2014年4月9日にWindows XPのサポートが終了する。これを受けて、福祉用具のレンタル卸を手がけるパラマウントケアサービス(水上和彦代表取締役)のシステム統括部では、2012年度(13年3月期)から情報収集などの移行の準備を進めてきた。しかし、端末買い替えの予算が下りないなどの問題が発生し、システム統括部は自前での移行作業を余儀なくされた。悩んだ末に見出した解決策は、展開工程を短期化するOSアップグレードサービスの活用だった。
【今回の事例内容】
<導入機関> パラマウントケアサービス2004年4月に設立。医療用・高齢者用ベッドの製造を手がけるパラマウントベッドのグループ企業で、福祉用具のレンタル卸業を営む
<決断した人> システム統括部 里茂尚範 部長前もって予算化を進めたり、ユーザーに移行の必要性をわかりやすく説明したりするなど、工夫を凝らして移行を進めた
<課題>Windows XPからの移行を自前で進めようとしたが、移行作業の負担が大きかった
<対策>富士ソフトが提供する「らくらくアップグレード for Windows」を活用
<効果>移行作業にかかる時間を短縮したことで、トータルコストを削減
<今回の事例から学ぶポイント>予期せぬ出来事が起こることを想定して、サポート終了対策は早期に準備をしておくことが大事
減価償却が終わらない
介護用品の卸を手がけるパラマウントケアサービスは、全国におよそ50の拠点をもち、約700人の従業員が各拠点で働いている。会社保有のPCは約450台で、これを本社勤務のシステム統括部の5人が管理している。
2014年4月9日にWindows XPのサポートが終了することを受けて、システム統括部の里茂尚範部長は、12年度(13年3月期)から準備を進めてきた。IT資産管理ツールを導入して棚卸を実施し、会社に約200台のXP端末が残っていることを把握。期末には、移行に必要な13年度の予算を試算していた。
当初、里茂部長は、「手間をかけずにOS移行を進めたかったので、XP搭載PCをすべて買い替える予定だった」という。しかし、年度が明けてから具体的な予算を提示すると、財務部門から「買い替えは認められない」と告げられた。実は、XP端末のうち約120台は、減価償却が終わっていなかったのだ。「その約120台のXP端末は、当社の基幹系システムがWindows 7に対応していなかった時期に導入したもので、ダウングレードして使用していた」(里茂部長)。
減価償却が終わっていないXP端末は、使い捨てるにはまだ早いという理由で買い替えができない。かといって、ダウングレードPCのOS移行作業をITベンダーに外注するとなると費用がかさむ。システム統括部は、自前でのOS移行作業を余儀なくされた。
移行作業の負担は、システム統括部の悩みの種になった。「端末1台あたりの移行作業に4~5時間かかり、並行して行うにも1回あたり2~3台が限界。さらに、システム統括部の担当者が、各拠点に出張して移行を進めるとなると、台数が多い拠点では1日で移行を終えられないこともあって、人件費や交通費・宿泊費が余計にかかることは明らかだった。移行作業中には、端末の利用者が業務を遂行できないことも問題だった」(里茂部長)。
移行作業の短縮が課題
そこでシステム統括部は、移行作業にかかる時間を短縮できないかを調査した。すると、あるとき里茂部長の部下が、OS移行の悩みを相談したITコンサルティングを手がけるサイバネットシステムの営業担当者から、「富士ソフトが移行作業を短期化できるサービスを新たに提供する」という情報を入手した。里茂部長は、「そのサービスを活用すれば、OS移行を1台あたり30分~1時間で終了できるということだった。ただその時点では、それなりの金額がかかるだろうと半信半疑だった」と当時の様子を語る。
その後、具体的なサービス内容や金額が明示され、システム統括部では、利用した際の試算をした。それによると、これまで2か月かかると試算していた移行作業を、1か月に短期化できることがわかった。さらに、「各拠点に出張した際の作業時間を短くすれば、人件費や宿泊費を削減して、トータルコストを削減できることが判明した」(里茂部長)。作業負担を軽減できるうえに、コストが安い。それならばと、里茂部長はアップグレードサービスを活用する判断を下した。トータルコストが安いので、財務部門の了承も簡単に得ることができた。
実際の移行は、富士ソフトがアップグレードサービスの提供を開始した8月以降に順次進め、現在は、本社に残る数台を残してほぼすべてのXP端末の移行を終えている。移行にあたっては、一時的に端末を使用できなくなる従業員に事情を理解してもらう必要があったが、この工程はスムーズに進んだ。里茂部長が、「サポート終了によるセキュリティリスクを論理的に説明してもITに詳しくない社員にはぴんとこない。だから、『社内のセキュリティ規定で、サポートが終了したOSは移行が義務づけられている』と説明した」ことが功を奏した。
早期移行を進めてきた甲斐があって、不測の事態にも柔軟に対応できたシステム統括部。15年7月にはWindows Server 2003のサポートが終了するが、里茂部長は「社内に残っているServer 2003搭載サーバーでも、今回の例に倣って早めの移行に努めたい」と今後の展開を語った。(真鍋武)