IT製品の商流でメーカーに最も近い位置にいるディストリビュータにとって、メーカーといかに深い関係を築くかが販売のカギを握る。ネットワンパートナーズの石井慶太さんは、新人時代にメーカーの担当者から、相手に響く提案の仕方を叩き込まれ、メーカーと太いパイプを築いてきたことを強力な武器としている。これから先、サーバーを組み合わせた案件を獲得することを目指して、提案の幅を広げようとしている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
今後はサーバーにも挑戦
2009年5月にネットワンパートナーズの西日本営業部に出向したが、その年の秋口、リーマン・ショックの影響を受けて、関西地区の経済が急速に冷え込んだ。とくに大手企業は、コスト削減のためにIT予算を削り、エンタープライズ向けの案件が受注しにくくなった。そうしたなかにあって、私は、お客様にIT活用によるビジネスへのメリットをより明確に伝える必要性を肌で感じて、ディストリビュータの営業として何ができるかについて知恵を絞った。
考えついたのは、スイッチやルータといったネットワーク機器を単体で提案するのではなく、ストレージなどと組み合わせて、包括的なソリューションとして提案してみようということだった。そのために、当社が扱う製品のメーカーと緊密に連携しなければならないと考えて、メーカーとの関係づくりに力を入れた。
当時、私はまだ半人前でソリューション提案の経験がなく、メーカーの担当者からは「その提案書で何が言いたいのか、さっぱりわからない」と何度も厳しい指摘を受けた。「提案のポイントは簡潔に言え」「商談がお客様にとって有意義な時間になるよう、必要な情報を用意しろ」。このようにアドバイスされてメーカーに“育てられ”ながら、提案の腕を磨いて、経済情勢が芳しくないなかでも、相次いでお客様から注文をいただくことができるようになった。
メーカーと太いパイプをもつことがいかに重要であるかを、最近受注した案件を通じて改めて実感した。
九州のお客様にストレージを提案した案件だ。半年をかけて、出張を繰り返しながらお客様への訪問を続けたが、「何のために導入するのか」という根本的なところについては納得していただくことができなかった。そこで私は、メーカーの協力を得て、一緒に動くことにした。お客様にこちらの本気度をアピールして、導入のメリットをメーカーの力を借りて訴求することによって受注につなげた。
ネットワンパートナーズは、あらゆるIT製品を扱っているが、どうしても「ネットワーク」のイメージが前面に出る。私は営業担当の一人として、そのイメージを打ち破りたいと考えている。現在は、ネットワークとストレージを中心とする提案を行っているが、今後は、サーバーも組み合わせた「ばかでかい案件」を獲得してみたい。
私は現時点で、まだサーバーに関する技術的な知識が不足していて、サーバーの提案をどのようにしてお客様のニーズにマッチングするかを十分に理解していないが、勉強しながらお客様の声を汲み取って、より幅の広い提案のスキルを身につけたいと考えている。
●日常使う営業ツール.......... 出張の多い石井さんは、iPhoneを手放さない。シスコシステムズのコミュニケーションツール「Cisco Jabber」をインストールして、場所を問わずに、社内の人とコミュニケーションを取って情報を共有している。
●上司からのひと言.......... 「石井君は、個人的にも彼を学生時代から知っているが、ビジネスマンとしての成長は著しい。持ち前のバイタリティと行動力はパートナー様から高い評価をいただいている。現在は、地域営業として関西を拠点に営業活動にまい進してくれているが、ネットワンパートナーズの一員として新しい事業、ディストリビュータとしての新しいビジネスモデルをつくり出していくべく、今後のチャレンジを期待している」(田中拓也・執行役員)