東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のASEANビジネスでは、主力かつ看板製品である生産・販売・原価管理パッケージ「MCFrame」の販路拡大を目指し、製造業に強い有力SIerなどとのパートナーシップも新たに構築している。その代表例が、有力SIerである新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)との協業だ。
「力のある重要パートナー」と位置づけ
B-EN-Gは5月11日、2016年3月期の決算を発表した。売上高125億4900万円、営業利益5億3100万円と前期比増収増益となった。MCFrameのライセンス売上も過去最高を連続更新するという結果になったが、実はこの伸びを支えたのは国内案件であり、中国、タイといった海外主要拠点は軒並み伸び悩んだという。とくにタイについては、本連載でも繰り返し伝えてきたとおり、国内経済の停滞が日系企業のIT投資抑制につながっている。そうした状況ではあるものの、大澤正典社長は決算発表時のプレス向け説明会で、海外ビジネスにおけるポジティブな要素として、「NSSOLとのパートナーシップが成果を出し始めていること」を挙げた。
さらに、「NSSOLには昨年から新しくパートナーになっていただき、すでに案件も取ってもらっている。まずタイで先にパートナー関係が始まったが、大変力のあるSIerなので、関係を強化していきたい」と語った。
タイでASEANビジネスの指揮を執るToyo Business Engineering(Thailand)(B-EN-Gタイ)の渡邉祐一・ゼネラルマネージャー/ディレクターも、「製造業の分野で非常に豊富な実績と高い技術力を誇るNSSOLのようなパートナーは、MCFrameとのビジネス上の親和性も高く、上流のコンサルからサポートまでしっかりやっていただける。今後のさらなるビジネス拡大に向け、非常に重要なパートナーだと考えている」と話す。
生産管理パッケージに注力するNSSOL
NSSOLは、タイ法人であるThai NS Solutionsを2013年1月に設立した。同年10月には、ソフト開発のパルシスのタイ子会社であるパルシスソフトウェアを買収して、システム開発のためのリソースを整え14年4月より、両者を統合したかたちで事業を開始。この時点で従業員数は約50人だったが、人員の入れ替わりを経つつも、現在は100人まで規模が拡大している。
現在のThai NS Solutionsのビジネスの状況について、立ち上げから携わり同社事業をリードしてきた荒井寿勝・マーケティング販売部門ゼネラルマネージャーは、「約3億バーツ(約9億円)の事業規模になっているが、新日鉄住金グループ向けのビジネスが売り上げの5割以上を占めている。しかし、半数以上のスタッフは(外部向けの)一般事業に従事していて、業務の実態は比率が逆転している。成長のための戦略として、この一般事業の売り上げを増やしていくことが重要だと考えている」と説明する。
同社がとくに注力していきたいと考えているのが、生産管理パッケージだ。顧客の8~9割は製造業分野の企業であり、旧パルシスソフトウェアの既存顧客も含め、これまではスクラッチ開発の案件が多かったが、海外拠点のITシステム整備においてはコスト削減や短納期のニーズが大きく、従来どおりのビジネスでは競争力を発揮するのが難しいと判断した。B-EN-Gとの協業がスタートした背景には、こうした事情があった。
ただし、NSSOL全体としては、グローバル大手ベンダーのERP製品を含め、生産管理機能をもつパッケージソフトは複数取り扱っている。そのなかで、タイではどんな顧客にどの商材を提案し、MCFrameをどう位置づけているのだろうか。荒井ゼネラルマネージャーは次のように説明する。

Thai NS Solutions
荒井寿勝
ゼネラルマネージャー 「パルシスソフトウェアが以前からマイクロソフトのDynamics NAVを手がけていて、最近はDynamics AXの取り扱いも始めているが、これらは会計と生産管理を同じパッケージでやりたいというニーズに応えるために提案することが多い。また、グローバルでガバナンスを効かすために、とくにAXは最初から指定で話がくることも多い。一方でMCFrameは、ユーザーのニーズに細かく応えられるところが売りだと考えている。やはり日系のお客様は、とくに生産管理の機能にこだわりが強く、かゆいところに手が届くものを求める傾向がある。生産管理システムならなんでもいいということではなく、きちんとサプライチェーンを改革したいというお客様には、MCFrameが合っている。タイにユーザー会もあり、日系企業の導入実績が豊富で、参考になる事例情報を得やすいのも大きなメリットになる」。
当面のターゲットは、すでに生産管理パッケージを導入済みだが更新時期を迎えているユーザーや、タイに新たに進出し始めている自動車産業のティア3サプライヤなどだという。3年後をめどに、売上倍増を目指すという意欲的な目標を掲げているが、荒井ゼネラルマネージャーは「パッケージのラインアップも揃えたし、マーケットのポテンシャルは十分にある」と話す。