オージス総研(平山輝社長)は、認証やID管理を中心とするIT基盤システム「ThemiStruct(テミストラクト)」の販売体制を強化する。上半期(2014年9月期)をめどに販売パートナー向けのプログラムの整備を進めるとともに、クラウド/SaaSベンダーとの連携強化にも力を入れる。この背景には、クラウド/SaaS活用の進展に伴い、「社内と社外を分ける境界が、これまでのファイアウォールから認証系のシステムへと変わりつつある」ことが挙げられる。同社はこれをThemiStructを拡販できる商機と捉え、向こう3年でユーザー数を3倍に増やす。(取材・文/安藤章司)
「認証」が社内外の重要な境界に
企業が使う情報システムはインターネットで世界中につながっている。こうした状況のなかで「社内と社外」を分ける境界が、従来のファイアウォールから認証を中心としたものへと比重が移っている。
例えば、この5月にオージス総研が発表した認証やID管理を中心とするIT基盤システム「ThemiStruct」の文教向けバージョン「ThemiStruct for アカデミック」では、履修登録や成績管理などの学内システムと、他大学の連携システム、Microsoft Office 365やGoogle Appsなど汎用的なクラウドサービスの三つを、ThemiStructによって統合的に認証できるようにした(図参照)。これまでは、ファイアウォールで区切られた学内システムだけで、ほとんどの業務をこなせていたが、今では他大学やクラウドサービスとの融合が急速に進んでいることが読み取れる。

八幡孝
副部長 これは、企業のシステム構成でも類似しており、社内外のシステム、クラウド/SaaSベンダーが提供するサービスとの融合が急ピッチで進行している。オージス総研では、ThemiStruct事業を拡大する商機とみて、早ければ上半期中にも販売パートナープログラムを整備するとともに、クラウド/SaaSベンダーとの連携も加速する。すでに、Office 365などへの対応は済ませており、ワンタイムパスワードや電子証明書などの情報セキュリティ対策を組み合わせたかたちでOffice 365への接続を実現している。
社内の基幹システムや外部のクラウドサービス、社外の連携システムなどを融合することで、情報システムの利便性を高め、仕事の生産性の向上につながることが期待されている。一方で、情報セキュリティへの対策やユーザー管理の手法は、従来のファイアウォールを中心としたものとは異なるアプローチが必要になる。ThemiStructでは、シングルサインオンやユーザーID管理、電子証明書、ワンタイムパスワードなどの認証システムを複合的に活用することで、クラウド時代に即した「社内と社外の境界をしっかり守っていく」(オージス総研の八幡孝・サービス事業本部テミストラクトソリューション部副部長)という考えを示している。
OSSの品質とサポートをコミット
ThemiStructは、もともとオープンソースソフト(OSS)をベースに開発したもので、2009年から現在の商品名をつけて販売してきた。従業員数が1000人規模以上の企業を主要ターゲットとしており、これまで数十社に納入してきた実績をもつ。だが、OSSの特性上、開発コミュニティの方向性であったり、何か不具合が起きたときの対応に不確実性があったりした。Linuxなどは、確実性を高めるためにディストリビュータが存在しているわけだが、ThemiStructについては「ソフトウェアとしての品質と開発元としてのサポートをオージス総研がコミットする」(同)ことを今年に入って表明している。
つまり、ユーザー企業に対して「できる限り努力します」から「責任をもって提供する」スタンスへと大きく踏み込んだわけだ。認証系の市場が拡大することが見込まれるなか、「ユーザー企業の間で『オージス総研がしっかりとコミットしてほしい』という要望が高まった」(八幡副部長)ことを踏まえて、実質的なディストリビュータの役割を担っていくとしている。このためにオージス総研では、独自の機能拡張や管理ツールの追加など1000項目を上回る改善やテスト、検証を実施し、責任をもってユーザー企業に提供できる体制を一段と強化する取り組みを行っている。
通常のパッケージソフトでは、認証システムはユーザーが増えれば増えるほどライセンス料の負担が重くのしかかる。ThemiStructがターゲットとしている中堅企業以上の規模になると、ライセンス料も比例して増えることを勘案すれば、OSSによる導入時のコスト削減効果は大きいものになる。個別に開発するよりもはるかに安く、パッケージソフトのライセンス体系にも縛られないというメリットを享受できる。また、オージス総研が品質とサポートをコミットすることで、販売パートナー経由での販路も開拓しやすくなる。こうした強みを生かすことで、今後3年で累計ユーザー企業数を現状の3倍に増やす方針だ。