日立製作所(東原敏昭社長)は、中国のSI子会社である日立(中国)信息系統(HISS)を清算する。具体的な日付は未定だが、すでに中国当局との間で清算手続きを開始している。日立製作所の情報・通信システム部門で、中国国内向けにIT事業を展開する最大規模の会社が消滅することになる。
清算の理由は業績不振だ。2002年2月設立のHISSは、上海、北京、広州、深・など8地域に拠点を構え、これまでハードウェア、ソフトウェア、システム構築、ITサービスといったITトータルソリューションを提供してきた。2013年度(13年12月期)の売上高は約4億元。主力商材の一つである統合システム運用管理ソフトウェア「Job Management Partner 1(JP1)」は、2012年と13年の中国ワークロードスケジューリング&オートメーションソフトウェア市場で売上シェア3位(米IDC調べ)を獲得するなど、中国国内で着々と存在感を高めていた。2014年5月の『週刊BCN』の取材で、許亦武総経理(当時)は、「今後5年間で売上高を3倍にする。そのために、政府の国家発展改革委員会が推進する社会インフラ関連のビジネスや、中国のローカル企業など、新領域の開拓に力を注ぐ」と強い意欲を示した。しかし、赤字経営だったことから、日立製作所は事業を継続するに値する将来性がないと判断した。
清算にあたって、HISSの現地従業員約250人は、グループ企業へ移管せず、労働契約を解除される。つまり、事実上の解雇だ。日本からの出向で赴任していた管理職層を中心とする従業員約20人は本社に帰任し、新たに発令される人事を待つこととなる。
HISSが抱えている日系企業を中心とした700社超の既存顧客に向けたITサポートは、今後、日立諮詢(中国)(日立コンサルティングチャイナ)など、現地の情報・通信システム部門のグループ会社が引き継ぐ。一方、HISSが独自に提供していたITソリューションの今後の販売については、現在、グループ会社への事業継承を検討中だ。結果次第では、中国から撤退する事業が出る可能性がある。現地点で日立製作所は、新たな情報・通信システム部門の中国事業会社の設立や、現存のグループ会社の再編・統合は予定していない。
HISSの清算を受けて、すでに現地では異変が起こり始めた。上海に本拠を置く大手日系SIerの営業担当者は、「取引先のベンダーから『今後、日立には期待しにくいので、御社に案件協力してほしい』と相談を受けた」と明かす。中国に進出している日系SIerのなかでも最大手の部類に入るHISS。消滅がパートナー企業に与える影響は大きい。
HISSの顧客は大半が日系企業で占められていたが、中国の日系マーケットはIT市場全体のごく一部でしかない。さらに、2014年の日本の対中直接投資額(実行ベース)は、前年比38.8%減の43億3000万米ドル(中国商務省調べ)と落ち込んでいて、今後の市場環境は一段と厳しくなることが予測される。現状、中国政府やローカル企業の開拓に成功している日系IT企業はほとんどないが、今後、中国で大きく成長するためには、市場規模が大きい非日系マーケットを開拓していくことが必須となりそうだ。(上海支局 真鍋武)

HISSが入居する上海・虹口区の壱豊広場