ネットワーク設計からアウトソーシングサービスまで、ICT(情報通信技術)事業を幅広く手がけるNECネッツエスアイは、8月下旬、社員が実力をみせる「第2回CS技術コンテスト」の決勝大会を東京・文京区の本社で開催した。サービス品質の向上によって顧客満足度(CS=Customer Satisfaction)を高めることを目的に、「ものづくり改革推進本部」が昨年に打ち出した取り組み。2回目の今回は、約500人の応募者から選出された59人が、現場でプログラミングやクレーム対応などの課題に挑んだ。(取材・文/ゼンフ ミシャ)
ITベンダーは、ソリューション提案の腕を磨くために、常日頃から社内改革に乗り出している。コンテストによって現場の技術力を引き出したり、活発な情報共有で案件を発掘したり……。斬新な取り組みを進めているITベンダーにスポットを当てて、社内改革の最前線をレポートする。

技術者を対象としたコンテスト会場。課題に集中しているエンジニアたちの姿を、黄色のTシャツを着たスタッフが動画に収める
コンタクトセンターの現場を再現し、オペレータのクレーム対応を審査する シーンと静まり返った会場で電話が鳴り、スピーカーから怒りに満ちた声が聞こえてくる。「またパソコンが壊れた。一体、どういうことだ?」。しかし、電話に応えたコンタクトセンターの担当オペレータは、焦りをみせない。「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません」。ていねいな声で謝ったうえで、故障状態の詳細を聞き出し、相手を落ち着かせながら、手慣れた感じでクレーム対応を進める。
営業力の向上が急務
コンタクトセンターのサービスは、NECネッツエスアイの注力事業の一つだ。2013年6月に、コンタクトセンターに強いキューアンドエーを連結会社化するなど、事業拡大に向けた体制づくりに取り組んでいる。欠かせないのは、オペレータの実力を磨くことだ。そこで、今回のコンテストの一環として、コンタクトセンターのリアルな環境を再現。相手がどんなクレームをつけるかがわからないなか、オペレータがどのような対応をみせるのか。審査員は、参加者の言葉づかいや声のトーンに耳をすましながら、クレーム対応に厳しく点数をつけた。

NECネッツエスアイ
武井雄二
本部長 コンテストの開催を統括した「ものづくり改革推進本部」の武井雄二・本部長は、「若手を中心とする社員が競い合いながら実力を発揮し、それによって、技術スキルの底上げを図るのが、コンテストの一番の目的だ」と述べる。コンタクトセンターのほかにも、プログラミングや提案活動など、技術・営業の分野ごとにカテゴリを設け、社員の力を試した。実は、営業部門を「技術」コンテストの対象にしたのは、今回が初めて。参加者59人のうち、営業担当4人が提案活動について発表し、成功事例をアピールした。
ITベンダーは、クラウドやビッグデータの時代に突入したことで、技術の進化とともに提案の複雑化に直面している。ユーザー企業の課題を的確に捉え、ソリューションを提案する営業力の向上が急務になりつつある。こうした情勢のなかで、NECネッツエスアイは今回、「営業」もコンテストに取り入れることで、営業担当のスキルを高めることに踏み切ったというわけだ。
オーナー企業に入り込む
同社は、ビデオ会議などのICTを活用するオフィス改革ソリューション群「EmpoweredOffice」を主力商材として、地方市場の開拓に取り組んでいる。コンテストで発表された提案事例のなかで注目を浴びたのは、入り込みにくいとされる地方のオーナー企業から大型案件を受注したというものだ。営業担当は、その企業の創業会長にプレゼンテーションをして、経営視点を強く意識しながら、「EmpoweredOffice」の活用がどのようにビジネス改善につながるかをわかりやすく説明した。工夫を凝らした内容で、会長に気に入ってもらい、トップダウンで導入を決めてもらったという。
現場が誇る技術や営業のスキル。しかし、組織が巨大化すればするほど、全社でシェアしにくくなり、広い範囲でビジネスに生かすことが難しくなる。その打開策として、NECネッツエスアイは、コンテストで発表された内容を全社で共有し、提案の進め方などを横展開しようとしている。武井本部長は、「『来年、もう一回挑戦したい』と言う社員が多く、コンテストの開催がモチベーションの向上にもつながっている」と、確かな手応えを感じている。