クラウドコンピューティングが普及し、IT製品・サービスの販売方法やビジネスモデルが急激に変化している。こうしたなかで、販売する側であるITベンダー(アシスト、アジルコア、NECシステムテクノロジー、新日鉄住金ソリューションズ)に在籍する「ITマーケッター」4氏に既存ビジネスを維持しつつ、クラウドなど新商材を活用して新規ビジネスを伸ばすために、どのようなことに力を尽くしているかを語ってもらった。(司会/『週刊BCN』編集委員 谷畑良胤 写真/大星直輝)

(写真左から)アシスト 小林 誠 氏、アジルコア 宮武 克己 氏、
NECシステムテクノロジー 中村 敏 氏、新日鉄住金ソリューションズ 岡田 康裕 氏
<ITマーケッターとは>
BCNではシステムインテグレータ(SIer)など販売会社の中で、既存の製品・サービスおよび受託ソフト開発などの既存事業・市場や新しい領域となる新規事業・市場を拡大するために、製品・サービス面や価格面、製品販売領域の面、チャネルの面、プロモーションの面などを、ベンダーの中で検討し実行している方々を「ITマーケッター」と定義しています。
【第1章 既存ビジネスの注力分野は?】
重点はクラウドと仮想化
未開拓の特化分野も利
──現在、担当分野で力を注いでおられる製品・サービスを聞かせてください。
岡田(新日鉄住金) ミッションクリティカル系に適応できるクラウドコンピューティングITインフラサービス「absonne(アブソンヌ)」と、マイクロソフトやシトリックス・システムズと協業したDaaS(仮想デスクトップ)のほか、今年から親会社の合併に伴って事業化した「グループ・クラウド」と称するシステムの取り組みを目玉にしています。
当社はクラウドサービスに早いうちから取り組んできて、失敗を重ねて、多くの“地雷”を踏んできたこともあって洗練されています。クラウドサービスの苦い経験としては、USBに入っている大量データの保存がうまくいかなかったり、月曜日朝のログイン集中がリソース不足を引き起こしたり、プリンタとの相性が悪くて印刷物が出力されないなどのケースがあって、これらの問題をクリアするまで苦労しました。でも、今にしてみるといい経験でした。
中村(NECシステムテクノロジー) NECネクサソリューションズでは、独自の18のソリューションで新規マーケットにアプローチする活動を「RISING ZONE」活動と呼んで強化しています。例えば、公益法人向けCRM(顧客情報管理)として、会員の満足度を向上することを主眼にしています。このように、顧客接点をキーにするソリューションに力を入れています。もう一つ、強化しているのが在庫管理関連のサービスです。在庫削減というのは古いテーマですが、在庫を減らすことによって原価率を下げ、その視点からの損益管理という目線でシステムを開発して提供しています。それ以外にも、従来のERP「EXPLANNER」などの販売に力を入れていますが、一定の領域に焦点を当ててサービスを強化しているところです。
18のソリューションのなかでは、バスロケーション・システム(交通事業関連)や図書館管理の仕組みは、国内でトップクラスのシェアを獲得していますが、これらのようにおもしろみのある新しい芽を育まなければいけないと感じています。
宮武(アジルコア) たまたまですが、千葉県のある病院を訪問した際、そこが「スーパー病院」になると聞いて、その病院の責任者との間でディスカッションするなかで、新たな病院関連のシステムが生まれてきました。当社は小さなベンダーですので、病院の基幹システムに手を出すのは難しい。そこで、顧客に空間の心地よさを提案しようと、ITを使うことで空間の劣化を防ぎ、徐々に環境をよくすることを検討しました。
そこで開発したのが統合型の「3Dホスピタル」というシステムです。病院側のオペレータの人員を減らす目的で、通常は診療科目ごと人を配置するところを、一人で1000人以上に対応できるシステムなどを構築しました。また、長い待ち時間の煩わしさを解消するために、「スマート・アウトペーシャンツ」という電光掲示板を設置したり、患者がスマートデバイスをかざせば待合室にいなくても知らせが端末に届く仕組みを装備したりしました。中小ベンダーならではのきめ細かいシステムの提供に努めています。
小林(アシスト) 昨年、当社の創業者のビル・トッテン社長が退き、大塚辰男が新社長に就任しました。既存の3事業ドメインであるOracle中心の「データベース(DB)」、日立製作所の「JP1」をメインとする「システム管理」、BI(ビジネスインテリジェンス)とデータウェアハウスを使った「情報活用」に集中するという方針を出しました。
これとは別に、全体のパイを大きくする目的で、事業の柱を増やすことに取り組んでいます。現在、シトリックスに対抗する安価なVDI(仮想デスクトップ)を提供するEricom社の製品を使った「仮想化」が4本目の柱として立ち上がっています。この4本柱に加えて、中・長期的にクラウドサービスに目を向けています。
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