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米IBM、新バイヤー開拓へ、リード獲得も強化、年次イベント「PWLC」で明らかに

2013/02/27 18:26

【ラスベガス発】米IBM(ジニー・ロメッティCEO)が2月25日から28日までの4日間、米ネバダ州ラスベガスで開催している「IBM PartnerWorld Leadership Conference 2013(PWLC)」。世界のビジネス・パートナー(BP)が集まるこの年次イベントでは、BPとともに展開する事業の戦略や製品・サービスのポートフォリオなど、最新情報が発表されている。25日には、IT担当者だけでなく、CMO(Chief Marketing Officer)などを新しいバイヤー(買い手)として開拓するためのBP向けリード獲得策を講じることや、ハードウェア/ソフトウェア製品を統合販売するBPに提供する報奨金プログラム「Solution Accelerator Incentive」を拡充することなどを明らかにした。

新しい顧客層を開拓

 「前例のないやり方で顧客のビジネスを変革するITの新しい価値を追求する」と語るマーク・ヘネシー ゼネラルマネージャー

 「ここにいるBPの皆さん、一人ひとりが大切です」。2日目のゼネラル・セッションで司会を務めるグローバル・ビジネス・パートナー担当のマーク・ヘネシー ゼネラルマネージャーは、冒頭にこう告げた、パートナー・ビジネスの進化がIBM全体の事業を押し上げることから、2015年までのロードマップに従って「Smarter Planet」戦略の下で推進しているIBMビジネスを、BPとともに成長させる新たな戦略を多数用意したと説明した。

 今年のPWLCには、世界70か国から約1500人が参加。米IBMは、昨年就任したロメッティCEO体制で、2015年までに株価を20ドル(現在13ドル強)に引き上げ、ソフト販売を売上高の半分にするというロードマップにもとづいて成長市場に投資する戦略を策定したが、この日は戦略を具現化するパートナー戦略の新しい方向性を示した。

 米IBMの調査では、世界85か国・約1300社のCEO(Chief Executive Officer)が、「『Smarter Planet』のテクノロジーが将来の成長に欠かせない」としているという。この戦略を推進するため、昨年「Leadership on a Smarter Planet」というCEO向けの勉強会を開いてきたが、そこで得たのが上記の数値である。

 米IBMは、成長分野として「ビジネスアナリティクス」「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」の四つを示し、「前例のないやり方で顧客のビジネスを変革するITの新しい価値を追求する」(ヘネシー ゼネラルマネージャー)と、製品ポートフォリオを見直すことに加えて、新しい価値を求めるユーザー企業の新たな担当責任者を掘り起こす「リード・ジェネレーション(見込み顧客の獲得)」を強化することを明らかにした。

 新しい製品ポートフォリオとしては、垂直統合型システム「PureSystems」やスマートデバイスなどを利用した「新しい時代のコンピューティング(A New Era of Computing)」の開発・販売と、成長分野にある「新しい顧客層(A New Kind of Client)」の獲得の2項目に、新たに多様なコンピューティングを組み合わせて高い価値を生み出す「新しいスキル(A New Type of Expertise)」の養成を加えた。ヘネシー ゼネラルマネージャーは、「これらの施策によって市場占有率を高め、新しいコンピューティングのリーダーになる」と、意欲をみせた。

 「新たな顧客層」に関しては、今回から成長分野である業種異業態や中国などの市場に加え、「ITに関係のない人」に焦点をあて、企業内の市場戦略を構築するCMOや財務責任者のCFO(Chief Financial Officer)、業務執行責任者のCEOなどのリード獲得策を進め、BPにリードを提供する計画だ。これに伴って、15年までに、BPの人材教育などにあてる支出を現在の300億ドルから800億ドルにするという。

 具体例としては、犯罪予知に過去の犯罪履歴や犯行現場などのビッグデータを利用したサウスカロライナ州の警察システムや、中国の鉄道でオペレーションを自動化して運用コストを3分の1に減らしたこと、日本のGMOインターネットが「PureSystems」などを利用して施設設備コストを大幅に削減した事例を示した。ヘネシー ゼネラルマネージャーは「新しい市場を開拓するための施策に継続的に投資する。市場開拓には人が必要。そのために、BPの皆さんに対する投資も拡大する」と述べた。

ザ・リーズケーキファクトリーは分析で調理効率化

 続いて、セールスとディストリビューションの責任者であるブルーノ・デ・レオ シニアバイスプレジデントを司会として、新しい戦略や計画の成功事例を当人が説明しながら進行するディスカッションが行われた。登壇したのは、全米で173店舗を展開し、昨年にはドバイにも進出したレストランチェーン「ザ・チーズケーキファクトリー」の調理責任者、ドナルド・ムーアCCO(Chief Culinary Officer)と、料理店向けシステムを手がけるシステムベンダー、N2Nグローバルのアンジェラ・ナードン社長兼CIO(Chef Innovation Officer)だ。

左から、IBMのレオ シニアバイスプレジデント、ザ・チーズケーキファクトリーのムーアCCO、N2Nグローバルのナードン社長兼CIO。料理店の調理場の運用を分析して効率化するシステムを導入した経緯などを語った

 ムーアCCOは、IBMベースでN2Nグローバルのシステムを導入した経緯に触れ、「食べ物のパイオニアになりたい。そのためには、最もすぐれた材料を仕入れ、フレッシュな原材料を利用したユニークなメニュー(現在200種類以上)を揃えることを重視している。そのうえで、顧客のニーズや来店後の注文を受けて出すまでの流れなどを綿密に組んでいく必要がある」と語った。このために、IBMのビッグデータ・アナリティクス関連製品と分析用基幹システム「IBM Power System」、N2Nテクノロジーのソフトなどを導入し、競合他社にはない革新的なシステムを構築した。

 導入したBPのN2Nグローバルのナードン社長兼CIOは「専門性の高い導入要求に対して、レストラン、小売り、流通にフォーカスする当社のソフトが選ばれた。生産者、加工業者、チェーン店などの状況をみて、専門用語などを学びながらつくり上げたが、IBMの製品も加えて、新しい経験をさせてもらった」と語った。

 ムーアCOOは、「調理場のコックは、どの注文をどのタイミングで出すか、常に考えている。今回のシステムは、過去のデータをもとに、最適な調理時間を分析するのに役立っているほか、店舗を越えてコック間の情報交換の場を増やすことができた」と喜びの表情。IBMのレオ シニアバイスプレジデントは、「今回の案件は、食品の品質や安心・安全などの分野で責任をもつムーアCOOへのアプローチで実現した」と、「新しい顧客層」の開拓という点で貴重な事例であると指摘した。

 この後は、IBMのマーケティング責任者であるジョン・イワタ バイスプレジデントと、システムとソフトの事業責任者であるスティーブ・ミルズ シニアバイスプレジデント、グローバルのパートナー戦略責任者のヘネシー ゼネラルマネージャーが登壇し、それぞれ新たなマーケティングや製品、パートナー戦略について語った。

“The New IT Buyer”が市場開拓の切り口になる

 イワタ・バイスプレジデントは、「企業のコンピューティングを支えるために、いろいろな道具が出てきた。スマート・モバイル・デバイスの数は、世界の人口を超えている。いま、これらの新たな使い方が求められている」としたうえで、「企業を変えるための豊富なアイデアと知識をもつ人が存在する。当社は、IT市場を変革するために、いろいろな力を利用する」と述べ、「新しいバイヤー(The New IT Buyer)」の開拓を宣言した。

ジョン・イワタ バイスプレジデントは、「新しいバイヤー」の開拓を明らかにした

 この裏づけとして、IBMが提供するスマーター・ソリューションやビジネス・アナリティクスなどの成長を挙げ、これらが新しい市場(使い方)を生み出しているとした。例えば、台湾の大手電力会社は、各家庭に電力量をモニタするスマート・メーターを配置しているが、システムに余力がないために、モニタリングは1年に1回だけだった。だが、IBM製品を導入したことで15分ごとのモニタリングが実現し、電力の使用方法を利用者に提供するサービスを展開できるようになった。

 また、世界的なスポーツ用品メーカーのプーマは、各地に配置した倉庫の商品を、各店舗の売れ行き状況や顧客層などに応じて自動的に製品を選んで出荷するシステムをIBM製品で実現した。これによって、プーマは店舗別やフロア別の情報の収集を従来の60分ごとから20分ごとに回数を増やすことができ、最終的にはムダな出荷を省いて、適切に商品を陳列できたことで、売上高が20%も伸びたという。イワタ バイスプレジデントは「これらは、企業内のCMOが企画して展開する施策。ここに当社の助けを必要としていた」と、企業内のIT担当者以外からのアプローチで成功したと指摘した。

ハードとソフトの統合販売のインセンティブ倍へ

 ミルズ シニアバイスプレジデントは、昨年開始したBP向けの新インセンティブプログラム「IBM Solution Accelerator Incentive」とリード・ジェネレーションの施策の統合を明らかにし、「パートナーに対するマージン、サポート、リード、コ・マーケティングの各分野で、リーダーになる」と述べ、パートナー満足度を向上する新施策の展開を明らかにした。

システム&ソフトの責任者であるスティーブ・ミルズ シニアバイスプデジデントはインセンティブの強化を公表

 具体的には、上記の統合施策と「ソフトウェア・バリュー・インセンティブ(SVI)を従来の2倍にする「SVI Reward for IBM Passed Leads」を展開し、いままで以上にハードとソフトの統合・融合でソリューションの提案ができるようにする。「このためのキープロダクトがビジネスアナリティクスとビッグデータ関連で、ここに対して最も投資している」(ミルズ シニアバイスプレジデント)という。

 特に、その基盤となる垂直統合型システム「IBM PureFlex System」は重要で、最近になってオラクルやシスコシステムズなどが参入しているが、インテルベースの競合製品のパフォーマンスを比較し、ソフトやI/Oの拡張性やシステム全体の柔軟性、1秒単位のトランザクションにかかるコストを割り出して優位性を強調した。

ソリューションは、5つに絞った

 業種別ソリューションの責任者であるマイク・ローディン シニアバイスプレジデントは、業種別のソリューション展開を「五つのソリューションに絞った」と述べ、企業内のIT担当者以外の人にアプローチする際の提案方法などについて方向性を示した。その五つとは、「Smarter Analytics」「Smarter Commerce」「Sotial Business」「Smarter Cities」「Watson Solution」だ。

業種別ソリューション担当のマイク・ローディン・シニアバイスプレジデントは、「次世代のフロントオフィスを変える」と明言

 ローディン シニアバイスプデジデントは「企業は、グローバリゼーションやデータ分析などを心配している。また、それらのデータをいかに短時間でビジネスに反映すべきか悩んでいる」と指摘。従来のバックオフィス中心の提案展開だけでなく、「ビジネスを洞察する利用シーン」に向けたソリューションが重要という。そのために、12年2月には、米スマーター・アナリティクス社を傘下に収めるなど、買収活動を積極化し、製品面でも、11年に米クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ)で人間に勝利した「Power7」プロセッサを搭載した「Watson」を商用化した。「次世代のフロントオフィスシステムを変える」(ローディン シニアバイスプレジデント)と意欲を示した。

日本メディアのインタビューに「Powerはさらに進化する」と語ったコリン・パリス ゼネラルマネージャー

 「Watson」に関しては、「Power」の担当者であるコリン・パリス ゼネラルマネージャーが、日本のメディア関係者とのインタビューで、「『Watson』は、今後ハイレベルのアナリティクスを実現するために、インテルのチップでは得られない高性能なコンピュータに生まれ変わる」と述べ、「Watson」ベースで高度な自然言語処理を実現する新しいサーバー製品の投入を示唆した。(谷畑良胤)
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外部リンク

米IBM=http://www.ibm.com/us/en/

日本IBM=http://www.ibm.com/jp/ja/