日本オラクル(遠藤隆雄社長)は、2013年度(14年5月期)、前年同期比約8%の売上拡大を目標に掲げ、体制の強化やパートナー支援の拡充に動いている。ユーザー企業に入り込んで業務の課題解決を提案する「エンタープライズアーキテクト」の採用を急ピッチで進めるほか、ハイタッチ営業の強化に取り組む。今後、クラウド事業の本格的な拡大を目指し、パートナーとの連携を強めて、パートナーのリソースを活用するかたちで、基幹システムのクラウド型提供にも乗り出す。課題は、いかにユーザー企業とのパイプを太くして、継続的な関係を築くかである。日本オラクルの経営陣に取材し、ビジネス戦略の要点をまとめた。(本多和幸、真鍋武、ゼンフ ミシャ)
業務の課題を把握、解決──プロを走らせる

遠藤隆雄社長
7月1日、都内の会見にて 13年度に入って、ユーザー企業の事業部門に向けたIT活用の提案活動を本格化する。ユーザー企業に入り込み、業務の課題を把握する「エンタープライズアーキテクト」部隊の人材採用を重点的に進めている。業務改善のプロ集団を走らせ、データベースマシン「Exadata」など、大量情報の分析ができる垂直統合型製品をベースとした案件の受注につなげることを狙う。
ハイタッチ営業も「圧倒的に増やす」(製品戦略事業統括本部の谷口英治・副統括本部長)という。ハイタッチ営業によって取得した引き合い情報を、大手システムインテグレータ(SIer)を中心とする販売パートナーに提供。「パートナー売上のトップラインを増やすためのキラーコンテンツとして、オラクル製品を提案してもらう」(谷口副統括本部長)という戦略だ。
直近では、ITホールディングスグループのTISが、「Exadata」の案件を数多く手がけているという。もともと金融向けERP構築に強いTISだが、2012年6月に開設した御殿山DC(東京・品川)内に、「Exadata」の検証環境を設置。ここ1年間、提案に力を入れて、オラクル事業の売上拡大につなげた模様だ。
クラウドはパートナー次第──対応を促す
クラウド事業の本格的な拡大に向けて、パートナーとの関係強化を迫られている。遠藤社長は、「クラウド事業がどれほど伸びるかは、日本のパートナー次第だ」として、パートナーの動きが活発化することに期待を寄せている。
クラウド商材としては現在、CRM(顧客関係管理)やタレントマネジメント(人材管理)などで構成する「Fusion Applications」を中心に提供。従来の基幹系ソリューションはオンプレミスで提供している。「ただし、オンプレミスで提供している製品をパートナーがクラウド基盤に載せるということは、ニーズと技術があれば十分に考えられる」とエンタープライズソリューション統括本部の高橋正登・統括本部長が語るように、クラウド提供はパートナーの腕の見せどころになる。
事業部門に向けたIT活用提案に関しても、パートナーとの連携を強めることが欠かせない。日本オラクルと販売パートナーが一体になって、ユーザー企業に「一段高いバリューを提供することが必要」(高橋統括本部長)と捉え、パートナーに対応を促す。高橋統括本部長は、「『エンタープライズアーキテクト』の役割はますます大きくなる。当社も人員を増強しているし、パートナーにもぜひ、同様の取り組みを進めてもらいたい」と強調する。
上位顧客に定期連絡──パートナー支援も拡充
ユーザー企業との関係の強化も「道半ば」(遠藤社長)。同社のライセンス営業はソフトウェア製品を販売した後、ユーザー企業を再訪問しないケースが多く、さらなる提案の可能性があるのに、チャンスをものにすることができていないという実態がある。製品の購入・導入に関する相談窓口の「Oracle Direct」を活用して、「上位のお客様の何社かに、定期的にコンタクトを取ることを推進する」(遠藤社長)構えだ。
一方、パートナーとの関係の強化の一環として、近々、「Oracle RightNow Cloud Service」の新たなパートナープログラムを発表するという。「Oracle RightNow Cloud Service」は、ウェブ、ソーシャル・ネットワーク、コンタクトセンターを一体化したクラウドサービス群で、現在、日本オラクルのデータセンター(DC)を基盤として提供している。新パートナープログラムの詳細は明らかにされていないが、今後、パートナーのDCを活用し、販売拡大に動く可能性が高いと推測することができる。
米国での動きにも注目
6月下旬、米オラクルは、クラウド分野において相次いで大手ITベンダーと戦略的パートナーシップを結ぶことを発表した。米ネットスイート、米マイクロソフト、米セールスフォース・ドットコムの3社と包括的に提携して、クラウド市場の開拓を狙う。
今後、それぞれの商材を組み合わせて、クラウドの標準化を図るという。
今回の提携による今後のビジネス展開についてはまだ詳細が不明だが、いずれ日本にも影響が及んでくることは間違いないだろう。エンタープライズソリューション統括本部の高橋正登・統括本部長は、「提携によってソリューションの総合力が大きくなる」と、商機の拡大に期待する。日本オラクルとパートナー各社は早急に準備を進めて、提携による新たなビジネスチャンスをつかむことが求められている。