NEC(遠藤信博社長)とNEC(中国)(日下清文総裁)は、7月4日、中国・北京の中国大飯店で、プライベートイベント「NEC Innovative Solution Fair 2014」を開催した。2008年から実施している年次イベントで、7年目の今回は「Smart City, Bright Life」をテーマに、基調講演やセミナー、新製品発表、展示などを通じて、NECがスマートシティ分野で中国市場に提供している各種ソリューションを紹介した。(取材・文/上海支局 真鍋武)

大勢の来場者で賑わっていた展示コーナーICTが社会インフラ高度化を支援

NEC
遠藤信博
社長 イベントの冒頭、NECの遠藤社長が、「人が生きる、豊かに生きるための社会ソリューション」と題して基調講演を行った。遠藤社長は、2050年までの世界経済・社会の見通しについて、全世界の人口が現在の70億人から90億人へ、都市部の居住人口が50%から70%へ増加し、エネルギーや食料・水の需要や、温室効果ガスが増えていくことに言及。「限られた地球資源を効率的に最大限に活用するには、都市部でも地方でも公平に暮らせるための、効率のよい新しい社会インフラが重要になる」と指摘した。そのうえで、「『海底から宇宙まで』をコンセプトに、NECグループでは、ICTを活用した社会インフラの高度化に向けて、経営資源を集中させている」とアピールした。
また、遠藤社長は、ICTのトレンドについて、データサイエンスやIoT(Internet of Things)、SDN(Software Defined Network)、センサによる認識など、最新技術が加速度的に普及していくことを予測。NECが得意とするセンサを活用した認証技術など、最新技術を紹介し、中国市場に向けては、スマートシティの構築にかかわる「平安(Safety)」「健康(Health)」「効率(Efficiency)」「公平(Equality)」の各分野に向けたソリューションの提供を通じて、社会インフラの高度化に貢献していくことを強調した。

「健糖宝(仮称)」は、手を数秒かざすだけで血糖値を測定できる簡単に血糖値を測定できる「健糖宝」
NEC(中国)の日下総裁は、健康(Health)分野の新製品として、簡単に血糖値を測定できる「健糖宝(仮称)」を中国市場に向けて投入することを発表した。「健糖宝」は、手のひらを数秒間かざすだけで、血糖値を測定できる小型の健康機器。一般的に、血糖値を測定するためには、針を刺しての痛みを伴う採血を余儀なくされるが、「健糖宝」は赤外線センサを活用することで、いつでもどこでも簡単に測定。測定した血糖値のデータをクラウド上に保存して、パソコンやモバイル端末で管理することができる。
イベントで披露した「健糖宝」は最終試作モデルで、今後の検証・テストによる最終調整を経て発売する予定。日下総裁は、「コンシューマ向けに、パートナー企業を通じて販売していく方針で、すでに交渉を進めている。パートナーからの反応はいい」と好感触であることを明かした。
中国では13年末に60歳以上の高齢者が2億人を超え、今後も毎年1000万人ずつ増加していく見通し。中国全土にいる糖尿病の患者は、約1億人に上るといわれる。日下総裁は、「どのくらい生産できるかは現時点ではわからないが、少なくとも月5000台は販売したい」と意欲を示した。

「健糖宝(仮称)」を披露するNEC(中国)の日下清文総裁(中央右)と来賓のパートナー企業、政府関係者技術力を感じさせるソリューション
展示コーナーでは、「平安(Safety)」「健康(Health)」「効率(Efficiency)」「公平(Equality)」の各分野に向けたNECのソリューションを一挙公開。例えば、「平安(Safety)」では、米国国立標準技術研究所(NIST)が主催した性能評価コンテストで、世界No.1と位置づけられた顔認証エンジン「NeoFace」を紹介していた。
「NeoFace」は、空港の税関やオフィスの入退室などでの活用が想定され、1秒間に最大で約600万件を認証・検索することができる。政府公共機関を中心に、すでにグローバル約20か国で導入された実績がある。
「健康(Health)」では、新製品の「健糖宝」のほか、裕福な高齢者向けの長期療養型施設をターゲットとした「NEC スマート養老情報化管理プラットフォーム(NEC i-Care)」などを紹介していた。「NEC i-Care」は、高齢者がタブレット端末を通じて料理を注文するシステムや、スタッフが高齢者の健康状態を管理するシステム、超音波センサを活用して個室内の入居者に異常がないか動体監視する見守り型システムなどを提供するもの。中国の高齢者サービス市場が今後急拡大することもあって、ブース担当者の話を真剣に聞く来場者の姿が目立った。