【第3章 将来に向けての悩み】
顧客のビジョンをかなえる技術者
SEのスキルマップ棚卸しを
──既存ビジネスを拡大するうえでの悩みを聞かせてください。 岡田 当社の営業担当者に「クラウド・ファースト」で販売するという意識を定着させることが最大の課題です。当社の場合、クラウド事業で大きな投資をしていますので、それを徹底することを急ぐ必要があります。従来、Oracle製品などを単体で販売してきた担当者が、クラウドに一気に移ることは難しい状況にあります。
中村 営業、SEともに意識を変えないと事業を伸ばすことが難しいでしょう。営業はどうしても楽な方向へ行きがちです。パークだけでお茶を飲んでいる状況を見直し、新しい市場へ向かう、あるいはクラウドなど新商材を売ることにシフトしています。SEについても、顧客に言われた通りにつくるという意識を変えて、顧客のビジネス・パートナーという認識に改める必要があります。また、それを促進する支援プログラムや教育が求められます。
小林 当社で力を注いでいる事業分野では、まだまだユーザーに提案できる範囲があります。ただ、活用事例が営業担当者に共有されているかというとそうではなく、それを共有して横展開できる仕組みが求められます。社内では、昨年末に「お客様の最高事例」という導入事例をA4一枚で報告し、全社員に閲覧することを始めました。
宮武 顧客のROI(費用対効果)や価値をいかに打ち出すかが重要になりますね。よい事例を文書化し、価値を数値化して横展開していく。営業一人で完結することではなく、病院の事例では当社の幹部を交えてディスカッションしました。やはり、営業力が足りないし、技術者の人材が不足しているという厳しい世界になっています。顧客にとっての儲けの源泉や事業課題がピンとくる技術者であってほしいけれども、そんな人材はあまりいません。
一般論ですが、顧客自身が自社の事業課題を理解できているケースは少ない。それを正しく開発ベンダー側に伝えられる会社はレアケースだと感じています。
中村 4月1日付でNECシステムテクノロジーに異動したのですが、宮武さんがおっしゃる通り、上流工程のなかで顧客が投資価値や顧客の儲け、本業に集中して顧客の価値を顧客自身が高めるための議論ができるSE人材を育てなければならないと思います。そういう意味では、SEのスキルマップの棚卸しが必要だと感じています。
【第4章 新規ビジネスをどう開拓するか】
産業の主役交代を見極めろ
コモディティ化するクラウドの次
──今後5年程度を見据えた場合、新規ビジネスを拡大するなど、各社のビジネスをどう変革する必要があるのでしょうか。 小林 当社のターゲットは、年商500億円以上の中堅・大手企業になります。よく家一軒、ビル一棟を建てる場合、SIerが工務店や建築会社になりますが、当社はその役回りができない。だから、「当社は水回りだけをやります。そこに関してはプロです」と売り込んでいます。ただ、これからは、トイレの部分だけをやっていたのをキッチンなどまで領域を広げて、水回りだけから、玄関回りなどエクステリアまで拡大することをプラスアルファでどう探すかが大切になっています。
また、最近当社では、UbuntuやOpenOfficeなど、オープンソース系のビジネスを展開しています。従来のオンプレミス(企業内)中心と正反対で、ビジネスモデルも大きく異なります。これまでのパッケージはこうしたビジネスモデルに移ってくるでしょうが、どう対応すべきかが課題になっています。
宮武 世の中が大きく変化しています。ユーザーとなる企業も主役が交代する可能性があります。これをしっかり観察していく必要があります。主役交代を読み取ると同時に、主役に躍り出る企業が求めているものを迅速にキャッチアップすることが重要になるように思います。
これまで土俵のど真ん中にいた企業が、あっという間に土俵際に追い込まれることが起こり得ます。例えば、日本の経済発展を支えた製造業にばかり目を向けていたら、土俵の外に飛ばされてしまう。さまざまな異業種の産業展に参加していますが、そうした場所で次の主役になりそうな企業を見逃さないためでもあります。産業のなかで、ずり落ちていく企業と這い上がる企業を見極めないといけないし、そこにチャンスがあると感じています。
中村 マーケットとプロダクトの目線でお話しします。NECネクサソリューションズは、年商100億~500億円の企業をメイン顧客にしていますが、その領域でどれだけ基幹業務関連のシェアを占めているかといえば、2ケタもない。仮に10%とすると、残り90%は新規になります。そこで、とんがったプロダクトを明確にするという判断になったわけです。
既存のパークのなかにある事例をブラッシュアップして、個々に前提条件がありますので、その条件の下では確実に価値を訴求できる。それが、大きく18のソリューションになります。これは既存市場の90%の新規マーケットに向けた展開になります。
マーケットに対するアプローチとして、従来は「エリア」や「業種」という区分で展開していた。最近の傾向として、クラウドサービスにシステムが移行していくと、1社1社に対する商売でなくなると感じています。社内では“胴元ビジネス”と呼んでいますが、胴元になるビジネスをしなければならない。
ただ、中堅・中小企業は、コストを安くしてほしいという要望だけですが、バスの話にあるような展開をしなければ、クラウドサービスなどでITベンダー側が儲けることは無理だろうし、顧客側にも価値のあるシステムにならない気がします。その際、胴元だけが儲かるのではなく、地場のITベンダーも儲かるスキームにする必要があるでしょう。
岡田 現在推進しているクラウドは、あと2年程度でコモディティ化するでしょう。そのため、IaaS、PaaS、SaaSとタテにプロダクトを組み立てる必要性を感じています。冒頭にお話ししたグループ会社の合併に伴う情報基盤系の統合は、まさにPaaSやSaaSに進出するきっかけになりました。
また、新日鉄住金系のグループ会社がどんどん海外に進出しています。当社も2011年12月、シンガポールに現地法人を設立して、小さいながらもクラウド基盤を構築し、グループ企業向けIaaSのサービスを開始しました。ただ、それだけではおもしろくないので、半年程度をかけてリサーチし、日系の超大手企業に付いて海外に進出した企業にはシステム担当者が不足している実態をつかみました。そこを対象に、VPNや勤怠管理、安否確認、経費精算などのサービスを他社からまとめてITサポートのサービスパックを用意し、売り出します。
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