BCN(佐藤敏明社長)は、3月27日、日本ワムネット(福井信之社長)との共催で、「SIerのためのビジネス講座Vol.5」を東京・表参道で開催した。今回のテーマは、「モバイル・スマートデバイス市場の最新動向とビジネスチャンスを創出する最適ソリューション」。モバイル・スマートデバイス市場の最新動向や、実際に利用するうえでの懸念事項、ユーザーへの最適な提案方法を識者が紹介したほか、会場では日本ワムネットによる製品の展示が行われた。SIer(システムインテグレータ)や関連製品販社関係者ら約100人が参加し、熱心に聴講した。(取材・文/真鍋武)
ユーザー企業の関心はセキュリティとMDMへ
セミナーの冒頭、アイ・ティ・アールの舘野真人シニア・アナリストが、「モバイル・スマートデバイス市場の最新動向」と題して基調講演を行った。舘野アナリストは、2012年度の調査結果から、今後1~3年以内にスマートデバイスの導入を実施する予定の企業が40.3%と高いものの、以前と比べて導入意欲の伸びが鈍化していることを受けて、「スマートデバイスは、もはや企業にとって目新しいものではなくなっている。企業にとっての課題は、スマートデバイスを導入するか、しないかではなく、むしろ導入した端末をどう管理するかに移りつつある。今後は導入台数が増えてくるので、セキュリティやMDM(モバイルデバイスマネジメント)など、関連ソリューションの必要性が高まってくる」と市場動向を説明した。
セキュリティについては、「とくにデバイスの紛失対策が重要だ。当社が約640社に対して行った調査では、過去1年の間にPCやスマートデバイスを紛失している企業が20%を超えていた。もはやユーザーがデバイスを紛失することは必然で、それを前提とした対策を提案する必要がある」と警鐘を鳴らした。
MDMについては、「デバイスそのものの管理だけでなく、アプリケーションの配布や情報漏えいの管理が重要になってくる」と指摘した。
続いて、日本ワムネット営業部の井澤浩一部長が、「企業向けオンラインストレージ採用拡大の背景とは~オフィスPCからスマートデバイスまで~」と題して講演した。井澤部長は、「企業がスマートデバイスを導入する目的は、社内コミュニケーションや営業ツール、遠隔地からの業務管理などにあるが、これらはすべてデータのやり取りだ。だからこそ、オンラインストレージの活用が拡大している」と説明。そのうえで、日本ワムネットのオンラインストレージ「GigaCC」を紹介した。
「GigaCC」は、1GBを超える大容量のファイルを安全に企業間で送受信・共有することができるオンラインストレージだ。USBメモリや無料のオンラインストレージなど、セキュリティの安全性が担保されないツールの利用を抑制して、企業の情報漏えいの防止や内部統制の強化を実現する。クラウドサービスでの提供と、オンプレミスでのシステム導入型の2パターンを用意している。
井澤部長は、「2003年に提供を開始して以来、大企業を中心に導入していただいている。最近では、大手電機メーカーに、グローバルの数十万人に向けた共通インフラとして採用いただいた」とアピールした。

(写真左から)アイ・ティ・アール 舘野真人 シニア・アナリスト、
日本ワムネット 営業部 井澤浩一 部長目的意識をもった導入が不可欠
最後に、デロイトトーマツコンサルティングTMTユニットの水上晃シニアマネージャーが、「スマートデバイスを活用したワークスタイル改革の事例と成功にむけた勘所」と題して講演。2012年に野村證券が営業ツールとして8000台、全日本航空(ANA)が乗務マニュアルの電子化を目的に客室乗務員向けに5400台のiPadを導入した事例などを紹介した。

デロイトトーマツ コンサルティング TMTユニット 水上晃 シニアマネージャー また、水上シニアマネージャーは、スマートデバイスの導入を成功させるために必要なこととして、「トップダウンでの導入を推進するための意思決定の支援、デバイスありきではなく、目的意識をもって導入してもらうこと、ユーザーの活用に向けたモチベーションを喚起すること」を挙げた。
さらに、スマートデバイスが、時間と場所という観点からワークスタイルの変革をもたらしたことを説明し、音声認識や顔認識、NFCなどの技術が、今後さらなるワークスタイルの変革を実現するものとして期待されていることを述べた。
スマートデバイスの利用は、着々と広がっているものの、目的を明確しないまま導入するユーザーが散見される。今回のセミナーに参加したSIerが、ユーザーが抱える事情と課題を理解して、業務効率化のためにスマートデバイスを活用する手法を提案していくことを期待したい。