東日本大震災をきっかけに、データのバックアップ用としてテープストレージの優位性が改めて評価されるようになった。加えて、ビッグデータ時代の訪れとともに、海外を中心として大容量データを安価に、しかも低消費電力で保管できるメディアとして、テープに新しい需要が生まれている。また、テープの技術革新も進んでいる。最新規格のLTO6は、圧縮時で最大400MB/secの転送速度をもち、1カートリッジで6.25TBの容量(2.5倍圧縮時)が格納できる。そのなかで、拡張性が高く幅広いレンジに対応した製品が需要をさらに増大する可能性がある。
世界で拡大を続ける出荷容量
調査会社のIDC Japanが2013年6月19日に発表した国内テープストレージ市場の予測では、2012~17年における国内テープストレージ売上額の年平均成長率をマイナス7.7%と予測している。
しかし、グローバルでは、テープストレージは日本とはまったく異なる見方がされている。電子情報技術産業協会(JEITA)のテープストレージ専門委員会が公表している「テープシステム技術資料」では、ビッグデータやクラウドの時代、コスト面、長期アーカイブ、災害対策のためのオフサイト保管などの観点から、テープが果たす役割は依然として高く、多くの米国企業がテープの開発、採用に投資を続けていると指摘している。テープの総出荷容量は年々増加し、2012年には20エクサバイトと、外付けディスク容量を超えている。今後も、データの増加に伴って増え続けるという。実際、テープは大量のデータを安く保存できる製品として、GoogleやNASAなど、最先端の企業や研究機関で導入が進んでいる。
増加し続けるデジタルデータを記憶するストレージシステムのなかで、大容量の情報記録装置として最適なテープは、障害復旧時に必要なバックアップとしての用途に加えて、記録・保管のアーカイブ用途として注目されている。テープストレージ専門委員会では、とくにデータの保管に電力が不要なテープが、グリーンIT/グリーンストレージの実現にも重要な役割を担うとしている。
進化を続ける技術が自治体で高評価
国内では、東日本大震災をきっかけに、データのバックアップ用としてテープの優位性が再評価された。被災地の自治体でデータが失われて復旧や復興に手間どったケースがあったことから、重要データの保存方法が課題となって全国規模でBCP(事業継続計画)の見直しを迫られた。その点、テープは持ち運びが容易で、停電でもデータが失われず、運用コストも安い。コストに敏感な自治体に「メリットが大きい」と評価されたのだ。
実用化から50年以上の歴史があるテープは、データ保護のための有力手段の一つに位置づけられているわけだが、今も進化を続けている。
最新規格のLTO6は、非圧縮時で160MB/sec、2.5倍圧縮時で最大400MB/secの転送速度をもち、1カートリッジで非圧縮時2.5TB、2.5倍圧縮時で最大6.25TBの容量を格納できる。さらに、LTO規格は第7世代で16TB(圧縮時)、第8世代で32TB(同)と今後のロードマップも発表されている。テープは遅いという見方があるが、正確には「ランダムアクセスは得意ではない」というのが正しい。データを先頭から順に読み書きするシーケンシャル・アクセスでは、HDDを上回るスピードを備えているのだ。
エントリレベルからミッドレンジまでを網羅
テープが見直されるなかで、注目される製品がある。日本オラクルの「StorageTek SL150モジュラー・テープ・ライブラリ」だ。この製品は、カートリッジを30巻収納する「モジュール」を1きょう体で10台まで増設することができ、エントリレベルからミッドレンジまでのニーズに対応している。データの増加に合わせて30~300スロットをシームレスに拡張でき、300スロットすべてにLTO6のカートリッジを搭載した場合、非圧縮の状態で750TB、データ圧縮時で最大1.87PB(ペタバイト)のデータを格納できる。
一つの拡張モジュールで二つのテープを追加できるので、データの増大に応じてパフォーマンスの向上を図ることができる。もちろん、前世代のテープとの互換性も備える。
単一製品として高いスケーラビリティをもつ「StorageTek SL150モジュラー・テープ・ライブラリ」は、データ増加による短いサイクルでの装置の置き換えを必要とせず、バックアップ用途にも、アーカイブ用途にも使うことができる。拡張性が高く、さまざまな用途に対応した製品が、需要を増大させる。