シスコシステムズ(平井康文社長)は、サーバーを中核とするクラウド構築基盤「Cisco Unified Computing System(UCS)」の拡販を目指して、文字通り、販売パートナーに入り込もうとしている。2013年11月に、アライアンス責任者や営業担当で構成する専属のビジネス開発チームを立ち上げた。このチームは常駐に近いかたちでパートナーと密に連携し、UCS案件の提案力の強化につなげる。UCSを国内で普及させるためには、販社との関係づくりがポイントになると判断しての動きだ。(ゼンフ ミシャ)
一緒に商材をつくる「私たちが全面支援」

シスコシステムズ
平井康文社長 1月上旬、シスコシステムズの平井康文社長は本紙の取材に応じた。平井社長によると、「2013年は、UCS製品の販売が前年比2.5倍の伸びをみせた」そうだ。動きが鈍かったUCS事業が拡大の軌道に乗ってきたとみて、14年には販売体制を強化する方針を明らかにした。システムインテグレータ(SIer)などパートナー企業に入り込んで、UCSを情報解析ができるインメモリ型データベース(DB)ソフトウェア「SAP HANA」と組み合わせるなど、販社とともにソリューションをつくり出す専属チームは、現時点でメンバーが5人とまだリソースが少ない。14年に、販社との共同提案による実績をつくって、協業体制を固めていく。
データセンター(DC)での大規模な仮想環境の構築に適したUCS製品群は、2009年に発売して、シスコシステムズの注力商材になっている。ソフトウェアによってネットワークをつくる「SDN」が普及するにつれて縮小が見込まれるスイッチやルータを中心とする従来のビジネスを補うために、UCS事業の拡大に勝負をかけている。
しかし、日本のブレードサーバー市場でシスコシステムズのメーカーシェアはまだ6位(グローバルでは2位。ともにIDC調べ)。日本IBMや日本ヒューレット・パッカード(日本HP)といった競合プレーヤーとの差をなかなか縮められずにいるのだ。さらに、UCSを取り扱う販社のなかで、ファーウェイ・ジャパンのクラウド基盤製品の販売も手がける会社が現れている。ファーウェイをはじめ、台頭する中国メーカーとどう立ち向かうのか。これも、シスコシステムズの悩みどころだ。
そんな情勢にあって、シスコシステムズは今回の専属チームの設立によって、販売パートナーを取り込もうとしている。他社メーカーにはできない手厚いサポートの提供を武器にして、販社の営業力を強化するとともに、UCS案件の利益率を高めようという狙いだ。
ISVの獲得に動く UCSとERPをセットで
シスコシステムズがUCSのエコシステムづくりにあたって注目しているのは、SIerだけではない。13年11月に、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が開発した業務アプリケーションをUCS上で実行し、統合管理する「アプリケーション セントリック インフラストラクチャ(ACI)」を投入した。これをツールにして、ISVもUCSの販売パートナーにして、ERP(統合基幹システム)やCRM(顧客管理システム)とのセット販売を目指す。平井社長は、「14年は、ACIがUCS事業拡大のカギを握る」と捉えて、ISVの獲得に積極的に動くという。
成功事例も現れつつある。シスコシステムズは、この1月、西日本を中心にシステム開発を手がけるNTTネオメイトが販売を行うかたちで、シスコのUCSサーバーとネットアップのストレージを活用したシステムを大阪府教育委員会事務局に納入したことを発表した。大阪府教育委員会事務局は、約170校の府立学校向けのICT(情報通信技術)基盤を統合し、システム運用の効率化につなげる。
IDC Japanは、UCSサーバーなど、国内クラウド向けサーバーの2017年の出荷台数は、12年の4万1900台から、約2.4倍の10万1900台に拡大することを予測している。競争の激化は必至だ。
販社といかにパイプを太くすることができるか。2014年は、UCSビジネスにとって勝負の年となりそうだ。
<お知らせ>シスコシステムズの平井康文社長のインタビュー記事は、『週刊BCN』次号(2月3日号)の「Key Person」に掲載します。また、次号の「Special Feature」では、シスコシステムズの販社の動きに焦点をあてます。