ユーザー企業側の担当者として基幹系システムの導入に携わったことがきっかけでIT業界に転職し、外資系ERPベンダーの営業として経験を積んだ後、起業も経験した小川さん。そんな多彩なキャリアの持ち主であっても、「日本オラクルに入社した後に学んだことのほうが大きい」という。より大きな成果を上げるためには、自分一人の力だけでなく、社内で多くの仲間と連携し、顧客への最適解を探す必要がある。そのための環境づくりに主体的に取り組んでいる。(構成/本多和幸 写真/長谷川博一)
自社商材を活用して情報共有
アプリケーション営業の業務と並行して取り組んでいる社内での活動についても触れておきたい。日本オラクルで学んだ最も大きなことは、ありきたりかもしれないけれど、「チームワークの大切さ」。そのための社内基盤として、オラクルグループにはいろいろな仕組みが用意されている。
私は、その一つであるOWL(Oracle Women's Leadership)の日本事務局員として活動している。オラクルが女性のリーダーシップ育成・支援のために2006年に設立した組織で、40の国と地域で活動している。営業の仕事のことはもちろん、出産・子育てと仕事の両立といった女性としての悩み、ワーク・ライフ・バランスなど、幅広いテーマで情報交換ができる場。国内外、社内外からいろいろなキャリアをもつ方を招いてお話をうかがったり、ディスカッションする機会も設けていて、キャリアプランを考えるうえで非常に役立っている。
定例の活動は月2回の事務局ミーティングが中心となっているけれど、後輩の育成や女性が働きやすい環境づくりも私の重要なミッションと考えていることもあって、キャリアのロールモデルを探す分科会のリーダーも務めている。というのも、私が営業として最初のキャリアを踏み出した当時、男性と女性のメンターをそれぞれもっていて、これが後のキャリア形成に役立つ、とても恵まれた環境だったと今になってみて強く感じているから。日本オラクルの若手も、早いうちにメンターを探すことができるように、積極的に手助けしたいと思っている。
そんな社内環境にも支えられて、本業であるアプリケーション営業では、チームとしてビッグプロジェクトを成功させ、「One Red Team Award」を2回受賞することができた。実際に自分が手がけている商材である顧客管理アプリケーション「Oracle Fusion CRM」を社内でも活用して情報共有の効率化を図っていて、自分たちがユーザーであることが、お客様への提案に説得力を高めるのに役立っていると感じている。
また、社内のコミュニケーションツールとして自社のSNSも立ち上げている。そのなかで個別の案件の悩みに対する回答をいただけることも多い。上司からのアドバイスや営業同士の情報交換の場というだけでなく、ほかの部門の人からも「類似のケースでこんな資料が役に立った」といった情報を提供していただいている。
ただ、こういう社内の仕組みを活用しても、どうしても煮詰まってしまうことがある。そんなときはみんなでカラオケを楽しんだり、お客様の調査という名目で食事に行ったり(笑)。誰かが我慢している状態では、チームとしての仕事はうまくいかない。大事な仲間が気持ちよく働けるように目配りすることも忘れないようにしている。
●日常使う営業ツール.......... 「お客様からの信号を見逃さない」ために、日々のルーティーンとして最も重視しているメールチェックに欠かせないスマートフォン。社員同士のコミュニケーションツールである社内SNSも、スマートフォンから利用している。
●上司からのひと言.......... 「小川さんは個人としてのパフォーマンスが高いだけでなく、営業部や提案チーム全体のことを考えて、みんなが快く働けるように心配りができる。これはお客様のことを大切に思う営業としての心が、同じように社内にも向いているからだろう。だから、お客様にも社内にも小川さんのファンは多い。私のチーム運営も陰に陽に助けてもらって感謝しているし、私自身が小川さんの大ファンでもある」(CRM/HCM事業本部の道下和良本部長)