「ハコ売り」のビジネスモデルから脱却し、CAMSS(クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャル、セキュリティ)を軸とする高付加価値型のソリューション提案へのシフトを進める米IBMは、パートナーにも同様の変革を強く促している。米IBMのマーク・デュパキエ・グローバル・ビジネス・パートナーズ担当ゼネラル・マネージャーと日本IBMの岡田和敏・執行役員パートナー事業・アライアンス事業本部長に、最新のパートナーエコシステムの状況を聞いた。(本多和幸)
──米IBMは今年2月、プロダクトごとの縦割りではない全社横断的なパートナー支援体制「The One Channel Team」を立ち上げたことを明らかにした。その効果は? デュパキエ まず、パートナー同士の連携が活発化している。例えば、IBMのハードウェアのパートナー、ソフトウェアのパートナーそれぞれが補完的に協力し合い、より包括的なソリューションを一緒に提供するという動きが目立ってきている。また、パートナーの数そのものもかなりの勢いで増えている。今年に入ってから、すでにグローバルで8000社が新たにIBMのパートナー・コミュニティに加わった。従来のIBMパートナーとは違う領域で専門性を発揮できるベンダーとの協業も増えている。
──日本市場ではパートナー向けにどんな新しい施策を展開しているのか? 岡田 ハードを中心とした既存のパートナーには、BTI(Business Transformation Initiative)ワークショップという経営層向けのプログラムを展開している。CAMSSソリューションへのシフトが成長につながるという啓発を行っていて、パートナーの意識変革を後押ししている。また、CAMSS製品のセミナーなども積極的に行っており、新規パートナー開拓に効果を発揮している。
──CAMSS製品の提案ノウハウに関する教育コンテンツなどを揃えたサイト「Think Academy」をパートナーにも開放している。 デュパキエ すでに数十万件の受講実績があるが、新しいコンテンツを公開すると、IBM社員よりもパートナーのほうがいち早く受講している。私はよい傾向だと思っているが、ジニー(・ロメッティ会長・社長兼CEO)はIBMの社員に奮起を促したいようだ(笑)。
岡田 日本向けのローカライズもしていて、日本でも毎月100~200人が受講している。
デュパキエ グローバルでみて、パートナーの受講件数などが多い地域はパートナー自身のビジネスの変革が進んでいて、業績に確実に反映されている。反対に、受講件数が少なく、まだ変革を受け入れていないパートナーが多い地域は、成長がみられない。例えば、西ヨーロッパではスペインやイタリアといった南部の国のパートナーが、CAMSSの教育に対して非常に活発に投資していて、経済状況が良好なイギリスやドイツなど北部の国のパートナーよりもすぐれた業績を上げている。変革への投資と業績に直接的な相関関係があることは明確であるということを、日本のパートナーにも是非ご理解いただきたい。

米IBMのマーク・デュパキエGM(右)と、
日本IBMの岡田和敏執行役員