税理士向けのクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS」を提供するアカウンティング・サース・ジャパン(A-SaaS、佐野徹朗・社長CEO)は、税理士とその顧問先の中小企業向けに、マイナンバー(社会保障・税番号)の収集・管理サービスをリリースする。これを機に、税理士と連携してクラウドサービスの利便性を啓発し、中小企業のクラウド活用促進を目指す。さらには、税理士が顧問先企業に対してIT活用を含めた経営アドバイザー的な役割を果たすことができるような土壌づくりを進める考えだ。(本多和幸)
税理士とSMBのための
収集・管理サービス

佐野徹朗
社長CEO A-SaaSは、マイナンバーの収集から保管、税務申告までをクラウド上で完結できる新サービス「マイナセキュリティ」の提供を始める。A-SaaSのシステムには標準機能として搭載され、A-SaaSユーザーではない税理士も無料で利用できる。佐野社長CEOは、「税理士とその顧問先である中堅・中小企業(SMB)のためのサービス。従業員やその扶養家族のマイナンバー情報を、自分でもたずに管理・活用できる」と、メリットを強調する。
具体的な利用プロセスとしては、まず税理士側で、顧問先の従業員向けにマイナセキュリティのログインIDと仮パスワードを発行する。顧問先企業側では、従業員本人が、仮パスワードでのログインとパスワード変更を経て、扶養家族の分も含めて自分でマイナンバーを入力する。「会議室などにパソコンとインターネット環境を用意してもらい、そこに1人ずつ入室して入力してもらうようなイメージ」(佐野社長CEO)だという。その後、税理士側は、顧問先の従業員の入力状況を確認して、未入力の従業員がいればこれを顧問先に通知し、入力を促すことができる。もちろん、マイナンバー情報に関する操作のログ管理機能も備える。

安田信彦
税理士 ただし、業務ソフトベンダーやマイナンバーBPOを手がけるSIerなどは、同様に従業員が自分で番号を入力するかたちのマイナンバー収集サービスをすでに発表している。そうしたサービスとの違いは何か。A-SaaSユーザーで、同社創業時からの出資者でもある、さくら中央税理士法人代表社員の安田信彦・税理士は、「税理士と顧問先企業が同じデータをクラウド上で共有できるという概念は、A-SaaSだけのものだと考えている。また、A-SaaSユーザーであれば、マイナンバー関連データと給与計算や税務申告システムを連動させて使うことができ、源泉徴収票や所得税などの電子申請・電子申告をクラウド上で完結させることができる。マイナンバー情報を自分で保持するリスクを避けたうえでこうした利便性を得られるのは、非常に大きなメリット」と評価する。佐野社長CEOも、「多くの中小企業が、税に関する業務を税理士に丸投げしている状態なので、中小企業のマイナンバーは税理士に集まってくることになる。そう考えれば、企業側だけでなく、税理士のリスクと負担を軽減しなければ、本当の意味での“マイナンバー対応”とは言えない。だからこそ、マイナセキュリティの意義は大きい」と力を込める。
マイナンバー対応で
クラウドの利便性を訴求
非ユーザーにもマイナセキュリティを無料で提供するので、A-SaaSにとっては、売り上げに直接跳ね返ってくるわけではない。同社が狙うのは、マイナセキュリティの普及をきっかけにしたA-SaaSのユーザー増や中小企業のクラウド活用促進だ。
「マイナセキュリティの利用が拡大していけば、税理士にクラウドのメリットを確実に感じていただくことができる。当然、その顧問先企業でも、クラウドの利便性について啓発が進むだろう。大規模なIT投資が難しい中小企業こそ、ITシステムの管理コスト低減、セキュリティの強化、モバイル対応、データ共有といった面で、マイナンバー管理にとどまらない幅広い領域でクラウドのメリットを享受できるはず。当社の企業理念は、先端技術で税理士と中小企業を支えるというもの。マイナセキュリティを通してクラウドの利点を感じた税理士が、顧問先に経営力向上のためのツールとしてA-SaaSやその他のクラウドソリューションを勧め、業務範囲を拡大していくような流れをつくりたい」(佐野社長CEO)。
A-SaaSには顧問先企業向けの会計・給与計算システムもあり、企業側は、自社の顧問税理士がA-SaaSユーザーであれば、これらのシステムを無償で使うことができる。税理士は、中小企業に会計システムを提供するチャネルとしての機能を果たしているとも言える。これを拡大し、中小企業の経営力向上に役立つさまざまなクラウドソリューションのチャネルとして税理士が機能する市場を構築することで、税理士のビジネス拡大、ひいては日本の中小企業の競争力向上を図るという構想だ。
安田税理士も、「マイナンバー制度の施行によって一番大きく変わるのは、税の部分。税務申告が効率化され、税理士のビジネスは縮小してしまう。だからこそ、顧問先企業の経営指導に近いより上流の仕事を増やす必要があり、その一環としてクラウドソリューションを提案することは、税理士にとっても大きなビジネスチャンスになる」と、税理士がクラウドソリューションのチャネルを担うことの“必然性”を強調する。
現在、A-SaaSを利用している税理士法人は1900以上、顧問先企業向けシステムの登録ユーザー数は10万件を超えている。さらに、給与計算システムに登録されている従業員数は29万人に達した。マイナセキュリティをテコに、2016年末までにこれを100万人まで伸ばし、中小企業のクラウド活用促進に向けた土台を早期に構築する。
財務のクラウド化目指す税理士グループが発足
顧問先企業の財務クラウド化促進を目的とする税理士グループの「さくらグループ」が発足した。A-SaaSユーザーでもある、さくら中央税理士法人を中心に、22事務所が参加している。さくら中央税理士法人代表社員の安田信彦・税理士は、「マイナンバー制度が始まるとこれから私たち税理士事務所の仕事は大きく変わる。むしろ、変わることができなければ生き残れない。顧問先様によりよいサービスをご提供するためにも、ITを活用したコンサルティング業にシフトしていかなければならない」と、グループ設立の背景を話す。自らクラウドサービスの開発にも乗り出し、顧客先企業とシームレスにデータをやり取りできるセキュアなクラウドストレージサービスなどを会員に提供する。サービスのラインアップは順次拡大していく方針。顧問先企業のクラウド活用を促進し、自らのビジネス拡大にもつなげようという考えだ。