【第2章 既存ビジネスをどう拡大するか】
固定顧客のビジネスは目減り
付加価値をどう与えるかがカギ
──ここまでお話しいただいたような、現在の事業を拡大するために、どんな努力をしておられますか。 小林 当社には、創業者ビル・トッテンの「顧客視点」という哲学が社内に根づいています。基本的には、顧客、パートナー、そして社員のそれぞれに対して一番になるために何をすべきかを追求しています。創業者が米国から来日したのは、メインフレームの時代。そこに関係する会計システムなどは、個別開発ではなく“吊し(パッケージ)”でいいという考えをもって興した会社です。ただ、ITシステムが徐々にオープン化するなかで、顧客中心のスタイルを貫いてきたがゆえに、バランスを取りにくい状況にあるのが実際のところです。
当社の顧客は東証2部上場以上の規模の会社が多いせいか、とんがった製品を好まず、ひと山越えて枯れてきた製品を取り入れる傾向にあります。それでも、あまり顧客に引っ張られずに提案できるようにしたいと考え始めています。ほとんどが既存顧客で、営業担当者は1日に数件の顧客を訪問し、そこで出てきた声に応えて開発するスタイルですが、そこで、今のアシストの新しい価値を伝えることによって案件を増やしていくことを重視しています。
例えば、DBの領域で、最近「カラム型DB」が話題になっていますが、市場をみると若干古く、最新技術を顧客に提案するとなると「NoSQL」や「NewSQL」を勧めなければならない。当然、その観点で製品を観察してきましたが、当社のメイン顧客にはとがりすぎています。それよりは、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)をトランザクション系でなく参照系、いわゆるBI系でビッグデータに近い利用としてストレスなく使ってもらうために「カラム型DB」を提案しています。
ただ、最近では、外資系メーカーが日本法人を設立して直接進出してきていますので、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつあります。そこで、現社長の大塚は、三つの分野に集中しながら、単品でなく「プラス1」によって違う価値を生み出すソリューションを提案するようにしています。
宮武 売上高で主力を占めるのは受託ソフト開発ですが、創業以来16年間で一度も赤字決算がなく、無借金経営ができている理由は、売り込みをしなくてすんでいるところにあります。徹底的な現場主義で、そこでいかにサービス価値を認めていただくかを重要視しています。当社では、私自身は特別ですが、単独で営業しています。既存顧客へは、深耕営業の役割を果たす担当者が現場で要望を聞いて案件に結びつけています。私の役割は、新規顧客の開拓にあります。
先に紹介した病院の案件は、たまたま飛び込みで訪問した際に得た受託ソフト開発です。そうした場で、気づきを得ることが多いのです。例えば、今回受託した病院は新築で、大手ゼネコンが設計・建設を手がけていますが、それらの方々との関係を築くなかで、ヒントをいただきました。
ちなみに、どの病院がいつシステムを入れ替え、老朽化した医療機器をリプレースするかという情報を有料で手に入れることができます。ただ、当社のシステムは、病院としてはなくても済むものなので、こういう有料情報とは直接関係ありませんが、どれくらいの規模のマーケットがあるかを測定することはできます。
中村 NECネクサソリューションズのビジネスは、当社の言葉で「パーク」と「新規」で成り立っています。パークとは、既存顧客ですが、7~8割がパークからのリプレースが占めています。パークのビジネスは、ご存じの通り、単価下落が激しく、そこだけを掘り起こそうとしても成果が得られません。そのために、18のソリューションを構築して、新規マーケットを開拓しているのです。
さて、既存ビジネスをどう伸ばすかですが、新規マーケットにアプローチしなければ数字が上がらないので、既存のパークを営業していた人員を配置換えして新規開拓に回らせる必要があります。SE主導で顧客のパートナーとして成り立つようにするために転換しました。既存パークには、メインは営業でなく、ベテランのSEが新規システム構築の際などに参画する体制にしました。パークのビジネスは、全体の比率は減りますが、アドオンをプラスすることで、絶対値として基本ベースを3年程度維持できると計算しています。そのために、組織を見直して営業を新規事業の拡大に回したわけです。
岡田 当社の場合、NECネクサソリューションズさんのようなパークという考え方はしていませんが、既存の運用保守(リテンション)に伴うビジネスで全体の7割程度を占めていて、残りの3割をどう伸ばすかに重点を置いています。今後3年で、リテンションの部分は10%程度減少するとみています。インフラ費用が減っていますので、当然、保守経費も減るからです。
減少分を補う手段として、4年ほど前にクラウドに舵を切りました。ただ、クラウドは難しい。クラウドは汎用機のようなビジネスができるはずですが、汎用機に比べてアーキテクチャが絶対的に難しいんです。営業担当者にIaaS(Infrastructure as a Service)について理解させるのも難しいですし、この上で業務が動くわけですから、顧客に業務の改善・変革を提案する必要がありますが、これを顧客に説明するのは至難の業です。そこが悩みどころです。
そうはいっても、クラウドの導入で実績を上げてきたエンジニアをコンサルタントのように語れるよう再教育して、いくつかのシナリオを作成し、ストーリーを語れる集団(ソリューション・コンサルタント)づくりに今年から着手しています。顧客のなかに、BCP(事業継続計画)対応を希望される企業がありました。本番環境が危ないので、それをすべて別のクラウド環境に移行したいという希望なのですが、この場合、移行のプロセスが大事になります。これはすでに実績のある事例ですので、その経験を積んだ者に顧客に説明するためのシナリオを用意しています。
クラウドは、「システム統合色」が強くなりますので、当社で該当するシステムを担当したことのない新規の顧客への提案は迫力に欠ける。どちらかといえば、既存顧客をターゲットにシナリオを作成し、接点を多くもつことによって当てはまるものがわかるようになってきています。今年から、そのプロセスを複数回すことに取り組んでいます。
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