売上高の集計から帳簿作成まで自動に
freee(佐々木大輔代表取締役)は、3月19日、クラウド会計システム「freee」と、リクルートライフスタイル(北村吉弘社長)の無料POSレジアプリ「Airレジ」を連携させると発表した。さらに、両社は営業面やシステムのサポートでも協力していくことを明らかにした。IT商材としては異例の方法で巨大な販売チャネルを構築し、ユーザーの面的拡大に取り組む。
「freee」は、銀行口座やクレジットカード明細を自動で取り込んで記帳を自動化するクラウド会計システムで、リリースから約1年が経過する3月中に、ユーザーは6万を超えた。一方、「Airレジ」は、「ホットペッパー グルメ」や「じゃらん」など、ウェブや情報誌といった自社メディアを通じて、飲食、美容、旅行などの店舗予約やクーポンサービスを手がけるリクルートライフスタイルが開発・提供している。同社のクライアント対象となる小売業、飲食業、各種サービス業の店舗がメインターゲットで、3月半ばの時点で登録アカウント数が3万5000を超えた。
「freee」と「Airレジ」の連携によって、機能面では、レジの入力データを自動で会計システムに取り込み、帳簿作成までできるようになる。「Airレジ」は、レジで受けた情報をリアルタイムにクラウドサーバーに蓄積する。こうして自動集計された売上データは、1日1回、「freee」に取り込まれ、自動で仕訳される。
2年目の目標は25万ユーザーの獲得
注目すべきは、営業面での連携だ。リクルートライフスタイルの自社メディアには、全国に膨大な数のクライアントが紐づいている。そうした企業に、同社の営業部隊が、「Airレジ」と合わせて「freee」を提案する。「『freee』の販売代理店として契約したわけではない」(北村社長)とはいうものの、freeeにとってみれば、インターネット経由の集客とは違うユーザー層にリーチできるわけで、強力かつ巨大な営業リソースを手に入れるのとほぼ同義だ。
今回の協業は、このようにfreeeにとってのメリットははた目にもわかりやすい。一方で、リクルートライフスタイルにとってのメリットは何なのだろうか。北村社長は、「当社の強みは自社メディアだが、それだけでお客様に価値を訴求していくのはすでに難しくなっている。そこで、リアルタイムに使える予約管理・座席管理のクラウドシステムなど、店舗の運営を大幅に効率化するITインフラをサービスメニューに組み込んで付加価値を出し、メディアのクライアント獲得をさらに促進しようと考えている」と説明する。「Airレジ」もまさにそのための商材で、アプリ単体でマネタイズしようとはまったく考えていない。そして、「freee」との連携は、そうした同社のサービスの価値をさらに向上させるものと位置づけていて、「今後も、そうした商材があればどんどんクライアントに紹介していく」(北村社長)という。
freeeの佐々木代表取締役は、この連携を踏まえて、「来年3月までに25万ユーザーを獲得する」という目標を掲げた。当初から明らかにしている中期的な目標は、「5年間で100万ユーザーの獲得」だが、その達成に向けて、既存のベンダーとは一線を画すユニークな手法で、新たな一手を打った。(本多和幸)

freeeの佐々木大輔代表取締役(右)とリクルートライフスタイルの北村吉弘社長