日本オラクルが、順調に業績を伸ばしている。ソフトウェアとハードウェアを統合して提供するデータベース(DB)マシン「Oracle Exadata」の販売が伸び、2013年5月期上半期(2012年6月1日~11月30日)、売上高と利益が2ケタ水準で成長して過去最高の業績を記録した。こうした好調ぶりの背景には、遠藤隆雄社長が2008年の就任から推進してきた「遠藤モデル」が、ここにきて実を結んでいることがある。ユーザー企業のIT予算ではなく、マーケティングや開発の予算で案件を獲得するのが、その遠藤モデルの柱だ。2013年は、「Oracle Exadata」などを商材として、IT以外の予算を狙う営業活動を加速化し、引き続き2ケタの成長を目指す。(ゼンフ ミシャ)

遠藤隆雄社長 遠藤社長は、本紙が行った2012年12月のインタビューで、「2013年も2ケタ成長を確実に実現する」と断言。大量情報の分析・活用を可能にするDBマシン「Oracle Exadata」をはじめ、ハードとソフトを融合させるエンジニアド・システム製品群の提案に注力し、ビジネスを飛躍的に伸ばすことに対する意気込みを示した。
遠藤社長の自信を裏づけるのは、日本オラクルが昨年末に発表した過去最高の業績だ。同社は2013年5月期上半期に、売上高743億1900万円(前年同期比11.6%増)、営業利益209億200万円(同15.0%増)、経常利益209億4800万円(同15.1%増)、純利益128億7400万円(同19.9%増)と、すべて10%以上の伸びをみせた。とくに同社のビジネスを突き動かしているのは、「Oracle Exadata」の販売拡大だ。日本オラクルは、この製品をオンラインゲーム事業者のスクウェア・エニックスなどの民間企業に納入するほか、2012年7月に北海道札幌市が「Oracle Exadata」を基盤としたシステムを稼働開始するなど、公共機関にも納入している。
日本オラクルの直近の業績をセグメント別でみると、「Oracle Exadata」の販売拡大が複数の事業分野を活性化させていることがわかる。
「Oracle Exadata」の販売が好調に推移したことを受けて、同製品の機器販売による売り上げを含む「ハードウェア・システムズ」事業は110億8200万円に伸び、前年同期比12.2%増を記録した。さらに、「Oracle Exadata」をベースとしてクラウドやビッグデータの利活用環境を構築するためのミドルウェアやアプリケーションを展開する「ソフトウェア・ライセンス」事業も、「Oracle Exadata」の販売拡大がカンフル剤となり、売上高が211億8700万円に拡大し、前年同期比23.7%増となった(図参照)。
日本のユーザー企業のIT投資がなかなか伸びないなかで、日本オラクルが順調に業績を伸ばしているのはなぜか。最も大きな理由は、遠藤社長が描いている営業戦略──「遠藤モデル」がここにきて実を結んでいるからだとみられる。遠藤社長は、日本IBMで約30年のキャリアを積んで、2008年に日本オラクルのトップに就任。ここ数年の間、営業体制を強化し、縮小傾向にあるIT予算ではなく、ユーザー企業が積極的に増やしているマーケティングや開発の予算を狙う営業活動を展開してきた。
遠藤社長は、「ユーザー企業の開発部門やマーケティング部門を相手に、IT活用によって新製品が生まれたり、ユーザー体験の向上ができたりすることを訴えている。すでに、IT以外の予算で『Oracle Exadata』などの注文をいただいた案件が数件ある」と、「遠藤モデル」に手応えを感じているようだ。「営業部隊を強化して体力をつけた。この勢いをさらに増して、2013年はマーケティングや開発の部門を攻める営業を加速して事業拡大につなげたい」と意気盛んだ。
先行してハードウェアとソフトウェアを統合する「Oracle Exadata」を展開している日本オラクルに加え、日本IBMや日立製作所、富士通など、国内外の他ベンダーも、2012年に垂直統合型製品を投入してきた。しかし、日本オラクルの遠藤社長は、彼らをライバルとはみなしていない。「当社はマーケティングや開発の予算を狙っているので、ITベンダーよりは、むしろ広告代理店などと競合することになる。日本IBMは敵ではなくなるかもしれない」と、自信のほどをみせている。
表層深層
日本オラクルの遠藤隆雄社長は、「当社のビジネスが順調に伸びていることは、(日本IBMの社長である)マーティン・イェッターさんには申し訳ない」とコメントした。かなり皮肉っぽい言い方だが、2012年に垂直統合型製品「PureSystems」を投入した日本IBMを強く意識していることの現れともみられる。
日本オラクルにとっては、2013年もデータベース(DB)マシン「Oracle Exadata」をはじめとするエンジニアド・システム製品群の販売を継続的に拡大するために、パートナーとの関係をいかに深めるかがカギを握る。同社は2012年にNEC・富士通との協業を推進し、NECと富士通は現在、「Oracle Exadata」の一次保守サービスとSI(システム構築)支援サービスを提供している。しかし、両社は「Oracle Exadata」の販売を手がけ、保守/構築サービスを提供する一方で、自社独自の垂直統合型製品の販売にも取り組んでいる。
富士通は、2012年12月に「Dynamic Integrated Systems」を発表し、NECは垂直統合型製品を2013年の春頃に発表することを予定している。こうしてみると、両社は今後、「Oracle Exadata」ではなく、自社の垂直統合型製品を優先的に提案する可能性が十分にあると考えられる。
そんな状況にあって、日本オラクルの遠藤社長は、「『Oracle Exadata』の販売に関して、当社も販売パートナーも儲かるモデルを迅速に立ち上げたい」としている。