれか一つを備えるものであることを説明し、「クラウド上に集まったデータを販売するというビジネスモデルがあるが、今後は自らリスクを取ってデータを集めて販売する新たなチャレンジも必要になるだろう」と、参加者に助言した。

日本IBMソフトウェア事業
パートナー&広域事業開発本部
矢内章英氏 次に、日本IBMのソフトウェア事業パートナー&広域事業開発本部の矢内章英氏が、同社のソフトウェア戦略を発表。これまで同社が新しい市場を創造してきたことと、ソフトウェアがユーザー企業の経営課題を解決するとの判断からソフトウェアの会社に変貌を遂げてきた経緯を説明したうえで、現在、ユーザー企業の課題を解決するソフトウェアに求められるケーパビリティ(能力)として、「情報を洞察に変えてスマートに活用」「業務の統合と最適化を推進」「インフラとサービスのビジネス価値を最大化」「ソフトウェア開発で業務サービスと製品を変革」「コラボレーションによる社員力強化/顧客関係」「リスク・セキュリティ・コンプライアンスの管理」の6種類が必要であることを訴えた。矢内氏は「新しい市場をつくってソフトウェアで新しい価値をお客様に提供していく」とアピールした。
モバイル領域をカバーする製品群
データマイニングの重要性も訴求

日本IBMソフトウェア事業
WebSphere事業部
パートナー営業部
小林昌利担当部長 また、日本IBMソフトウェア事業WebSphere事業部パートナー営業部の小林昌利担当部長が、「急拡大するモバイル市場とクラウドコンピューティング市場に新たなビジネスチャンスをもたらすIBMソフトウェア」と題して講演。まず、ベンダーがモバイル端末を組み合わせたビジネスを手がける際、「マルチデバイスへの対応」などの課題を解決しながら、ユーザー企業の「運用やセキュリティ」「基幹システムとの連携」などの要請に応えている現状を指摘した。そして、こうしたベンダーの悩みを解決する製品として、スマートフォンやタブレット端末を対象にしたオープンで幅広い機能をもつモバイル・アプリケーション・プラットフォームの「IBM Worklight」、モバイル・デバイスと従来のエンドポイントを管理する統合化プラットフォーム「IBM Endpoint Manager for Mobile Device」を紹介した。小林担当部長は、「モバイル端末のビジネス利用は、急速な成長が見込まれる。成長率は35%以上」と、ビジネスの拡大が期待できると説明した。クラウド・インテグレーション基盤「WebSphere CastIron」も説明し、「新たなビジネス構築を促進する」とアピールした。

日本IBMソフトウェア事業
ビジネスアナリティクス事業部
SPSS営業部
西孝治部長 さらに、日本IBMソフトウェア事業ビジネスアナリティクス事業部SPSS営業部の西孝治部長は、「価値創出のためのビッグデータ活用と予測分析の現在」と題して、ユーザー企業が経営上でアナリティクスを重要視しつつある状況のなか、BA(ビジネスアナリティクス)ソフトの「SPSS」による予測分析やBI(ビジネスインテリジェンス)ソフトの「Cognos」による可視化の重要性を説明した。西部長は、「分析によるパワーは侮ることができない」と強調し、ワインの例を挙げた。ワインの味はブドウを収穫した時点でほぼ決まるが、おいしいワインをつくるためには降雨量や気温、生産地のデータを可視化して継続的にモニタリングすることでワインに適したブドウを収穫することが重要となる。これは、ビジネスでも同じで、BAとBIが必要というわけだ。さらに、自動車メーカーが顧客獲得、化粧品メーカーが客単価向上、携帯電話キャリアが解約防止など、IBM製品を導入して予測分析を実施している事例を紹介した。
セミナーでは、参加者が新しい市場への参入でビジネスチャンスをつかもうとしている姿がうかがえた。日本IBMのソフトウェアと、SIerやISVがもつソフト・システムとの連携によって、価値がもたらされることに期待したい。