クレオネットワークス(宮島利光社長)が、2011年8月から提供しているクラウド型BPMプラットフォーム(基盤)「SmartStage/BizPlatform」の導入企業が60社を超え、急成長している。当初、この基盤は、ITサービス運用規格「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」をベースにしていることもあって、情報システム会社や企業の情報システム部門に採用された。だが、BPMの応用範囲としてシステム以外の営業・販売などまで求められるケースが増え、これに応じて基盤を進化させたことで、一般企業の事業部門へも利用が広がっている。従来の「フロー型」のシステムインテグレーション(SI)を「ストック型」へ変えるモデルとして注目される「BizPlatform」の動向を探った。(取材・文/谷畑良胤)
データ統合でなくプロセス統合

岩崎英俊
取締役 クレオネットワークスは、クレオグループのクラウドサービス専門特化ベンダーとして、2011年4月に分社化して誕生した。同年8月には、現在の主力サービスであるビジネス基盤「SmartStage」シリーズを発売。クラウド型BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)基盤「BizPlatform」とIaaS型基盤サービス「N-CLOUD」の提供を開始した。
BizPlatformは、情報部門のシステム管理業務から営業部門などの顧客訪問まで、日々発生する企業活動の“業務の連なり”(業務プロセス)を、設計・実行・モニタリングするBPM基盤だ。担当チーム別の各種業務プロセスに応じて、引き合い、商談、事務手続き、契約管理など、複数の作業を連携させて統制することが可能となっている。
従来、各業務プロセスに関係する管理システムは個別開発だった。構築期間も長く、導入負担が大きい。その点、BizPlatformは、設定面の自由度が高く、個別業務に応じて設定できるので、既存の手順を変えずに導入が可能だ。しかも、ノンプログラミングで設定ベースでシステム化できる。岩崎英俊・取締役は「顧客の状況を簡単にリサーチしただけで、すぐにプロトタイプが完成する」と、提案初期に顧客に対して具体的なUIを見せられることなどから、商談成約率が75%に達していると話す。
多くのBPM製品は、ビジネスプロセスのフロントエンドを個別開発する必要があった。岩崎取締役は「当社のBizPlatformは、ビジネスプロセスをノンプログラミングで設定ベースでシステム化できる他社のクラウドや既存システムなどを含めて、柔軟にシステム間を疎結合して構成できる。追加開発は最小限で変化に対応し続けられる」と話す。現在、他社に類似製品が見当たらないことから、特許を申請中という。
周辺システム整備でSIerと連携
同社は、BizPlatformの発売からこれまで、BizPlatformやIaaS基盤「N-CLOUD」、自社の「BizOne」という業種・業界別ビジネステンプレートに加え、周辺システムとしてデータ連携やSOAサービスハブなどを保有するITベンダーと協業し、ポートフォリオ「エンタープライズソリューションマップ」を拡張してきた。今後は、得意分野をもつSIerのソリューションや他のクラウドサービスと連携し、より幅広い領域で使える統合サービスにする計画だ。
クラウド時代に突入し、オンプレミスのシステム開発主体のSIerは存在価値を失いつつある。ただ、クラウド型へ転換しても利用料モデルだけでは、現在レベルの収益を上げることが難しい。岩崎取締役は「企業システムのスクラップ&ビルドは限界にきている。クラウドを含めて柔軟に疎結合できる基盤が必要だ。SIerは、当社のBizPlatformを使ってシステム構築をすれば、基盤の利用料だけでなく、システム間連携や連携製品のSIで収益を上げることができる」と、クラウドで収益を上げるべく、次世代の開発方法論を提案しているといえる。
クレオネットワークスが基盤ビジネスを開始して2年半。BizPlatformの方法論を完全に理解して、従来のSIモデルを転換したSIerはまだ少ない。だが、「フロー型」モデルを転換するのに最短距離をたどれる基盤として、利用価値は高そうだ。