国内液晶ディスプレイ市場が群雄割拠の時代に突入した。大手国内メーカーの撤退や外資系メーカーの新規参入など、成熟していた市場が、最近になって動き出している。また、デジタルサイネージの登場など需要を喚起する要素も出てきた。Windows XPのサポート切れで、オフィスのデスクトップパソコンのリプレースに伴う液晶ディスプレイの買い替えが相次ぐとの見方もあり、メーカー各社に大きなビジネスチャンスが訪れる可能性がある。乗り換えを促すには、鮮明な映像など高品質であることや、リーズナブルな価格がポイントになってくる。
トップメーカーが撤退 オフィスの買い替えが進む
2013年12月、国内メーカーの三菱電機が液晶ディスプレイビジネスからの撤退を発表した。今後、デジタルサイネージ関連事業に力を入れるにあたって、テレビ番組も視聴できる端末を拡販する。リソースをそこに集中するためにディスプレイからの撤退を決断した。三菱電機は、国内市場で高いシェアを確保していたこともあって、業界で大きな話題を呼んだ。
その一方で、外資系メーカーが日本でのビジネスを本格化するケースも出てきた。MMD Singapore 日本事務所(MMD)は、PHILIPS製の液晶ディスプレイを2013年9月に国内市場に投入。大手ディストリビュータが販社として担ぐようになったほか、ほかの外資系メーカーの製品よりも品質が高く、国内メーカーの製品よりも価格が安いというイメージが固まって、今では液晶ディスプレイのブランドとして認知度が高まっている。
2013年後半、デジタルサイネージ業界にさまざまな出来事が起こり、市場に参入しているメーカーにとっては大きなビジネスチャンスがつかめる状況になってきたといえそうだ。例えば三菱電機の撤退で、これまで同社ブランドの液晶ディスプレイを導入していたユーザー企業に対して乗り換えを促すことができる。また、アイ・オー・データ機器などの国内メーカーにとっては、国産ブランドが一つ減ったことによって、国産ならではのサポート体制の強化などで高い信頼を獲得することも可能だ。ディストリビュータから複数メーカーの液晶ディスプレイを仕入れているリセラーにとっては、新たに国内市場に参入したPHILIPSという新しいブランドが追加されたことで提案の幅が広がる。
ワイド画面で高解像度がポイント XPのサポート切れなどに商機あり
現在、液晶ディスプレイでニーズが高まっているのは「ワイド型」だ。通常の19型とワイドの20.1型で比べると、高さが同じでありながら、ワイドのほうが横方向のサイズが約1.3倍も大きくなって有効活用できるスペースが広い。Excelなど横に長くなる資料を表示したり、ネットで調べものをしたりするのに便利で、使い勝手がよくなる。大画面を求めるユーザー企業が増えているので、高解像度を求めるニーズも高まっている。
さらに用途については、オフィスで業務に使用することに加え、店舗のなかに置いて映像や商品の情報を流すなど、デジタルサイネージ用に導入するケースが多くなっている。そのため、社員が業務で使うための液晶ディスプレイを単品で販売するだけでなく、液晶ディスプレイとデジタルサイネージシステムを組み合わせて提供するなど提案の幅も広がっている。
これまで成熟しているといわれていた液晶ディスプレイ市場が、再び脚光を浴びようとしている。直近では、2014年4月上旬のWindows XPのサポート切れによって、デスクトップパソコンを買い替えるユーザー企業が多くなると見込まれ、その際に液晶ディスプレイも新しくする動きが出てくる可能性がある。このように、買い替え需要を促したり、液晶ディスプレイとほかの製品・サービスを組み合わせて提供したりすることによって、ビジネスを拡大できる余地は十分にある。(佐相彰彦)