有力システムインテグレータのインテックで、半導体メーカー向け営業を担当する清水明日香さんは、ここ数年、営業のスタイルを変えてきた。市場環境が厳しくなり、客先が以前ほどIT投資に積極的でなくなってきたことに対応するために、能動的なIT活用の提案に力を入れている。その動き方を後輩にも伝えようと、熱心に教育している。常にパワフルな清水さんだが、「息抜きも絶対に欠かせない」と、休日はスポーツや旅行を楽しんでいる。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
「こうしてみてはどうか」と提案
振り返ってみれば、2005年、私が営業担当になったばかりの頃は、時代がよかった。日本の製造業に元気があり、お客様である大手半導体メーカーは売り上げを伸ばしていて、情報システムを強化するための投資にも積極的だった。お客様から「ITシステムでこういうことを実現したい」という要望を受けて、こちらから提案することもなく、開発案件の注文をいただくケースが多かった。
しかし、ここ数年、市場を取り巻く環境が大きく変わってきた。国産の半導体メーカーは、グローバル競争が激しくなり、中国や台湾など海外メーカーに負けないよう、コスト削減に敏感になった。製造コストを下げるのは当然として、IT投資に関しても財布の紐が堅くなってきた。そんな状況にあって、担当営業の私としても、以前のような動き方では、案件を獲得することがなかなか難しくなっている。
日々の活動で強く意識しているのは、能動的に動くこと。商談はもちろんだが、お客様との飲み会やゴルフ接待といったインフォーマルの場も生かして、ニーズを探り出す。そして、「こうしたい」といわれるのを待つのではなく、「こうしてみればどうか」と、こちらからITの活用を提案する。
昨年、大口案件の注文をいただいた。グループの再編に伴ってITシステムの集約を計画しておられる製造業のお客様に、システム統合を提案した案件だ。そのお客様は、グループ再編のスケジュールが非常にタイトで、こちらもスピード重視で動いた。何十年にわたって培ってきたインテックの技術力と迅速な対応をアピールしながら、お客様の要望をすぐに提案書に反映することで、「なぜ当社が適しているのか」の理由を明確に打ち出した。
そのお客様から発注の連絡をいただいたときは、本当にうれしかった。以前も同じようなシステム統合案件を獲ったことがあったが、それはたまたま自分が営業担当で、会社のいろいろな人にサポートを受けながら注文をいただいた案件だった。今回の案件は完全に自分の力だけで獲得した。だからこそ、「私もやっと一人前になれたかな」と自分の成長を実感して、心から喜びを感じた。
自分が成功するのは、もちろんうれしい。しかしそれよりも、私は他人が成功するのをみるのが好きだ。今、後輩に営業の仕事を教えることに力を入れている。教える立場になると、自分のわからないことが浮き彫りになるので、「私もまだまだ勉強しなきゃ」と自身の成長につながる。これからも、後輩の育成に力を入れて、各人の持ち味を引き出して、それぞれに向いている営業のやり方をアドバイスしてあげたいと思っている。
●日常使う営業ツール.......... イタリアのブランドであるボッテガ・ヴェネタの財布と名刺入れ。控えめな高級感で上品さを醸し出している。「自分へのご褒美として海外で購入した」そうだ。清水さんは、海外旅行を趣味としている。ヨーロッパやアメリカなど、旅先で息抜きをして、リフレッシュした気分で営業活動に励む。
●上司からのひと言.......... 「清水さんは、持ち前の行動力と明るさで皆から愛されている。彼女の周りにいる人は、当社のメンバーだけでなく、お客様も笑顔が多くなる。また、人一倍の努力家である。言ったことは必ずやり遂げる精神力を兼ね備えており、チームのムードメーカーとして欠かせない存在だ。当社の女性営業社員はまだ少ないが、後輩の目標となるよう、さらなる活躍を期待している」(首都圏本部 製造事業部の高橋浩・電機営業部長)