サイボウズ(青野慶久社長)は、11月6日、東京・千代田区のホテルニューオータニで、年次プライベートイベント「cybozu.com カンファレンス 2015」を開催した。今年のテーマは「変える覚悟、変わる覚悟」。午前の基調講演では青野社長のほか、5人のゲストが登壇。午後からはセクションごとにさまざまなテーマで講演を開催。東京会場には、2861人が来場した。(取材・文/前田幸慧)

仙拓の佐藤仙務社長(写真中央)
(左上から)グリーンバレーの大南信也理事長、サイボウズの青野慶久社長、島根県海士町 隠岐國学習センターの豊田庄吾センター長、
(左下から)アールスリーインスティテュートの金春利幸マネージャー、ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長覚悟によって、常識が変わる
「変える覚悟、変わる覚悟」──基調講演のなかで、青野慶久社長は、今回のテーマであるこの言葉を何度も繰り返した。「何かを変えるとき、そこには困難が伴う。それを受け止めて、それでも変えていこうと、覚悟を決めること」が変える覚悟、変わる覚悟だと述べ、「この基調講演で、みなさんに、変える覚悟、変わる覚悟をもっていただくことが私のゴールだ」と、参加者に訴えた。
青野社長は、日本が抱える問題として、「長時間労働」「地方創生」「新しいSI」の三つを挙げ、それぞれの問題に取り組んでいるゲストと対談した。
長時間労働では、ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長が登壇。限られた時間のなかで成果を上げる「時間あたりの生産性」を評価することで、時間外の業務ができなかった社員の意欲が上がり業績がアップ。女性社員が「子どもを産みたい」と思うことにもつながるという。実際に、「『残業を減らして業績を上げる』というコンサルを900社にしてきたが、驚くほど業績が上がっている」といい、経営者が時間あたりの生産性で評価することを促した。
地方創生では、その成功例として徳島県神山町 特定非営利活動法人グリーンバレーの大南信也理事長と、「島留学」で有名な、島根県隠岐郡海士町 隠岐國学習センターの豊田庄吾センター長が登壇。大南理事長によると、神山町の町民は、もともと外国人の民泊に積極的だったこともあり「(自分たちが)変わること自体が楽しいこと」だと実感していることが、変える覚悟、変わる覚悟につながっているという。また、豊田センター長は「少子高齢化などによる島の存続や、学校の統廃合という危機感と、それらに対する当事者意識(島民とIターン者)互いの役割や強みが相乗効果で成果につながっているのではないか」と、取り組み成功の理由を述べた。
新しいSIでは、「ハイスピード SI」を提唱し、顧客の話を聞きながら、目の前でkintoneを使い開発する「対面開発」を行うアールスリーインスティテュート(加藤忠智代表取締役)の金春利幸マネージャーが登壇。顧客と向き合えない多重下請け構造への懐疑から、対面開発という開発手法につながったという。2時間という時間のなかで顧客に判断を求める一方で、「2時間で話を理解して、そこでつくりきる」という覚悟で取り組んでいると述べた。
この後、重度の障がいをもちながら、同じ障がいをもつ友人とともに起業した、仙拓の佐藤仙務社長が登壇した。就職にあたり、「どこにも働く場所がなかった」ことから、「最終手段として」会社を設立。現在は、障がいをもつ3人の仲間とともに、ウェブサイトや名刺制作などを手がけている。青野社長の名刺をつくったのも仙拓だ。「PCを通してみると、障がいをもっているかはわからない。青野社長の名刺をみても、障がい者がつくったとはわからない。そうした意味で、障がい者か健常者かは関係なく、能力さえ認めてもらえば働ける時代になったのでは」との考えを述べ、仙拓としては、「kintoneなどのサービスを生かしながら、最終的には上場までいきたい」との目標を語った。
最後に青野社長が、「私たちには、社会を変えていく大きな武器がある。それがクラウド。クラウドを最大限活用して、一緒に社会を変えていこう」と、参加者に呼びかけ基調講演を締めくくった。
パートナー施策を強化
基調講演の後には、パートナーミーティングを開催した。はじめに青野社長が挨拶し、「クラウドの売り上げは、(第三四半期の時点で)前年比61%増できている」と、クラウド事業の好調ぶりをアピールした。

栗山圭太
営業本部副本部長 兼
パートナー営業部長 続いて、ビジネスマーケティング本部の池田陽介・Garoonプロダクトマネージャーと、伊佐政隆・kintoneプロダクトマネージャーが、それぞれGaroonとkintoneの製品動向や活動方針を説明。また、栗山圭太・営業本部副本部長兼パートナー営業部長は、パートナーとのさらなる関係強化に向けた取り組みを説明。「約2年間はGaroonに注力する施策として、Notesのマイグレーションを中心に据えていく」という。また、営業本部内にあるソリューション営業部を解体、業種別に再編して「業種ノウハウをためることを目的とした営業部」に変え、得たノウハウをパートナーへ展開することで、業種営業を強化する方針を掲げた。
このほか、パートナーである日本電通(上敏郎会長兼社長)とCloud Payment(清久健也代表取締役)の2社がkintoneを活用した取り組みを紹介した。